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心の整理①
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(妻がランチを一緒にしていたのは実は男性?性同一性障害と認識していいだと?)
(そして、その事に関して俺に報告すべき事がある?)
妻の浮気疑惑も無罪と言う結論を導き出し、心の平穏を取り戻しつつあったのに。再びこの探偵事務所に足を運ぶ事になるとは、思っても見なかった。
前回の様に建物の前で躊躇する事はない。
約束時間15分前来訪。
前回同様白いパーテーションの仕切りで囲まれた個室で目を閉じ葛藤、いや考察していた。
元々、今回の依頼の主題は妻が浮気をしているか否か?だった。
それは言わずもがな、この探偵事務所だって判っているはず。にも関わらず、報告すべき事があると言うのは、主題に関係性があるからだ。
ランチを共にしたのが、男だったから?
いや。でも性同一性障害だろう?心は女性だろ?ちょっと個性的な友達に過ぎないだろ?
でも体は男性か……。
診断は?戸籍上は?そして性転換手術は?
まさかのカモフラージュ?
そこまで面倒な事をしてまで浮気なんてするか?そもそも男がそんな事をするわけがない。見た目を変えるなら女性の方だろ?化粧、ウイッグ、男装色々あるだろ。そう考えた方が自然だ。
そもそも全く想定していなかった。
トントン。
来たか。
やはりアニメ声の太宰探偵か。
「芥川様。わざわざご足労いただき申し訳ありません」
「いえ。こちらこそ、引き続きの調査、感謝しております」
「今日は夜からあいにく、雪の予報らしいですね。朝からニュースもそればかりでした」
うん?雑談から入った?!
これはどう言う事なんだ?
太宰さん、あなたは緊張感のない機械的なアニメ声で淡々と報告してくれるのが、一番の魅力と言うか特徴のはず。前回も世間話など一切なかったはずだ。それがここに来て雑談から切り出すなんて、考えられる事は2つ。
1つ、悪い結果を報告する前に依頼人に冷静になってもらう為の手法。
2つ、初対面ではない事、及び何度かのメールでのやりとりで、慣れ親しんだと言う単純な事か?
余計な事を詮索しても仕方ない。
「そうですね。雪だから退勤時間繰り上げる会社も多いと聞きます。私なんか狙って半休取ったのかなんて言われましたよ。ハハッ」
「それでは早速始めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
おいおい。
なんか俺が話を逸らしたみたいになったが?
「あ、はい。お願い致します」
「今回芥川様にご足労頂いたのは、すでに先日メールでご報告させて頂きました、奥様と一緒にランチを共にした人物の事です」
「はい。性同一性障害?の方ですね?」
「そうです。その方の名前は三島太一、28才、独身。フリーランスでプログラマーをしている人物です」
「はい」
「奥様とは同じ慶應大学卒業、亡くなった奥様の元交際していた方の友人で、その頃からの間柄だそうです」
「そうだったんですか」
凄いな。探偵と言うのはそこまでわかるのか。いや、この探偵事務所が優秀と言う事か。
「三島さんと奥様との詳しい関係性の前に三島さんに関して簡単な事実だけをご報告させて頂きます。まずは2年前、彼は性同一性障害との診断を受けました。そしてその後、盛んに行われているタイ王国で性適合手術を受けています」
「え?と言う事は?」
「はい。つまり男性器を切除し、その後はホルモン投与による治療をしたと言う事です」
「………」
俺は別にわざとお茶を濁す返しをしたわけじゃない。とっさにアレを女性に対して、いやらしくない、そして不快にさせない様な表現方法が出て来なかっただけだ。
しかし太宰探偵はアニメ声で淡々と切除したと言い放っていた。
(そう言えば三島なにがしと言う文豪もいたな。そんな事はどうでもいいが)
俺は更に太宰探偵の声に耳を傾けた。
(そして、その事に関して俺に報告すべき事がある?)
妻の浮気疑惑も無罪と言う結論を導き出し、心の平穏を取り戻しつつあったのに。再びこの探偵事務所に足を運ぶ事になるとは、思っても見なかった。
前回の様に建物の前で躊躇する事はない。
約束時間15分前来訪。
前回同様白いパーテーションの仕切りで囲まれた個室で目を閉じ葛藤、いや考察していた。
元々、今回の依頼の主題は妻が浮気をしているか否か?だった。
それは言わずもがな、この探偵事務所だって判っているはず。にも関わらず、報告すべき事があると言うのは、主題に関係性があるからだ。
ランチを共にしたのが、男だったから?
いや。でも性同一性障害だろう?心は女性だろ?ちょっと個性的な友達に過ぎないだろ?
でも体は男性か……。
診断は?戸籍上は?そして性転換手術は?
まさかのカモフラージュ?
そこまで面倒な事をしてまで浮気なんてするか?そもそも男がそんな事をするわけがない。見た目を変えるなら女性の方だろ?化粧、ウイッグ、男装色々あるだろ。そう考えた方が自然だ。
そもそも全く想定していなかった。
トントン。
来たか。
やはりアニメ声の太宰探偵か。
「芥川様。わざわざご足労いただき申し訳ありません」
「いえ。こちらこそ、引き続きの調査、感謝しております」
「今日は夜からあいにく、雪の予報らしいですね。朝からニュースもそればかりでした」
うん?雑談から入った?!
これはどう言う事なんだ?
太宰さん、あなたは緊張感のない機械的なアニメ声で淡々と報告してくれるのが、一番の魅力と言うか特徴のはず。前回も世間話など一切なかったはずだ。それがここに来て雑談から切り出すなんて、考えられる事は2つ。
1つ、悪い結果を報告する前に依頼人に冷静になってもらう為の手法。
2つ、初対面ではない事、及び何度かのメールでのやりとりで、慣れ親しんだと言う単純な事か?
余計な事を詮索しても仕方ない。
「そうですね。雪だから退勤時間繰り上げる会社も多いと聞きます。私なんか狙って半休取ったのかなんて言われましたよ。ハハッ」
「それでは早速始めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
おいおい。
なんか俺が話を逸らしたみたいになったが?
「あ、はい。お願い致します」
「今回芥川様にご足労頂いたのは、すでに先日メールでご報告させて頂きました、奥様と一緒にランチを共にした人物の事です」
「はい。性同一性障害?の方ですね?」
「そうです。その方の名前は三島太一、28才、独身。フリーランスでプログラマーをしている人物です」
「はい」
「奥様とは同じ慶應大学卒業、亡くなった奥様の元交際していた方の友人で、その頃からの間柄だそうです」
「そうだったんですか」
凄いな。探偵と言うのはそこまでわかるのか。いや、この探偵事務所が優秀と言う事か。
「三島さんと奥様との詳しい関係性の前に三島さんに関して簡単な事実だけをご報告させて頂きます。まずは2年前、彼は性同一性障害との診断を受けました。そしてその後、盛んに行われているタイ王国で性適合手術を受けています」
「え?と言う事は?」
「はい。つまり男性器を切除し、その後はホルモン投与による治療をしたと言う事です」
「………」
俺は別にわざとお茶を濁す返しをしたわけじゃない。とっさにアレを女性に対して、いやらしくない、そして不快にさせない様な表現方法が出て来なかっただけだ。
しかし太宰探偵はアニメ声で淡々と切除したと言い放っていた。
(そう言えば三島なにがしと言う文豪もいたな。そんな事はどうでもいいが)
俺は更に太宰探偵の声に耳を傾けた。
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