妻と浮気と調査と葛藤

pusuga

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文豪とアニメ声の調査結果

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「芥川様。お待ちしてました。こちらへどうぞ。今探偵をお呼びします」

 まずは結果を聞かなくては。
 浮気の原因などは今はどうでもいい。白か黒か?それだけに集中しよう。その上で思う存分葛藤すればいい。

 個室に通され椅子に座った俺は、寒い訳でもないのに太ももを両手でゴシゴシとこすり気持ちを落ち着かせていた。
 ドクンドクンとはっきり聞こえる心臓の音を快感にして落ち着かせる。

 (時間通りだぞ。あまり待たすなよ探偵さん)
 そう考えた直後、30代くらいの女性がいかにも丸秘と書かれている様な黒いファイルを両手に持ち、入ってきた。

 「おまたせ致しました。今回の調査を担当させて頂きました、探偵の太宰と申します」

 太宰だと?俺は芥川だが、それはどうでもいい。
 
「色々とありがとうございました」

「今回は当探偵事務所に依頼頂き、ありがとうございました」

「とんでもないです。こちらは浮気調査では百戦錬磨とお聞きしていましたから」

 百戦錬磨なんて、ジョークと思われてはないだろうか?笑ってないから大丈夫だろう。

「早速ですが、芥川様からの依頼を受け、事前に頂きました資料を元に、張込み尾行調査のべ80時間。その他、友人宅、近隣の同伴ホテル、念の為奥様の実家、ご結婚される前の職場、その他関係各所の状況調査も一週間かけて、併せて行わさせて頂きました」

 全く笑顔なく淡々と説明してくれている太宰探偵。
 
 探偵の表情や話し方で、結果を察する事は出来ない。こんな時になんだが、太宰と言う文豪繋がりの苗字とアニメ声と呼ばれる特徴的な声色の方に注目がいってしまった。

 俺。落ち着いている。

 そうではない。黒で有ることは状況証拠でほぼ確定だ。物的証拠を手に入れる為に依頼したから、これは疑惑が確信に変わると言う安堵に違いない。

「それで、結果はどうだったのでしょうか?」

「大変申し上げにくいのですが……」

 なんだ?どう言う事だ?
 真っ白と言う事はないはずだ。
 真っ黒だったから報告しにくいのか?
 それとも何も証拠を掴めなかったのか?

「私どもの調査では、奥様の不貞行為は確認出来ませんでした」

「え?どう言う事でしょうか?」

「はい。私共は芥川様が確信されていると言うお気持ちをお聞きして、不貞行為はある、つまり黒だと言う前提を念頭に調査をさせて頂きました」

「はい」

「そして土日を除く十日間の調査の中では、毎日奥様は日中外出をされていました。しかしその全てが買い物でした。但し、一日だけ友人と思われる女性の方との昼食、そして芥川様の事前の情報提供のありました、重度の生理痛による産婦人科への通院が確認出来ました」

「はい………」

「女性の場合、生理期間での不貞行為の中断がありますので念の為、全ての日に同等レベルでの張込み尾行調査を致しました。そして芥川様より頂きました交友関係リストはもちろん、不貞行為が自宅で行われている可能性も視野に入れ、人員を投入し他者の出入りを確認。更にその他、頂きました資料以外でこちらが考えうる全てを想定して調査させて頂きましたが、不貞行為の事実は確認出来ませんでした」

「…………」

 どう言う事なんだ?そんな訳はないはず。アイツの変化は事実だ。妄想なんかじゃない。待ってくれ。

 俺は想定していた事実を遥かに超えた、透明感の高い妻の実態を目の当たりにして、混乱しか出来ない自分をどう受け止めていいのか解らなかった。

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