恋はあせらず

 暖かく優しい風と共に甘い香りが鼻をくすぐる。
「恋はあせっちゃダメよ」
 ドライヤーの風切音を超えてママの声が優しく耳に届く。
「ゆっくりと時間をかけて育めばいいの」
 三面鏡と仲良しな、まあるくて柔らかい椅子。ママが綺麗になる魔法の椅子。
 ママのお化粧道具でイタズラするから勝手に座るとしかられるけれど、お風呂上がりにはいつもお尻を優しく包んでくれる。
 床に届かない足をぶらつかせた私にとって、それはすごく幸せな時間。
「なぜって?素敵な恋はそう簡単には訪れないものよ」
 暖かい風と共に髪の間をジグザグに指が動く。
 忙しなく動いていた手は最後にそっと肩に触れる。
「与え与えられる事に幸せを感じられたらそれが恋よ」
 優しく微笑むママの顔は鏡の奥まで続いていた。

 お陰様で私、宇佐美 鈴香は恋愛に対して不器用に育ちました。
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