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第1章 剣の磨き布

30 謎解きのお時間です 1

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「で、どういうことなんだよエミル」

 あれから、俺とエミルは道具屋レイツェルに戻って来ていた。
 ほとんど定位置になったアンティークテーブルに座り、イルミナさんの煎れてくれたハーブティーを飲み干すと、俺は向かいに座るエミルに詰め寄った。

「俺にわかるように説明してよ」

 グラディスとパメラがなぜか抱き合って、二人してわんわん泣き出すのを確認すると、エミルは俺の服の袖を引っ張って言ったのだ。「道具屋へ戻りましょう」と。
 だからグラディスとパメラがその後どうなったかは知らないし、なんで急にあの二人が仲直りできたのかも全然わからないでいる。

「では順番に紐解いていきましょうか」

 ハーブティーのカップを置いてクッキーを一つつまむと、エミルは話し始めた。

「結論から言いましょう。パメラさんはグラディスさんを守るためにレオン先生に近づいたんです」
「エミルが言ったことと違うじゃないか。パメラはグラディスとレオン先生を傷つけたかったんじゃないの?」
「エドガーさん」

 エミルは小さく息を吐いた。

「いい加減、僕のやり方を学んでくださいよ」
「じゃ、じゃあ嘘だったの?」
「ええ、嘘です」

 エミルは首を少し傾けてにっこりと笑った。俺は大きなため息をつくことしか出来なかった。まだ騙されたよ……。

「でもさあ。レオン先生の女癖の悪さは、俺たちの代では噂になってなかったじゃないか。パメラだって知らなかったはずだよ」
「パメラさんは気の強い性格だったでしょう」
「気が強いっていうか、凶暴っていうか……」

 思い出して、少し怒りがこみ上げてきた。そういえば、胸ぐらを捕まれてメンチ切られたんだった、俺。

「グラディスさんが言っていたでしょう。昔から男子相手に殴り合いの喧嘩をするような人だと。それに頭の回転も早そうですし。おそらく噂になる前に、レオン先生という人の本質を見抜いていたんでしょうね」
「俺、趣味わるって言われたんだけど」
「まあまあ、いいじゃありませんか。あれは売り言葉に買い言葉みたいなものですし」

 良くないよ!
 あーあ、俺ってそんなに魅力ないかなあ。まあ、ダサい、垢抜けてないっていう自覚はあるけどさ。

「レオン先生が学校を辞めたと伝えても、彼女は驚きませんでした。それはつまり、最初からレオン先生の裏の顔を知っていたということです」
「あれもカマ掛けだったのか……」

 本当、この子の精神年齢いくつなんだろう?

「おそらくレオン先生の女癖の悪さを密告したのも、パメラさん本人でしょうね」
「えっ、そうなの」
「今の段階では推測の域を出ませんが。まあ、あとでパメラさんに聞いてみましょう」
「そ、そうか。それならレオン先生が辞めた時期とも合うしな……」

 パメラがレオン先生に声を掛けたのは卒業式の日。でも、春にレオン先生が学校を辞めていることを考えれば、確かに時期は合う。

「パメラって子、すげえな……」

 口の悪さはともかくとして、俺はパメラの行動力に感心していた。もしかしたらエミルと同じくらい頭が切れる子かもしれない。
 
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