19 / 86
第1章 剣の磨き布
18 磨き布の話 3
しおりを挟む「でもさ。グラディスはレオン先生のことはただの恩師で、別に好きだったわけじゃないんだろ? なら、パメラって子がレオン先生に告白しようが関係ないんじゃない?」
グラディスは俺を見ると、わざとらしくため息をついた。隣でエミルもため息をついていた。
「エミルまでかよ?」
「エドガーさんって鈍いんですね」
子供の君に言われたくなかったよ……。
「つまりはグラディスもレオン先生のことを好きだったってこと?」
俺が改めて聞くと、グラディスはほんのりほほを染め、恥ずかしそうにぼそぼそ呟いた。
「う、うん……まあ……憧れっていうか、そういう気持ちがないと言ったら嘘になるかな……」
「っていうか、恋愛がらみの話なのかよ。俺、そういう話、苦手なのに……」
「なによその嫌そうな顔。話し聞くって言ったじゃない」
「言ったけどさあ……」
イーデン曰く「エドガーは女の子の心を全然わかってない」だそうで、実際そういう恋愛の駆け引きだとかの複雑なことが、俺には良くわからない。だから好きな女の子が出来ても、いつもフラれてばっかりだった。
それに人の良さにつけこまれて女の子に利用されることが多い俺にとっては、最近そういう恋愛がらみの話からはあえて距離を取っていたんだ。
「鈍いエドガーさんのことは放っておきましょう。グラディスさん、それから?」
あのさあエミル、年上にはもう少し敬意をはらおうよ……。
グラディスはというと、ため息をひとつついてから、こう続けた。
「パメラが本気だったら、私も許せたんだよ。親友だからね。パメラが本当に先生のことを好きなら、応援したいと思ってた。でも、親友だと思ってたのは私だけだったのかな……」
エミルの推察どおり、グラディスもお人好しの部類に入るみたいだ。俺だったら、いくら親友だからといっても好きな人を横取りするような人間を応援なんかできない。
「パメラが幸せならそれでいいかと思ってたんだ。でもね、卒業と同時にパメラは先生と別れちゃって……」
「早くない?」
「でしょ? 早すぎだっての!」
グラディスはぶぅと頬を膨らませて怒ると、すぐにシュンとうつむいてしまった。忙しい子だな。
「なんかね、パメラもレオン先生もいっぺんに失ったって感じがして……。もう忘れたくて。でも、この磨き布は捨てられなかったんだ。かなり高価なものだし……」
そんなパメラのいい加減な態度が許せなくて、グラディスはパメラと大喧嘩した。それからというもの、パメラとは絶交状態、磨き布は見るだけでも辛いので、捨てようかと思っていたところにちょうど俺が通りかかった、というわけらしい。
そういう理由だったのか……。そりゃ、そんな因縁だらけの磨き布なんて見たくもなくなるよな。
「でもパメラって子、ひどいな。グラディスの親友なんだろ? 普通、友だちが気にかけてる先生と付き合ったりするか?」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ただの辺境の道具屋です
綾崎オトイ
ファンタジー
辺境で道具屋を営んでいる少女。
実はわけありなこの少女が作るものは効果抜群。なんでも揃う道具屋の店主は聖女様か魔女様か?
難しいことは全然考えてないので設定ゆるゆる
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる