道具屋探偵ファンタジア ~古道具を売りに行ったら探偵の助手として雇われました~

荒久(あららく)

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第1章 剣の磨き布

16 磨き布の話 1

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 馬に乗って追いかけてきたグラディスは、俺たちに話をする決心をしてくれたみたいだった。道具屋にたどりついて馬を店先に繋ぐと、俺たちはグラディスと一緒に店に入った。

 グラディスは道具屋に足を踏み入れると、古道具や天井から吊り下げられた薬草を見て「わぁ」と感嘆の声を上げた。まるで、道具屋に始めて来たときの俺を見ているみたいだ。

 すでに俺たち専用になりつつある店の隅のアンティークのテーブルにグラディスを先に座らせると、俺は店の隅にエミルを引っ張って行った。

「エミル、説明してよ。なんでグラディスが追いかけて来ることがわかったんだよ」
「わかりませんか?」
「わからないから聞いてるの!」

 さっきエミルは俺に「グラディスは悩みを打ち明ける事を迷っている」、そして「種を撒いた」と言っていた。その言葉の意味がどうしても知りたかった。悔しいけど、考えてみても全然わからなかったからね。

「グラディスさんは本心では磨き布にまつわる問題を気にしています。本当に触れられたくない話題なら、もう一度エドガーさんに会おうとは思いませんからね」
「そうか。本当は誰かに話を聞いてもらいたがってるってこと?」
「その通りです」
「じゃあ、種を撒いたってのは?」
「グラディスさんとお話をしてみて、すぐにわかりました。とても善良な人だと。そういうタイプの人にあなたのせいでノエルが泣いていると罪悪感を植えつければ、きっと罪の意識に苛まれて僕を追ってきてくれるはず、と」
「エミル、あのさあ……」

 俺は手を額に当ててため息をついた。まったくこの子は。

「やり方がえげつないよ。ダメだよ、そんな人を追い詰めるようなやり方をしちゃ。そんな事を続けていたら、いつかみんなから嫌われちゃうよ?」

 年上として、ここは言うべきことは言わないとな。エミルのためでもあるんだから。
 するとエミルは俺をじっと見上げてから、柔らかく微笑んだ。

「やっぱり僕の目に狂いはなかった」
「は?」
「さあ、グラディスさんの話を聞きましょう。彼女、悩みを聞いてもらいたくてウズウズしてますよ」
「え、ちょっと」

 そう言うと、エミルはさっさとテーブルの方へと行ってしまった。なんなんだ、いったい……?
 
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