道具屋探偵ファンタジア ~古道具を売りに行ったら探偵の助手として雇われました~

荒久(あららく)

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第1章 剣の磨き布

04 不思議な兄妹 2

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 あなたの持ち物ですか?って、なんか変な聞き方する子だな。俺が売りにきたんだから俺の持ち物に決まってると思うんだけど。

「そのハンカチがどうかした?」
「なるほど……」

 少年は俺の質問には答えず、うつむいて、考え込む仕草をした。
 何がなるほどなんだろう……?
 すると、ハンカチを眺めていた少年が顔を上げて俺を見た。

「これはハンカチじゃありません」
「え、違うの?」
「ええ。これは剣の磨き布ですよ」
「磨き布って、剣を手入れするあの布のことか。そういえば剣の授業で使ったような気がするな」

 てっきり大判のハンカチかと思っていた四角に折りたたんだ布は、剣を手入れするための「磨き布」という物らしい。確かに言われてみれば厚みがあるし、ハンカチにしてはしっかりとした造りだ。

「っていうか、どうしてこれが俺の物じゃないってわかったの?」
「それは、あなたはどう見ても文系で、こんな立派な磨き布を使うような本格的に剣術をたしなむような方には見えなかったからですよ」

 うっ……。
 そのものズバリ言い当てられて、俺は言葉に詰まった。頭が良さそうな子だなと思っていたけど、なんだか予想以上だ。もしかしたら俺より頭脳明晰なんじゃないだろうか。

 その時、横で俺と少年のやり取りを見ていたイルミナさんが、俺に声を掛けてきた。

「ねえ、君。エドガー君だっけ? ちょっと頼みがあるんだけど……」
「え、頼み、ですか……」

 目が合うと、イルミナさんはいたずらっぽい笑顔を作った。
 うう……。美人のイルミナさんの頼みなら聞いてみたい。だけど、このイルミナさんの笑顔、なんとなく嫌な予感がする。

 俺が笑顔を引きつらせていると、イルミナさんが俺の鼻先に人差し指を突きつけてきた。
 
「君の嫌な予感は当たりかも。アルバイト、してみない?」
「バ、バイト?」
「そう。この子たちの、お・も・り!」

 イルミナさんは首を傾けながら、にっこりと笑った。
 俺は、イルミナさんの言った事が一瞬理解できなかった。今、なんて言った? おもり……おもり……。
 
「お、おもりって、子供のお守り?」
「あら、他になんのお守りがあるの?」
 
 俺は慌てふためいた。
 なんで俺が子供のお守り? イルミナさんはなんで突然そんなことを……?

「い、いや俺、子供のお守りなんてしたことないし……! それに大学の授業があるし、他にバイトもしてるんで……」
「そうね。君、優しそうだし」

 いやいやイルミナさん、俺の話、聞いてます? っていうか、聞いて!

「い、いや、優しくはないですよ。お人好しってよく言われますけど、言い換えれば騙されやすいっていうか……」
「この子たちの話し相手になってくれるだけでいいのよ。もし頼まれてくれたら、バイト代として買取価格はずんじゃうんだけどなー」
「や、やります!」

 俺は思わず即答していた。
 くそっ、笑いたければ笑え。俺だって生活がかかってるんだ。切羽詰まってるんだからな!?
 
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