11 / 12
滋養草
しおりを挟む
メイは目の前で頭から血を流し、いくら声を掛けても反応がないルゥ。
彼を介抱すべく、彼を抱きかかえるがその間にも、頭からは血は流れ落ちる。
「ど、どうしよう……」
メイの手は血に汚れ、彼の頭を支えていた可愛らしいフリルのついたシャツの袖も彼の血によって、赤黒い色へと染められていく。
メイは助けを求めようと辺りを見渡すが、ここは”禁足地”。立ち入りが村の掟によって禁止されているこの地では、人の気配など一切あろうはずもない。
そして、絶望的なことに医者が居る村までは、メイが普通に歩いてこの地を抜けるまでに1時間以上は掛かるのだ。まして、意識を失ったルゥを連れて行けばどの程度時間が掛かるなど予想も出来なかった。
「あっ……」
ふと、メイの視界に1つの植物が目に入る。
それは背丈はメイよりも高く、小さな青い花をいくつも付け、葉はしわくちゃによれた特徴的な植物であった。
「あれは……”滋養草”?」
メイが見つけたのは、滋養草と呼ばれる植物。滋養草は有名な医薬として扱われる薬草の一種で、すりつぶして使えば傷口を塞ぎ、煎じて飲めば熱冷ましにもなる。
彼女はこの薬草の特徴を、村長の話から聞いていて覚えていたのだった。
「ルゥ、ちょっと待っててね」
メイは優しくルゥの頭を地面に置くと、滋養草を取りに走る。そして滋養草の葉を数枚ちぎると、すぐさまルゥの元へと戻る。
そしてメイは葉を口に含むと、かみ砕いてルゥの傷口に優しく塗る。滋養草が塗られた傷口は、先ほどよりも血が止まるが、それでもゆっくりと血は滴る。
「ルゥ! 大丈夫!?」
メイはルゥに向かって叫び、彼の目を覚まさせようとする。数回ほど、同じことを繰り返すとルゥはゆっくりとまぶたを開ける。
「……メ……イ?」
「ルゥ、良かった!」
目を覚ましたルゥであったが、血を流しすぎたのであろうか、ルゥの顔は紙の様に白くなり、唇は青紫色を差していた。
そして、ルゥは寒いのか体をひどく震えさせる。
「寒……い……」
「は、早くここから帰りましょう」
ルゥはメイに肩を抱かれながらゆっくりと立ち上がると、村まで歩き始めた。
だがそれもつかの間のこと、少し歩いたルゥは力なく地面へと崩れ落ちる。
「ルゥ!?」
突然地面に崩れたルゥに巻き込まれる形で、メイも地面に倒れ伏せる。
メイは辺りを見て村までの道のりを考えるが、まだまだ時間が掛かり、それまでにルゥが保つとは思えなかった。
「そうだ……ここからなら、龍先生のところの方が近いわ」
そしてメイは再びルゥの肩を抱くと、龍の洞窟へと足を向けたのであった。
彼を介抱すべく、彼を抱きかかえるがその間にも、頭からは血は流れ落ちる。
「ど、どうしよう……」
メイの手は血に汚れ、彼の頭を支えていた可愛らしいフリルのついたシャツの袖も彼の血によって、赤黒い色へと染められていく。
メイは助けを求めようと辺りを見渡すが、ここは”禁足地”。立ち入りが村の掟によって禁止されているこの地では、人の気配など一切あろうはずもない。
そして、絶望的なことに医者が居る村までは、メイが普通に歩いてこの地を抜けるまでに1時間以上は掛かるのだ。まして、意識を失ったルゥを連れて行けばどの程度時間が掛かるなど予想も出来なかった。
「あっ……」
ふと、メイの視界に1つの植物が目に入る。
それは背丈はメイよりも高く、小さな青い花をいくつも付け、葉はしわくちゃによれた特徴的な植物であった。
「あれは……”滋養草”?」
メイが見つけたのは、滋養草と呼ばれる植物。滋養草は有名な医薬として扱われる薬草の一種で、すりつぶして使えば傷口を塞ぎ、煎じて飲めば熱冷ましにもなる。
彼女はこの薬草の特徴を、村長の話から聞いていて覚えていたのだった。
「ルゥ、ちょっと待っててね」
メイは優しくルゥの頭を地面に置くと、滋養草を取りに走る。そして滋養草の葉を数枚ちぎると、すぐさまルゥの元へと戻る。
そしてメイは葉を口に含むと、かみ砕いてルゥの傷口に優しく塗る。滋養草が塗られた傷口は、先ほどよりも血が止まるが、それでもゆっくりと血は滴る。
「ルゥ! 大丈夫!?」
メイはルゥに向かって叫び、彼の目を覚まさせようとする。数回ほど、同じことを繰り返すとルゥはゆっくりとまぶたを開ける。
「……メ……イ?」
「ルゥ、良かった!」
目を覚ましたルゥであったが、血を流しすぎたのであろうか、ルゥの顔は紙の様に白くなり、唇は青紫色を差していた。
そして、ルゥは寒いのか体をひどく震えさせる。
「寒……い……」
「は、早くここから帰りましょう」
ルゥはメイに肩を抱かれながらゆっくりと立ち上がると、村まで歩き始めた。
だがそれもつかの間のこと、少し歩いたルゥは力なく地面へと崩れ落ちる。
「ルゥ!?」
突然地面に崩れたルゥに巻き込まれる形で、メイも地面に倒れ伏せる。
メイは辺りを見て村までの道のりを考えるが、まだまだ時間が掛かり、それまでにルゥが保つとは思えなかった。
「そうだ……ここからなら、龍先生のところの方が近いわ」
そしてメイは再びルゥの肩を抱くと、龍の洞窟へと足を向けたのであった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる