ルゥと欲深なドラゴンの解放物語

重弘 茉莉

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お茶会-2

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 洞窟でメイは龍のお土産にと持ってきた果実パイを、3つに切り分ける。その断面からは鮮やかな赤と黄色果実、スポンジが顔を覗かせた。
そして同時に、鼻をつく強い甘い香りと果実の香り。

「ああ、良い香りだねェ」

「お、おいしそう!」

「ちょっと、ルゥ! まだ手を出さないで!」

 つまみ食いをしようとしたルゥを、メイが睨み付ける。その手にはパイを切ったナイフを手に持ったまま。
そのメイの剣幕に、ルゥは伸ばし掛けた手を引っ込める。その2人を見ながら、龍は低く笑い声を上げる。

「まぁまぁ、そんな怖い顔をしなさんなァ、メイ」

「だって、せっかく龍さんのために作ったパイを、ルゥがつまみ食いをしようとするから……」

「せっかくのお茶会さあねェ。言い争いはなしさァ」

 ほっぺたを膨らませたメイを、龍が諫める。メイはぷいっと顔を龍から背けると、ため息をついた。

「はぁ。まったくルゥは本当に食いしん坊なんだから」

「ご、ごめん、メイ」

 メイはルゥがつまみ食いしないように監視しながらも、、切り分けたパイを白い皿に並べ始める。
メイはそのパイが乗った皿の1つを、龍のその大きな手の中へと手渡す。

「ありがとねェ、メイ」

「龍さんのお口に合うと良いんだけど」

「こんな美味しそうな香りがしているものが、口に合わない訳がないだろうねェ」

「いっただっきま~す!」

 メイの監視を振りほどき、ルゥは皿の1つを取るとパイを口に頬張る。
パイはその表面からパリパリと小気味良い音を立てながら、ルゥの口へと消えていく。

「あらあら、がっついちゃってねェ」

「ああ、もう!」

 龍とメイもルゥに続いて、パイを口に運んでいく。龍は一口で飲み込んでしまうが、とても満足げな顔を見せる。

「こんな美味しいのを食べるなんて、いつ以来だろうねェ」

「本当!? 龍さんも気に入ってくれて、とても嬉しい! ……でも、足りたの?」

 メイは自分が作ったパイが、龍に気に入ってもらえたのを喜ぶと同時に明らかに足りていないことを心配し始める。

「あァ。 お腹一杯ではち切れちまいそうさねェ」

 龍はそう言うと、口元をにやりと笑みを作る。そしてルゥの方へと目を向けた。
ルゥはパイを全て食べ終えて、満足げな表情を見せていた。

「メイがパイを食べ終えたら、今日は帰りなァ。ルゥ?」

「えっ!? おれ、もっとここでドラゴンと話していたい!」

「それは嬉しい申し出だけどねェ」

 ちらりと龍は天井を見やると、日がやや傾いていた。そして龍は優しい眼差しを2人へと向ける。

「あまり遅いと、暗くなって危ないからねェ」

 そして、お茶会が終わってルゥとメイは洞窟の外へと歩き始める。
龍は無言でその2人の背を見つめる。
 突然、洞窟の出口でルゥとメイは振り返り、思いっきり手を振る。

「また明日ー! ドラゴン!」

「また明日! 龍さん!」

「ああ、また明日」

 そして、2人は昨晩と同じく、龍の住処から村へと帰ったのであった。
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