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『第1章 転落、紅き龍との契約』
強襲、冒険者たち-2
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グルダンの強烈な脚力により、弾丸のように蹴飛ばされた金貨。
それらがキラキラと光りながらも、真っ直ぐにヴィスラに向かって飛んでいく。
「” 乱れ火矢”!」
グルダンが金貨を蹴飛ばすと同時に、グルダンの後ろに居た弟のタケシィが火の矢の魔法を唱える。
金貨の合間を縫うように放たれた何本もの鋭い火矢が赤髪のヴィスラへと宙を走る。
「死ねぇっ!」
大男のグルダンは棘のついた鉄球、モーニングスターを振り回す。
そして火矢と金貨がヴィスラに当たるのと同時に、勢いを付けて柔らかい脇腹へとその鉄球で殴りつける。
飛礫《つぶて》となった金貨と火矢はヴィスラの顔に突き刺さり、金貨ごと顔を焼く。。
同時に鉄球が無防備になったヴィスラの脇腹へと突き刺さる。だが。
「ああっ?」
グルダンの指先で感じていた鉄球の重さがにわかに消える。
さらには鉄球を振り回すために踏ん張っていた足がつんのめる。グルダンは何が起こったのかわからずにいたが、中途半端に切り取られた鉄球の一部が飛んでいくのを見て理解する。
「ぬぅぅっ」
通常ならば、顔を狙われれば咄嗟に防御反応を示して手で防御に回るはず。
だが、ヴィスラは全く防御をせずに火矢と金貨を顔で受けつつ、右手の鋭いかぎ爪で鉄球を瞬時にえぐり取ったのだった。
「うっ!」
グルダンはそこまで理解し、咄嗟にヴィスラへとつんのめる自身の体を止めようとする。
だが、勢いは止まらない。
「あァあァ。でっかいのとちっこいの、なかなか面白いことしてくれるさね。だけどね」
顔を燃やされながらもヴィスラはまばたき1つせず、にたにたと口角を持ちあげる。
まるでそれは子供が虫を弄ぶような、歪んだ笑顔。
「勢いが、だいぶ足りないさね」
ヴィスラの脇を通り抜け、グルダンは大きく躓《つまず》いて倒れ伏す。
咄嗟に起き上がったグルダンはモーニングスターの柄を持ち上げようとするが、手に感じられたのは柄がまるで何もないような軽さしかない。
「……っ!?」
重量だけではなく指の感覚すらない。
グルダンは自身のその右手へとゆっくりと視線を向ける。
「あァ、こいつを忘れてるさね」
ヴィスラは足下に落ちた”もの”を拾い上げると、グルダンへと放り投げる。
固まるグルダンの顔にぺちゃりと生暖かい湿ったものがぶつかる。グルダンは目の前に落ちた自身が見慣れた”それ”を見て身を震わす。
「お、俺の、て、手……」
グルダンの右手。正確には人差し指の付け根から真一文字に切り取られた部位。
親指を除いた4本の指と手の平の一部が、まるで死んだクモのように目の前に転がっていた。
「あっ、あっ……」
グルダンは祈るように自身の右手に視線をやる。
そこには親指を残しただけの自身の右手。そして忘れたように吹き出る血液。
「グルダン兄貴ぃ! クソッ、” 乱れ火矢”!」
タケシィの持つ杖から何本もの火の矢が飛び出し、ヴィスラの背へと突き刺さり燃える。
だが、ヴィスラは全く意に介さない。
「ん、まァ。楽には死なせてやるさね」
かぎ爪をぶらぶらと揺らしながら、ヴィスラはグルダンに向かって近づいていく。
「ちょ、ちょっとっ!」
「あァん?」
ずっと固まっていた 蒲生 悠が声を上げる。
そして気怠そうにヴィスラは悠の方に視線を向けたのだった。
それらがキラキラと光りながらも、真っ直ぐにヴィスラに向かって飛んでいく。
「” 乱れ火矢”!」
グルダンが金貨を蹴飛ばすと同時に、グルダンの後ろに居た弟のタケシィが火の矢の魔法を唱える。
金貨の合間を縫うように放たれた何本もの鋭い火矢が赤髪のヴィスラへと宙を走る。
「死ねぇっ!」
大男のグルダンは棘のついた鉄球、モーニングスターを振り回す。
そして火矢と金貨がヴィスラに当たるのと同時に、勢いを付けて柔らかい脇腹へとその鉄球で殴りつける。
飛礫《つぶて》となった金貨と火矢はヴィスラの顔に突き刺さり、金貨ごと顔を焼く。。
同時に鉄球が無防備になったヴィスラの脇腹へと突き刺さる。だが。
「ああっ?」
グルダンの指先で感じていた鉄球の重さがにわかに消える。
さらには鉄球を振り回すために踏ん張っていた足がつんのめる。グルダンは何が起こったのかわからずにいたが、中途半端に切り取られた鉄球の一部が飛んでいくのを見て理解する。
「ぬぅぅっ」
通常ならば、顔を狙われれば咄嗟に防御反応を示して手で防御に回るはず。
だが、ヴィスラは全く防御をせずに火矢と金貨を顔で受けつつ、右手の鋭いかぎ爪で鉄球を瞬時にえぐり取ったのだった。
「うっ!」
グルダンはそこまで理解し、咄嗟にヴィスラへとつんのめる自身の体を止めようとする。
だが、勢いは止まらない。
「あァあァ。でっかいのとちっこいの、なかなか面白いことしてくれるさね。だけどね」
顔を燃やされながらもヴィスラはまばたき1つせず、にたにたと口角を持ちあげる。
まるでそれは子供が虫を弄ぶような、歪んだ笑顔。
「勢いが、だいぶ足りないさね」
ヴィスラの脇を通り抜け、グルダンは大きく躓《つまず》いて倒れ伏す。
咄嗟に起き上がったグルダンはモーニングスターの柄を持ち上げようとするが、手に感じられたのは柄がまるで何もないような軽さしかない。
「……っ!?」
重量だけではなく指の感覚すらない。
グルダンは自身のその右手へとゆっくりと視線を向ける。
「あァ、こいつを忘れてるさね」
ヴィスラは足下に落ちた”もの”を拾い上げると、グルダンへと放り投げる。
固まるグルダンの顔にぺちゃりと生暖かい湿ったものがぶつかる。グルダンは目の前に落ちた自身が見慣れた”それ”を見て身を震わす。
「お、俺の、て、手……」
グルダンの右手。正確には人差し指の付け根から真一文字に切り取られた部位。
親指を除いた4本の指と手の平の一部が、まるで死んだクモのように目の前に転がっていた。
「あっ、あっ……」
グルダンは祈るように自身の右手に視線をやる。
そこには親指を残しただけの自身の右手。そして忘れたように吹き出る血液。
「グルダン兄貴ぃ! クソッ、” 乱れ火矢”!」
タケシィの持つ杖から何本もの火の矢が飛び出し、ヴィスラの背へと突き刺さり燃える。
だが、ヴィスラは全く意に介さない。
「ん、まァ。楽には死なせてやるさね」
かぎ爪をぶらぶらと揺らしながら、ヴィスラはグルダンに向かって近づいていく。
「ちょ、ちょっとっ!」
「あァん?」
ずっと固まっていた 蒲生 悠が声を上げる。
そして気怠そうにヴィスラは悠の方に視線を向けたのだった。
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