夜明けの冒険譚

葉月

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オ・マ・ケ

『みんななかよくあそびたい』

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※この話は、「第2章の第十五話」に登場する絵本の内容です。本編の第2章第十五話まで読んでいない方は先にそちらをお読みください。



  ◇ ◇ ◇



「いっくよー! それー」

 あるところに、たくさんのどうぶつさんたちがくらしておりました。
 どうぶつさんたちは、まいにち、もりの中にあるこうえんで、なかよくあそんでいます。
 きょうは、みんなでサッカーをしています。

「パス! ぶたさん、おねがい」
「おっけー。いくよ。シューート!」

 ぶたさんは、サッカーがとっても上手で、いつもシュートを打つのは、かれのやくめです。

「あー! また入れられた」
「すごいすごい!」
「えへへ」

 ぶたさんは、みんなにほめられてうれしそうです。

「もういっかい、いくよー」

 そうして、みんなでなかよくあそんでいました。



 しかし、あるとき、たかさんがすずめさんに言います。

「さいきん、ずっとサッカーばっかりであきてきたよな」
「たしかに、さいきんほかのあそびをしていないね」
「おれ、ドッジボールがしたいのに……」
「あっ、あそこにボールがあまってるみたい。いまからしようよ!」

 そうして、たかさんとすずめさん、それにたかさんといっしょにあそびたい、鳥さんたちがあつまって、みんなでドッジボールをはじめました。
 すると、どうでしょう。
 サッカーをしていたいぬさんが、ドッジボールをしているつばめさんにぶつかってしまったのです。
 これには、ぶたさんたちどうぶつさん、たかさんたち鳥さんは、おこりました。

「なんで、そんなとこでドッジボールしてるんだよ! もっとはしっこでやったらいいじゃないか!」
「はしっこでできるわけないだろ! おまえらのほうがずっと、そこつかってたんだから、ゆずってくれてもいいじゃん!」
「なんだとー!」

 どうぶつさんたちと鳥さんたちは今にもけんかをしてしまいそうないきおいです。

 そのとき、コウモリさんがいいました。

「じゃあ、ばしょを分けたらいいんじゃないかな?」
「どういうこと?」
「ほら、鳥さんたちはつばさで自由にそらをとべるでしょ? だから、くうちゅうせんはどう? そしたら、ばしょをとりあうことなく、なかよくあそべるんじゃないかなあ」
「たしかに!」

 さっそく、鳥さんたちは上空でドッジボールをはじめます。ボールがおちないように、かれいにキャッチしています。
 どうぶつさんたちもりくでサッカーをはじめました。
 すると、コウモリさんがどうぶつさんたちにちかづきます。

「あの、ぼくもいっしょにあそんでいいかな」
「えっと……、ごめん。ここは、そらを飛べない子たちであそぶんだ」
「あっ! そっか。ぼくのほうこそごめんね。鳥さんたちのところにいってくるよ」

 その日から、どうぶつさんと鳥さんでわかれてあそぶようになりました。



 そのあとも、つばさをもたずそらを飛べないどうぶつさんたちはサッカーを、つばさをもちそらを飛べる鳥さんたちはくちばしをつかってドッジボールをしました。
 もう、ばしょのとりあいでけんかをすることはありません。
 ぶたさんとたかさんはコウモリさんにありがとうとつたえたいとおもいました。

「あれ、コウモリさんは? もしかして、鳥さんたちのとこ?」
「いや、おれたちのところにも、いないぞ?」

 ぶたさんがいぬさんにきくと、コウモリさんはかぜをひいたらしい、ということをききました。
 コウモリさんのかぜがなおったら、かんしゃをつたえようとかんがえた、ぶたさんとたかさんはそれぞれみんなとあそびはじめます。

 そうしてきょうも、みんななかよくこうえんであそぶのでした。

めでたし。めでたし。



  ◇ ◇ ◇



……ね。本当に?」

 そう呟いたその魔族は本を閉じ、椅子から立ち上がってどこかへ向かうのだった。


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