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第2章 水の研究者、魔族と戦う
第50話 疑惑、行動開始
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「すいませーん。ちょっといいですかー?」
ラケイルの街中を歩いていて最初に見つけた魔道具屋に入った。品揃えは良い店だったが店員が誰もいなかったので、店の奥に向かって声をかける。
少し待つと、奥からドタドタと誰かがやってくる音がした。
「あぁ、悪い。裏で作業してた。バドス魔道店へようこそ」
現れたのはガタイのいいオッサン。彼の顔にはそこそこ大きな傷があった。
「この傷が気になるか?」
道具屋の店員がまるで冒険者のような風貌だったので驚いていると、オッサンにそう問いかけられた。
「あっ、ごめんなさい。ジッと見てしまって……」
「そんなに気にしてねーよ。初見の客はみんなそんな感じだ。実は俺、昔は冒険者やっててな。これはその時に付いた傷だ。体力的に冒険者やるのがキツくなってきたんで、魔道具屋になったってわけ。こう見えて手先は器用だったからな。冒険者時代の伝手も使えるし、なかなかこの仕事は良いぞ」
今でも魔物と十分戦えそうな感じがしますけどね。
「それで、用は何だ?」
「魔具師のガロンヌって方を探しているんですが、ご存じですか?」
「ガロンヌ……。お前ら、あいつの知り合いか?」
一瞬だけ、オッサンが怖い顔をした気がした。
「いえ、知り合いってわけではないです。ちょっと彼に俺の杖を作ってもらおうかと思っていまして。ちなみにガロンヌさんの居場所を教えてもらえたら、このお店でたくさん買い物しますよ」
よくよく考えれば魔道具屋で別の場道具屋の場所を聞くのは悪手だった。それでオッサンは怒ったのかもしれない。買い物すると約束することで許してもらおう。
「おっ、そうか。そういうことなら良いぞ。ちなみにあいつは使用者に合せて杖を作るが、その素材は依頼者自身に持ってこさせる。その素材集めがなかなか大変なんだが……。お前さんなら平気そうだな」
「えっ。なんで分かるんです?」
「お前さん、ゴールド級の冒険者だろ」
オッサンが俺の首元を指さす。
俺の首には金色のタグがかかっていた。
「あぁ、そういうことですか」
「ゴールドの冒険者ともなれば、かなりレアな素材も持ってこれるだろう。そんな冒険者に頼られるガロンヌが羨ましいぜ」
そう言いながらオッサンはカウンターの跳ね上げ扉をあげて、俺とミーナを店の奥に手招きした。
「あいつ、今は店舗にいないんだ。俺が居場所を知ってる。呼んできてやるから、しばらく客間で待ってな」
「でしたら、時間をおいてまた来ますけど」
「分かってねーな。これは交渉なんだよ。俺がガロンヌを呼んでくる。それでお前らが、はいさよならっていなくなったら、俺に何のメリットもないだろ。だから客間にある俺自信作の魔具でも見ながら、欲しいもんを選定しとけ。そんでいくつか買ってくれ。ここに置いてある商品よりすこーし高値だがな」
商売人だな。見た目は冒険者の癖に、手腕は完全に商人だ。
他の魔道具屋の店員がガロンヌさんの所在を知っているかは分からない。ここで拒否して、もしオッサン以外がガロンヌさんの居場所を知らなければ、機嫌を損ねたオッサンに頭を下げなくちゃいけなくなるかもしれない。
「わかりました。では、待たせていただきます」
──***──
店の奥に案内されながら、オッサンはバドスという名前だということを聞いた。このバドス魔道店の店主。そのまんまだった。
「それじゃ、俺はガロンヌを呼んでくる。ちゃんと待ってろよ。そこに置いてある茶は好きに飲んでくれ。魔具も自由に見て良いが、使い方が分からないなら触るな」
「はーい」
「待ってるニャ」
見た目は厳ついが、良い人っぽい。
「喉が乾いたからお茶飲むニャ。トールもいるかニャ?」
「いや、俺は要らないよ」
奴隷から解放された後、俺は基本的に誰かに招かれた場所で出された飲食物には手を出さないようにしていた。国からお墨付きをもらっているはずのゴールド級冒険者が、異世界人を騙して奴隷にしてしまうような世界だ。誰も信用してはいけない。
喉が渇いたら自分の魔法で出した水を飲めばいい。それが一番安全だ。もしくは出された飲み物を魔法で分離し、純粋な水成分だけを飲むようにしていた。
獣人であるミーナは鼻が良いので、彼女が安全だと判断した飲食物を彼女が口にするのを止めることはしていない。それでも俺は念のため飲まないようにしている。
「……遅いニャ」
結構待ったが、まだバドスさんは帰ってこない。魔道具を見ているのも初めは面白かったが、効果が分からないので触れられず、ただ見ているだけで次第に俺も飽きてきた。
俺より早く飽きたミーナは、少し前から眠そうにしている。
「ウチ、ちょっと寝るにゃ」
「うん。良いと思うよ」
今、この店の中には俺たちしかいない。きっとゴールド級の冒険者だということで、信頼されているのだろう。ちなみに店内に誰もいないというのは、霧の索敵魔法で調べた結果だ。
バドスさんに騙されていないか確認のため、彼が客間から出ていった後すぐ俺はこの魔法を展開していた。特に不審な点はなかったと思う。
それから更に1時間ほど待った。
「おっ、帰ってきた。けど、これは……」
索敵魔法に反応があり、バドスさんらしき体格のヒトが店に入ってきたのが分かった。しかしその反応に続き、複数のヒトが続けて店に入ってきたという反応もあった。
ふたりならバドスさんとガロンヌさんだろう。しかし店に入ってきた反応は全部で10人分もあった。なにか嫌な予感がする。
「ミーナ。ちょっと起きて」
それなりに強く身体を揺り動かすが、全く起きる気配がない。安全だからと気が緩みがちな街の中でも、彼女がこんな状態になることは今まで一度もなかった。
「……まさか、ミーナが気づけないほど無味無臭の睡眠薬を?」
魔道具屋なのだから、そうしたアイテムがあるのかもしれない。
まだ確証はない。ミーナが本当に疲れていて起きないだけって可能性もある。でも俺の中ではこの時点で、バドスに騙されたものとして行動を起こすことが決定した。
ラケイルの街中を歩いていて最初に見つけた魔道具屋に入った。品揃えは良い店だったが店員が誰もいなかったので、店の奥に向かって声をかける。
少し待つと、奥からドタドタと誰かがやってくる音がした。
「あぁ、悪い。裏で作業してた。バドス魔道店へようこそ」
現れたのはガタイのいいオッサン。彼の顔にはそこそこ大きな傷があった。
「この傷が気になるか?」
道具屋の店員がまるで冒険者のような風貌だったので驚いていると、オッサンにそう問いかけられた。
「あっ、ごめんなさい。ジッと見てしまって……」
「そんなに気にしてねーよ。初見の客はみんなそんな感じだ。実は俺、昔は冒険者やっててな。これはその時に付いた傷だ。体力的に冒険者やるのがキツくなってきたんで、魔道具屋になったってわけ。こう見えて手先は器用だったからな。冒険者時代の伝手も使えるし、なかなかこの仕事は良いぞ」
今でも魔物と十分戦えそうな感じがしますけどね。
「それで、用は何だ?」
「魔具師のガロンヌって方を探しているんですが、ご存じですか?」
「ガロンヌ……。お前ら、あいつの知り合いか?」
一瞬だけ、オッサンが怖い顔をした気がした。
「いえ、知り合いってわけではないです。ちょっと彼に俺の杖を作ってもらおうかと思っていまして。ちなみにガロンヌさんの居場所を教えてもらえたら、このお店でたくさん買い物しますよ」
よくよく考えれば魔道具屋で別の場道具屋の場所を聞くのは悪手だった。それでオッサンは怒ったのかもしれない。買い物すると約束することで許してもらおう。
「おっ、そうか。そういうことなら良いぞ。ちなみにあいつは使用者に合せて杖を作るが、その素材は依頼者自身に持ってこさせる。その素材集めがなかなか大変なんだが……。お前さんなら平気そうだな」
「えっ。なんで分かるんです?」
「お前さん、ゴールド級の冒険者だろ」
オッサンが俺の首元を指さす。
俺の首には金色のタグがかかっていた。
「あぁ、そういうことですか」
「ゴールドの冒険者ともなれば、かなりレアな素材も持ってこれるだろう。そんな冒険者に頼られるガロンヌが羨ましいぜ」
そう言いながらオッサンはカウンターの跳ね上げ扉をあげて、俺とミーナを店の奥に手招きした。
「あいつ、今は店舗にいないんだ。俺が居場所を知ってる。呼んできてやるから、しばらく客間で待ってな」
「でしたら、時間をおいてまた来ますけど」
「分かってねーな。これは交渉なんだよ。俺がガロンヌを呼んでくる。それでお前らが、はいさよならっていなくなったら、俺に何のメリットもないだろ。だから客間にある俺自信作の魔具でも見ながら、欲しいもんを選定しとけ。そんでいくつか買ってくれ。ここに置いてある商品よりすこーし高値だがな」
商売人だな。見た目は冒険者の癖に、手腕は完全に商人だ。
他の魔道具屋の店員がガロンヌさんの所在を知っているかは分からない。ここで拒否して、もしオッサン以外がガロンヌさんの居場所を知らなければ、機嫌を損ねたオッサンに頭を下げなくちゃいけなくなるかもしれない。
「わかりました。では、待たせていただきます」
──***──
店の奥に案内されながら、オッサンはバドスという名前だということを聞いた。このバドス魔道店の店主。そのまんまだった。
「それじゃ、俺はガロンヌを呼んでくる。ちゃんと待ってろよ。そこに置いてある茶は好きに飲んでくれ。魔具も自由に見て良いが、使い方が分からないなら触るな」
「はーい」
「待ってるニャ」
見た目は厳ついが、良い人っぽい。
「喉が乾いたからお茶飲むニャ。トールもいるかニャ?」
「いや、俺は要らないよ」
奴隷から解放された後、俺は基本的に誰かに招かれた場所で出された飲食物には手を出さないようにしていた。国からお墨付きをもらっているはずのゴールド級冒険者が、異世界人を騙して奴隷にしてしまうような世界だ。誰も信用してはいけない。
喉が渇いたら自分の魔法で出した水を飲めばいい。それが一番安全だ。もしくは出された飲み物を魔法で分離し、純粋な水成分だけを飲むようにしていた。
獣人であるミーナは鼻が良いので、彼女が安全だと判断した飲食物を彼女が口にするのを止めることはしていない。それでも俺は念のため飲まないようにしている。
「……遅いニャ」
結構待ったが、まだバドスさんは帰ってこない。魔道具を見ているのも初めは面白かったが、効果が分からないので触れられず、ただ見ているだけで次第に俺も飽きてきた。
俺より早く飽きたミーナは、少し前から眠そうにしている。
「ウチ、ちょっと寝るにゃ」
「うん。良いと思うよ」
今、この店の中には俺たちしかいない。きっとゴールド級の冒険者だということで、信頼されているのだろう。ちなみに店内に誰もいないというのは、霧の索敵魔法で調べた結果だ。
バドスさんに騙されていないか確認のため、彼が客間から出ていった後すぐ俺はこの魔法を展開していた。特に不審な点はなかったと思う。
それから更に1時間ほど待った。
「おっ、帰ってきた。けど、これは……」
索敵魔法に反応があり、バドスさんらしき体格のヒトが店に入ってきたのが分かった。しかしその反応に続き、複数のヒトが続けて店に入ってきたという反応もあった。
ふたりならバドスさんとガロンヌさんだろう。しかし店に入ってきた反応は全部で10人分もあった。なにか嫌な予感がする。
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それなりに強く身体を揺り動かすが、全く起きる気配がない。安全だからと気が緩みがちな街の中でも、彼女がこんな状態になることは今まで一度もなかった。
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魔道具屋なのだから、そうしたアイテムがあるのかもしれない。
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別作品も投稿してます! こっちも見てねー!!
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