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第2章 水の研究者、魔族と戦う
第47話 世界樹の枝ゲット
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「ねぇ、世界樹。魔族って普通に死ぬの?」
ミスティナスを襲っていたという魔族は地面で動かなくなったが、念のため確認しておく。
『死にはしますが、ほとんどの場合は蘇ります。魔族は勇者の攻撃でなければ、一撃で打ち倒すことはできないのです』
「一撃でってことは、何度か殺せば消滅させられるんだ」
『そ、それは……。どうでしょう? 勇者以外が魔族を倒せることは稀ですから、情報がありません。私もトールさんの強さを知っていなければ助けを求めようとは思いませんでした。そもそも何度も魔族を殺すなんてこと、いくら貴方でも』
試しにやってみれば分かる。
「水よ、回れ」
地面に横たわる魔族の胴を水の輪で真っ二つにした。これでも俺がいなくなったら復活するかもしれない。だから追加の魔法を発動させる。
「水よ、分離し 回れ」
魔族のどす黒い血を分離し、魔力が豊富な水を取り出す。その水を使って複数の水の輪を作って更に魔族の身体を切り刻む。魔族の血も水分が多いようで助かった。
『あ、あの、トールさん。これはいったい、なにをしているんですか?』
「魔族を殺し続けてる」
『は、はい?』
「この魔族の血を使って、何度も殺し続けてるの。コイツの血が魔力を含まなくなるまで俺の魔法は消えないよ。ヒトは死んでも3時間くらいは血に魔力が残るんだけど、魔族もそうなんじゃないかな」
魔法が元は魔族のものだということは、魔族の方が血により強く魔力が浸透している可能性がある。そうだとしても、俺の魔法は死んだあとまで発動し続けるんだから問題ないだろう。
ちなみに座標指定しかできなかったこの魔法だが、今は対象の部位指定もできるようになった。もし魔族が復活して身体を動かしたとしても、俺の魔法は魔族の身体に追従してその部位を切り刻み続ける。
これでなんとかなるだろう。
なんとかなってほしい。
「この回ってる水に触ると指とか簡単に切れちゃうから、エルフたちがこの付近に来ても触らないように注意してね」
『わかりましたが……。もしかして、トールさん。もう帰るおつもりですか?』
「そうだよ。ミーナが待ってるし」
もし起きてたら、俺を探してるだろうな。メモも残さずいなくなってゴメン。今すぐ帰るから。
『貴方は二度もエルフ族を救ってくださった英雄です。彼らにトールさんをもてなすよう指示することもできます。ミスティナスに寄って行っていただけませんか? 私としても、貴方にお礼がしたいのです』
「んー、今回じゃなくて良いよ。ミーナがいないから」
早く帰らせてくれ。
『本当に、ミーナさん最優先なんですね』
「そうだよ。俺がこの世界で信じられるのは彼女だけ」
世界樹だって、敵が雷魔法を使うって教えてくれなかったし。
『そ、それはトールさんが早く召喚しろって急かすから! 私だって、何度もお伝えしようとしたんですよ!?』
あ、世界樹が俺の思考を読めるっての忘れてた。
「ごめんごめん。話を聞かなくて悪かった。でも、もう良いだろ? 早く俺を元の場所まで送り還して」
『……承知しました。あっ! で、では今回のお礼に、私の枝とエリクサーの小瓶を数本持って帰ってください』
「それは嬉しい! 実は強い杖を作ろうと思い始めたんだよね!!」
『魔族を瞬殺してしまうトールさんが、強い杖を? 失礼ですが、無用の長物なのではないでしょうか』
「でも、せっかくもらえるなら最適な用途で使わなきゃ。世界樹の枝って、強い杖の素材にできるって前に言ってたよね。それに今回倒した魔族より強いのがいるかもしれないから」
今回は雷 vs 水という絶対的に相手が優位だと思われる対戦で、相手が油断していたのが俺の勝因だ。俺の感覚では、魔力量は魔族の方が多かった。長期戦になれば俺が負けていた可能性だってある。
『なるほど。トールさんが仰ることは一理あるかもしれません。特に今回は魔族の王たる強い存在も封印から解放されているようですので』
「今回? それに魔族の王って、魔王ってこと?」
いくつか気になる単語があった。
『魔族はおよそ100年に一度、この世界に姿を現します。その度に女神様が異世界から勇者を召喚し、何とか魔族を退けてきました。現れる魔族の数は全部で13体。トールさんが倒したのはそのうちの1体です』
「13体しかいないんだ」
『トールさんはそう感じるかもしれませんが、ラエルノアほどの実力者が10人いても魔族には太刀打ちできません。そんな存在が13体も現れるのです。こちらの世界の住人にとって魔族は恐怖と絶望の象徴』
「あいつ、ラエルノア10人より強かったのか」
だとすると、早めに倒せて良かったな。
『えぇ。それに此度は魔王が依り代を得て復活しているのです。魔王はかつての勇者が人里離れた洞窟の最深部に封印しました。しかし強い恐怖と絶望に陥った人族が、魔王の声を聞いてしまったのでしょう』
「その魔王ってのは、どのくらい強い?」
『魔王は不死属性の魔法を使います。魔王自体も不死なので、勇者の力を持ってしても倒すことはできません』
「だから封印にしたんだ。俺も封印魔法なんて使えないから、魔王だけは勇者に任せなきゃいけないのか」
高校生たちに危ないことはさせたくない。危険は全て俺が取り除いたうえで、封印だけお願いしよう。
「わかった。色々情報ありがと。でも、そろそろマジで帰らせて!」
ミーナが心配してるかもしれない。
『そうですね。もう少し詳しい情報は、いつでも召喚用の紋章を通してお話しできます。お暇なときに話しかけてください。それで、こちらが今回の報酬となります』
以前と同じように目の前の空間が光り始めた。手を差し出すと、光が小瓶と枝に代わって俺の手に落ちてきた。
小瓶は前も見たことがある。どんな傷でも治せるエリクサーだ。それが今回は5本もあった。とても助かる。そしてもうひとつ、とんでもないオーラを秘めた枝。これが世界樹の枝か。
俺の頭上を覆う世界樹の枝の内の一本。これだけ巨大な樹なのだから枝くらい落ちてきそうだが、そんなことは絶対にないらしい。世界樹が意図しない限り枝は絶対に入手できないのだという。
「ありがと。大事に使わせてもらうよ」
『はい。では転送します』
俺の身体が光り始めた。
ミーナが起きてないと良いが。
「トール!!」
遠くからラエルノアが走ってこちらに来るのが見えた。彼女は無事だったんだ。ララノアはどうかな? 彼女も無事だと良いが……。
とりあえず笑顔で手を振っておく。
また俺がミスティナスの王都へ行ってみたいと思えるようになるまで。
「さよなら」
ラエルノアが到達するより早く、俺は世界樹によって転送された。
──***──
泊っている宿まで戻ってきた。
ミーナはまだ眠っている。
心配させずに済んで良かった。
それにしても寝顔、可愛いな。
俺も疲れたし寝よう。早く体力を回復しておかないと、彼女に全て搾り取られて死にそうになる。
もしかしたら、魔族より発情期のミーナの方が手ごわいんじゃないか?
そんなことを考えながら、俺は彼女を起こさないよう最大限の注意を払ってベッドにもぐりこんだ。
ミスティナスを襲っていたという魔族は地面で動かなくなったが、念のため確認しておく。
『死にはしますが、ほとんどの場合は蘇ります。魔族は勇者の攻撃でなければ、一撃で打ち倒すことはできないのです』
「一撃でってことは、何度か殺せば消滅させられるんだ」
『そ、それは……。どうでしょう? 勇者以外が魔族を倒せることは稀ですから、情報がありません。私もトールさんの強さを知っていなければ助けを求めようとは思いませんでした。そもそも何度も魔族を殺すなんてこと、いくら貴方でも』
試しにやってみれば分かる。
「水よ、回れ」
地面に横たわる魔族の胴を水の輪で真っ二つにした。これでも俺がいなくなったら復活するかもしれない。だから追加の魔法を発動させる。
「水よ、分離し 回れ」
魔族のどす黒い血を分離し、魔力が豊富な水を取り出す。その水を使って複数の水の輪を作って更に魔族の身体を切り刻む。魔族の血も水分が多いようで助かった。
『あ、あの、トールさん。これはいったい、なにをしているんですか?』
「魔族を殺し続けてる」
『は、はい?』
「この魔族の血を使って、何度も殺し続けてるの。コイツの血が魔力を含まなくなるまで俺の魔法は消えないよ。ヒトは死んでも3時間くらいは血に魔力が残るんだけど、魔族もそうなんじゃないかな」
魔法が元は魔族のものだということは、魔族の方が血により強く魔力が浸透している可能性がある。そうだとしても、俺の魔法は死んだあとまで発動し続けるんだから問題ないだろう。
ちなみに座標指定しかできなかったこの魔法だが、今は対象の部位指定もできるようになった。もし魔族が復活して身体を動かしたとしても、俺の魔法は魔族の身体に追従してその部位を切り刻み続ける。
これでなんとかなるだろう。
なんとかなってほしい。
「この回ってる水に触ると指とか簡単に切れちゃうから、エルフたちがこの付近に来ても触らないように注意してね」
『わかりましたが……。もしかして、トールさん。もう帰るおつもりですか?』
「そうだよ。ミーナが待ってるし」
もし起きてたら、俺を探してるだろうな。メモも残さずいなくなってゴメン。今すぐ帰るから。
『貴方は二度もエルフ族を救ってくださった英雄です。彼らにトールさんをもてなすよう指示することもできます。ミスティナスに寄って行っていただけませんか? 私としても、貴方にお礼がしたいのです』
「んー、今回じゃなくて良いよ。ミーナがいないから」
早く帰らせてくれ。
『本当に、ミーナさん最優先なんですね』
「そうだよ。俺がこの世界で信じられるのは彼女だけ」
世界樹だって、敵が雷魔法を使うって教えてくれなかったし。
『そ、それはトールさんが早く召喚しろって急かすから! 私だって、何度もお伝えしようとしたんですよ!?』
あ、世界樹が俺の思考を読めるっての忘れてた。
「ごめんごめん。話を聞かなくて悪かった。でも、もう良いだろ? 早く俺を元の場所まで送り還して」
『……承知しました。あっ! で、では今回のお礼に、私の枝とエリクサーの小瓶を数本持って帰ってください』
「それは嬉しい! 実は強い杖を作ろうと思い始めたんだよね!!」
『魔族を瞬殺してしまうトールさんが、強い杖を? 失礼ですが、無用の長物なのではないでしょうか』
「でも、せっかくもらえるなら最適な用途で使わなきゃ。世界樹の枝って、強い杖の素材にできるって前に言ってたよね。それに今回倒した魔族より強いのがいるかもしれないから」
今回は雷 vs 水という絶対的に相手が優位だと思われる対戦で、相手が油断していたのが俺の勝因だ。俺の感覚では、魔力量は魔族の方が多かった。長期戦になれば俺が負けていた可能性だってある。
『なるほど。トールさんが仰ることは一理あるかもしれません。特に今回は魔族の王たる強い存在も封印から解放されているようですので』
「今回? それに魔族の王って、魔王ってこと?」
いくつか気になる単語があった。
『魔族はおよそ100年に一度、この世界に姿を現します。その度に女神様が異世界から勇者を召喚し、何とか魔族を退けてきました。現れる魔族の数は全部で13体。トールさんが倒したのはそのうちの1体です』
「13体しかいないんだ」
『トールさんはそう感じるかもしれませんが、ラエルノアほどの実力者が10人いても魔族には太刀打ちできません。そんな存在が13体も現れるのです。こちらの世界の住人にとって魔族は恐怖と絶望の象徴』
「あいつ、ラエルノア10人より強かったのか」
だとすると、早めに倒せて良かったな。
『えぇ。それに此度は魔王が依り代を得て復活しているのです。魔王はかつての勇者が人里離れた洞窟の最深部に封印しました。しかし強い恐怖と絶望に陥った人族が、魔王の声を聞いてしまったのでしょう』
「その魔王ってのは、どのくらい強い?」
『魔王は不死属性の魔法を使います。魔王自体も不死なので、勇者の力を持ってしても倒すことはできません』
「だから封印にしたんだ。俺も封印魔法なんて使えないから、魔王だけは勇者に任せなきゃいけないのか」
高校生たちに危ないことはさせたくない。危険は全て俺が取り除いたうえで、封印だけお願いしよう。
「わかった。色々情報ありがと。でも、そろそろマジで帰らせて!」
ミーナが心配してるかもしれない。
『そうですね。もう少し詳しい情報は、いつでも召喚用の紋章を通してお話しできます。お暇なときに話しかけてください。それで、こちらが今回の報酬となります』
以前と同じように目の前の空間が光り始めた。手を差し出すと、光が小瓶と枝に代わって俺の手に落ちてきた。
小瓶は前も見たことがある。どんな傷でも治せるエリクサーだ。それが今回は5本もあった。とても助かる。そしてもうひとつ、とんでもないオーラを秘めた枝。これが世界樹の枝か。
俺の頭上を覆う世界樹の枝の内の一本。これだけ巨大な樹なのだから枝くらい落ちてきそうだが、そんなことは絶対にないらしい。世界樹が意図しない限り枝は絶対に入手できないのだという。
「ありがと。大事に使わせてもらうよ」
『はい。では転送します』
俺の身体が光り始めた。
ミーナが起きてないと良いが。
「トール!!」
遠くからラエルノアが走ってこちらに来るのが見えた。彼女は無事だったんだ。ララノアはどうかな? 彼女も無事だと良いが……。
とりあえず笑顔で手を振っておく。
また俺がミスティナスの王都へ行ってみたいと思えるようになるまで。
「さよなら」
ラエルノアが到達するより早く、俺は世界樹によって転送された。
──***──
泊っている宿まで戻ってきた。
ミーナはまだ眠っている。
心配させずに済んで良かった。
それにしても寝顔、可愛いな。
俺も疲れたし寝よう。早く体力を回復しておかないと、彼女に全て搾り取られて死にそうになる。
もしかしたら、魔族より発情期のミーナの方が手ごわいんじゃないか?
そんなことを考えながら、俺は彼女を起こさないよう最大限の注意を払ってベッドにもぐりこんだ。
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別作品も投稿してます! こっちも見てねー!!
スキル【特許権】で高位魔法や便利魔法を独占!
俺の考案した魔法を使いたいなら、特許使用料を
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挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
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