勇者召喚に巻き込まれた水の研究者。言葉が通じず奴隷にされても、水魔法を極めて無双する

木塚麻弥

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第1章 水の研究者、異世界へ

第21話 水の拘束魔法

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 ミーナと盛り上がりすぎた。
 彼女は今、疲れてぐっすりと寝ている。

「まさか5回も……。自分でも信じられん」

 ミーナとの相性が良くて、何度もできてしまう。それほどひとりでする方じゃなかったから、自分がこんなにも連続で出来たことに驚いている。女性の身体って、凄いんだな。あと野外でするのは解放感がヤバかった。それが羞恥心などと入り交じり、癖になりそうだ。

 彼女も満足してくれてると嬉しいな。

 俺の隣で小さく寝息を立てているミーナを眺めた。猫のように身体を丸めて寝ている姿が可愛らしい。薄いシートは敷いているが、地べたで若い女性を寝せてしまっていることに少し罪悪感を感じた。

 彼女は慣れてるから大丈夫だと言ってくれたが……。やはり馬車を借りてくるべきだっただろうか。急いでもしょうがないことは分かっている。それでも最短で高校生たちに合流できるよう、効率の良さを重視して馬による旅を選択したんだ。とはいえ今更後悔しても遅い。

「移動速度を調整して、なるべく町とかで休めるようにするべきかな」

 スヤスヤと眠るミーナの頭を撫でながら、明日以降は宿で休めるようにしてあげると、心の中で約束しておいた。


 月が明るい。
 とても良い夜だ。

 結局、ミーナとヤっている間に魔物や人が襲ってくることはなかった。邪魔が入らなかったからかなり盛り上がってしまった。夕方に遭遇したゴールド級冒険者が良い感じでこの森の肉食系魔物たちを引き寄せてくれたようだ。ちょっと感謝だな。

 いつもなら一度イクと眠くなる。自動防御の水魔法をセットしてあるので俺も寝て良いのだけど、なんだか今日は目が冴えてしまった。

「自動防御魔法の改良でもするか」

 コロッセオの街にいた頃から俺たちを幾度となく守ってくれた自動防御魔法は、指定した対象以外が特定の範囲内に侵入した時に発動する。侵入者の頭部を目掛けて水の塊が飛び、そのまま10分間頭部を包んでしまうというもの。機能としては、たったそれだけの魔法だ。

 しかしこの魔法で侵入者10人を仕留め、4人を生け捕りにできている。可能なら全員生け捕りにしたい。朝起きたら、部屋に死体があるという惨事を避けたいからだ。本来なら100%生け捕り可能な自動防御魔法を創りたかった。

 ただ、水ってのは実体がない。対象の手足を拘束しようにもすり抜けてしまう。人を物理的に拘束可能な魔法は、この世界では土魔法だけだとミーナが言っていた。

 そのため仕方なく頭部を水で覆って窒息させる魔法を使っているんだ。頭部が丸っと水に浸かっている時間が3分以上で意識を失う確率が高くなる。俺たちを暗殺しに来る輩なのだから、息を止める訓練などしている可能性を考慮して10分間は水の塊が解除されないようにした。10人は耐えられず死んでしまったが、俺たちを殺すか拉致するために忍び込んだのだろうから自業自得だ。

 水は実体がないから拘束できないが、頭が動くのに合わせて水の塊が動けば問題ない。そして実体が無いので、いくら水の塊を手で排除しようとしても無駄だ。絶対に逃れることはできない。そしてこの世界は魔法による攻撃場所を詠唱で指定することが可能。

 俺が創った魔法は “מים, לעטוףマイン ラトゥーフィア" 。
 水よ、頭部を包め──と言っている。

 魔法の永続時間は詠唱時のイメージで設定可能だということを実験により導き出した。永続時間を設定しなければ、自動解除されるのは込めた魔力量に依存する。

 ちなみに “לעוףמיםהפרידלִרְקוֹדマイン レファフィリード ラトゥーフィア”という詠唱にすれば、頭部を包んだ侵入者の唾液や胃液を分解して魔力を含んだ水を回収。魔法の永続時間の延長が可能だ。

 更に言えば、迎撃対象ひとりに必要な水の量がさほど多くなくても良いのがこの魔法の利点。人は深さ5センチ程度の水たまりで溺死してしまう。鼻と口、そして耳の穴に水が入り込めば効果としては十分。そもそもこの世界の人々は水魔法で攻撃されることがないため、いきなり水で頭部を覆われた時の対処などできない。

 きっと頭部を水で包まれた者はもがき苦しんで暴れていたんだろうが、俺とミーナは水魔法で遮音したベッドで寝ているのでその音に気付くことはない。頭部を水で包む魔法のトラップを回避された時の最終防御壁となる水のカーテン。これも俺が創った魔法だ。でもこれは街にいて、水がたくさん手に入る時しか使用できない。


「人が意識を失ったかどうかの判定なんて、魔法ができるわけないしな……。できたとしても、その判定が間違っていたら危ないし」

 意識は確実に失っていてほしいが、死んでもらっては困る。その調整が困難だった。その問題を解決可能な、新たな魔法を編み出す必要がある。

「水を氷にできれば、物理的に拘束できるんだけど」

 この世界に氷魔法は無いとミーナから聞いていた。水を凍りにするには、当然だが温度を下げる必要がある。その温度を下げるための魔法が存在しないんだ。熱の一種として火を発生させる魔法があるくらいだから、その逆をする魔法なんてありそうな気がするんだけどな。

 ……あっ、そうか。
 もしかしたらできるかも。

 水を凍らせるのに、温度を下げる必要などないと気付いた。

 この世界には魔法がある。
 
 魔力という良く分からないエネルギーを物体へと変化させたり、明らかにエネルギー保存の法則を無視した感じで別のエネルギーへと変換できてしまう。であればコレだって、できるはずだ。

 コップに水筒から水を注ぎ、魔力を込めて詠唱する。

טיפות מים, תפסיקディポート マイン ディフシーク

  コップの水が凍っていく。
  良し、成功だ!

 俺は水の周りの温度を下げて氷にするのではなく、水分子の動きを止める詠唱を行った。液体の水は水分子がくっついたり離れたりを繰り返すことで流動しているのだが、それを魔法で強制的に止めてやることで氷にすることができると判明した。

 この日から俺は、水と氷の魔法使いとなった。
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