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第21話 プレゼント
しおりを挟む俺は奴隷商人たちを処理してから、奴隷にさせられていたエルフたちのところへ戻ってきた。
ここはさっきまでいた奴隷商人たちの住居だと思われる場所とは別の建物。奴隷を監禁しておくための場所だ。住居っぽい方には顧客名簿とか重要そうな書類があった。こちらの監禁用のアジトにはちょっと豪華な部屋があって、奴隷の売買はここで行われていたみたい。
こっちのアジトより奴隷商人の住居の方が魔法による防衛が厳重になされていた。世界法で禁止されている奴隷の売買を行っていることがバレて騎士団が乗り込んできても最悪、奴隷を捨てて自分たちだけ逃げ延びるつもりだったのだろう。そのためにふたつのアジトを使っていたんだ。
「戻ったよー。みんないる?」
「ケイトさんの指示通り、全員ここで待ってたぜ」
狼獣人の男が答えてくれた。
彼の名前はテルー。奴隷商人から奴隷たちの管理を任されていた。そんなテルーも奴隷で、奴隷商人たちが取引を行う際の護衛などでも使われていたという。
テルーと、彼の周りにいる少年や少女たちの首には隷属の首輪がついていない。奴隷商人とちょっと『お話』をしに行く前に、俺が全員の首輪を収納魔法で異空間にしまっちゃったからな。
隷属の首輪って本来は、主と設定された者が触れなければ外すことのできない魔具らしい。でも物体を選択して収納できる俺の魔法なら、無事にそれを取り外すことができた。
「あの……。俺たちもう、ほんとに自由なんですか?」
「うん。そうだよ」
「お、お母さんのところに帰っていいの?」
「もちろん! 俺がみんなを送り届けてあげる」
この場にはテルーの他に六人の少年少女がいた。全員がエルフや獣人で、人族はひとりもいない。ここにいる子たちは全員が奴隷商人に攫われて無理やり奴隷にされたのだとテルーから聞いていた。
人族だったら十歳ぐらいに見えるエルフの双子もいる。おそらくこの子たちがフリーダの妹なんだろう。こんなに幼く見えるのに、エルフだから俺より年上だったりするかもしれないが。
「私たち」
「お姉ちゃんのところに帰りたい」
「君たちのお姉さんって、フリーダって名前?」
「お姉ちゃんを知ってるんですか!?」
「うん。彼女にお願いされて、俺は君たちを助けに来たんだよ」
「ほ、ほんとに!?」
「お姉ちゃんが!?」
ふたりで顔を見合わせて笑顔になる。
互いに抱き合って喜びを露わにしていた。
綺麗系なフリーダとは違った、美少女系統の双子エルフ。そんなふたりが涙を流しながら喜びあっているのを見て、なんだかほっこりした。
フリーダの十年の努力を無碍にしてしまうことになるが……。結果は変わらないのだから許してほしい。金貨五万枚も彼女が好きに使えるようになるんだからプラスになるはず。十年も奴隷として過ごすことになった妹たちのケアに使ってくれればいいんじゃないかな。
「ところでさ、君たちのお姉さんを喜ばせるために少し協力してほしいことがあるんだけど……。俺のお手伝いをしてくれる?」
「もちろんです!」
「なんでもやります!!」
双子は一切躊躇わず、俺に協力してくれることになった。
──***──
フリーダと付き合うことになった日の翌朝。
「おはよー!」
俺は彼女の家のドアをノックしていた。
少ししてフリーダが家の中から出てくる。
「おはよう、ケイト」
少し寝癖が残っている。
俺が来たのを知って慌てて出てきてくれたみたい。
彼女のこーゆーところも可愛い。
「こんなに朝早くから来るぐらいなら、その……。やっぱり泊っていけばよかったじゃないか」
「いや、でも。いきなりお泊りってのは、ちょっとな」
フリーダと付き合うことになった俺に、彼女は泊っていけと言ってくれた。でも俺はどうしてもやりたいことがあったから、それを泣く泣く断ったんだ。
今からそのやりたかったことをする。
「今日はね。フリーダにプレゼントがあるんだ」
「プレゼント? 私になにかくれるのか!?」
明らかに彼女のテンションが上がっている。
これなら、きっと喜んでくれるはず。
おそらく彼女が今、最も望んでいることだから。
「ほら。おいで」
「「はーい」」
「──えっ」
俺が呼ぶと、隠れていた双子エルフが出てきた。
妹たちを見たフリーダが動きを止める。
そして彼女たちは俺の依頼通り、フリーダに抱き着いて自身らがプレゼントであることを宣言する。
「「お姉ちゃん、ただいま!」」
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