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第4話 武器の調達支援
しおりを挟む「おぉ! コレは剣の素材に良さそうな硬度」
ケイトは収納魔法で魔界までやって来ていた。
彼は今、魔界最奥の地で眠る巨大な竜の口の中に入っている。
「ちょっとだけ牙を拝借しますよー」
人間の身の丈ほどある牙の一本に手をかけ、収納魔法を発動させた。
魔界にはギガントタートルと言う超硬い甲羅を持つ巨大な亀がいる。人間界で言えば倒す方法が無いため、危険度Sランクに分類される魔物だ。そんなギガントタートルの甲羅をひと噛みで粉々にしてしまう巨竜ドラムの牙が──
「はーい、ありがとね」
ケイトの収納魔法によって容易く削り獲られた。
彼の魔法の前では、硬さなど意味を成さない。
ちなみにケイトが牙を一部削り盗った巨竜ドラムは、魔王軍四天王が死に際に言っていた八大魔将より強い十六天魔神の一体だ。
目的を果たしたケイトは再度収納魔法を展開し、人がひとり通るサイズの異界への入口を開いた。そして迷わずそこに足を踏み入れる。
「ふう。やっぱり魔界に長時間いると気分が悪くなるな」
ケイトは部屋の中に立っていた。
ここは彼が宿泊している宿屋。
ケイトは収納魔法を応用し、好きな場所へと瞬時に移動できる転移魔法を生み出していた。これの原理としては単純で、普段は目視した地点に設定している異界への出入口を、遠く離れた場所に設置しているだけ。
自分自身をアイテムとして収納魔法から出し入れすることで、異空間を経由した転移魔法を実現していたのだ。
過去に収納魔法をこんな使い方する魔術師や賢者はひとりもいなかった。
ケイトの収納魔法にサイズの制限がなかったから。
そして彼の体質が、普通とは少し異なっていたからできたこと。
「さて。それではルークスにプレゼントする聖剣の代わりを作りますか」
人間界に存在するどんな武器を用いても、ギガントタートルの甲羅に傷をつけられない。それ以上の硬度を誇る巨竜ドラムの牙。ケイトはその牙を、大小さまざまな収納魔法を展開して器用に削っていく。
「こんなもんかな? ちょっと不格好だけど……」
ケイトに武器をつくる才能はない。
なんとなく剣っぽい形に加工しただけ。
しかし素材が最高ランクのモノであるため、完成した大剣は人間界ではありえないほど高性能なものとなった。
ちなみに十六天魔神の中で最も優れた防御魔法の使い手はプラエフェクトスと言う悪魔だが、そいつが展開した魔法障壁を巨竜ドラムの牙は嚙み砕くことができる。
つまり、十六天魔神すら屠る可能性のある武器が人間界に創成されたということ。
──***──
ケイトと別れた街から移動し、武器や防具の生産が盛んな街までやって来たルークス一行。彼らは折れた聖剣 (のレプリカ)の代わりを入手するつもりだった。
なんとなく足を踏み入れた武器商店で、ルークスが一本の大剣に目を止める。
「不格好な剣だ……。しかしなぜだろう? とてつもない力を感じる」
それはそのはず。
十六天魔神ドラムの牙からできた剣なのだから。
収納魔法の応用でルークスたちの動向をチェックしていたケイト。彼はルークスが入った武器商店の棚に、作ったばかりの大剣をこっそり置いた。もちろん、収納魔法で。
「親父、この剣はいくらだ?」
「あ゛ぁ゛? なんだその歪な大剣は。そんなもん、俺が作った武器じゃねぇ」
「えっ。じゃ、じゃあこれ」
「勝手にもってけ。おそらくどこかのバカがうちの営業妨害でもしようとしてたんだ」
こうして人間界最強の大剣が無事、勇者ルークスの手に渡った。
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