45 / 50
第2章 魔法学園
第45話 新魔法の授業(3/4)
しおりを挟む「集え疾風、灯せ焔。風威を司りし静謐な風の精霊よ。強き火の精霊に加功して我が敵を燼滅せよ。颶風烈火」
俺が放った炎が風の補助を受けて勢いを増し、強烈な火炎となって魔法訓練場に設置されていた不倒之的を焼き焦がした。
「お、おぉぉぉ! ユーマ先生、凄い!!」
リエルが目を輝かせている。
彼女は火属性魔法を使えるようになりたいと言っていた。ハーフエルフであるリエルは風魔法と相性が良いので、まずはこの魔法を教えることにしたんだ。
「これが風属性と火属性を錬成した中級攻撃魔法。颶風烈火だよ。詠唱は長くなっちゃうけど、上級攻撃魔法に匹敵する威力がある。さ、リエルも使ってみようか」
「えっと……。新魔法って、どうやって使えばいいんですか? 普通にユーマ先生を真似して詠唱したら使えます?」
「あ、そっか」
特許実施許諾契約しなきゃ。
「まずは颶風烈火って言ってみて」
「はい。ぐ、颶風烈火──あっ! なにか出てきました」
おそらくリエルの目の前には半透明のボードが浮かび上がり、こんなメッセージが表示されているだろう。
[特許実施許諾契約書]
第1条(定 義)
魔法名称:颶風烈火
特許番号:特許第0000085号
第2条(実施許諾)
甲(特許権者)は乙(本魔法の使用希望者)に対し、本件特許に基づいて本魔法を使用する通常実施権を許諾する。
ただし乙は第三者に再実施権を与える権利を有しない。
第3条(対価)
乙は甲に対し、第2条に基づく実施権許諾の対価を支払う。
本魔法を使用した場合、レベルアップした際に得られるステータスポイント(以下SPという)の5%を実施料とする。
ただし特許権者と複数の特許実施許諾契約を締結する場合は、別途定めるSP軽減の恩恵を受けられるものとする。
第4条(対価の不返還)
本契約に基づき乙から甲に支払われた対価は、いかなる事由による場合でも返還し
ない。
(中略)
第12条(不争義務)
乙が本魔法を利用して甲に危害を加えることはできない。乙がこの条項を無視して甲に攻撃を行った場合、甲は本契約を強制解除できる。
なお、本契約以外にも同一の特許権者と特許実施許諾契約が締結されていた場合、甲は全ての契約を強制解除できる。
(中略)
本契約締結の証として、乙は下記に記名する。
甲:九条 祐真
乙:「 」
ちなみに甲、つまり特許権者である俺の氏名だけは元の世界の言語になっている。こっちの世界のヒトじゃ俺の名前を読むことはできない。これはクラスメイトたちと特許実施許諾契約を締結する時に確認した。
「内容を読んで、問題なさそうなら一番下に記名して」
誰の所にステータスポイントが行くか分からないのに、この世界の人々はもう5万人以上が俺と契約を結んでくれている。おかげでSPがウハウハです。
さ、リエルも俺にSPを分けてください!
「……甲は、きゅうじょう。くじょう、かな。名前は、ゆうまさん」
「えっ」
おかしい。
俺の名前は漢字で表記されてる。
新魔法研究会の教員たちだって、それが何者かの名前であることまでは把握していたが読むことはできていなかった。
なんでリエルさん読めちゃうんですか?
「これってもしかして、ユーマのこと?」
「いや、待って。なんで漢字が読めるの!?」
「言ってなかったけ? 私、エルフと異世界人のハーフなんだよ。異世界から来たお父さんに教えてもらったから、ユーマたちの世界の言葉が分かるの。やっぱりこれ、ユーマの名前なんだね!」
俺の名前の漢字を知れて嬉しそうにするリエル。
魔法訓練場の周りが騒がしくなった。
俺が異世界人であること。そしてこの世界に新魔法を追加した人物であることが教員たちにバレた。でも少し騒がしくなる程度で、誰かが魔法訓練場の中に入って来て俺に詰め寄ってくるとかはなかった。
『もうバレてしまいましたね。まさかリエルさんが漢字を読めるとは……。盲点でした。そして祐真様、反応が分かりやすすぎです』
完全にやったった。
漢字が読めても祐真なんて名前は元の世界にはたくさんいるんだから、しらばっくれればよかったんだ。
でもいきなりリエルが俺のことかと聞いてきたので、反応してしまった。
「私が颶風烈火を使って魔物を倒してレベルアップしたら、ユーマの所にSPが入るってことだよね?」
「……うん。そーゆーこと」
「じゃあ、これでユーマはもっと強くなっちゃうね」
そう言いながらリエルが契約書にサインしてくれた。
「特許権者が知り合いの俺なんだから、タダで魔法使わせろとかって思わない?」
「えっ。使わせてくれるの?」
正直、もう十分すぎるほどのSPは溜まっていた。
友達になったリエルからもSPをとるなんて申し訳ない気もする。
「あはは。冗談ですよ、ユーマ先生」
彼女にしても衝撃的な情報だったようで、しばらく俺のことを先生と呼ぶことを忘れていたみたい。それが元に戻った。
「ユーマ先生も異世界人ってことは、魔王からこの世界を守るために来てくれた勇者様なんですよね? そんな御方の力になれるなら、私はこの魔法を使っていっぱいレベルアップします!」
ほんと、良い子だなぁ。
よし。颶風烈火を最高の威力にできるよう、俺が設定したイメージなども余すことなく彼女に伝えてあげよう。最強の“颶風烈火使い”にしてあげる。
10
お気に入りに追加
1,201
あなたにおすすめの小説
全裸ドSな女神様もお手上げな幸運の僕が人類を救う異世界転生
山本いちじく
ファンタジー
平凡で平和に暮らしていたユウマは、仕事の帰り道、夜空から光り輝く物体が公園に落ちたのを見かけた。
広い森のある公園の奥に進んでいくと、不思議な金色の液体が宙に浮かんでいる。
好奇心を抱きながらその金色の液体に近づいて、不用心に手を触れると、意識を失ってしまい。。。
真っ白な世界でユウマは、女神と会う。
ユウマが死んでしまった。
女神は、因果律に予定されていない出来事だということをユウマに伝えた。
そして、女神にもお手上げな幸運が付与されていることも。
女神が作った別の世界に転生しながら、その幸運で滅亡寸前の人類を救えるか検証することに。
ユウマは突然の死に戸惑いながら、それを受け入れて、異世界転生する。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
前世が官僚の俺は貴族の四男に転生する〜内政は飽きたので自由に生きたいと思います〜
ピョンきち
ファンタジー
★☆★ファンタジー小説大賞参加中!★☆★
投票よろしくお願いします!
主人公、一条輝政は国際犯罪テロ組織『ピョンピョンズ』により爆破されたホテルにいた。
一酸化炭素中毒により死亡してしまった輝政。まぶたを開けるとそこには神を名乗る者がいて、
「あなたはこの世界を発展するのに必要なの。だからわたしが生き返らせるわ。」
そうして神と色々話した後、気がつくと
ベビーベッドの上だった!?
官僚が異世界転生!?今開幕!
小説書き初心者なのでご容赦ください
読者の皆様のご指摘を受けながら日々勉強していっております。作者の成長を日々見て下さい。よろしくお願いいたします。
処女作なので最初の方は登場人物のセリフの最後に句点があります。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる