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第2章 魔法学園
第29話 絶対に触るなよ?
しおりを挟むお約束通り、魔力測定水晶とやらは俺が触れた瞬間に消し飛んだ。
あまりにも細かく割れたので、水晶玉の破片はほぼ粉のような状態。そのおかげで目とかに入ることはなく、風に吹かれて霧散していった。
「……は?」
試験監督らしき男性が唖然としている。
「魔人の魔力でも割れないって言われてたのに、ユーマって凄いね」
「どういたしまして」
「お、おい! お前、いったい何をしやがった!?」
「何って、ただ言われた通りに触れただけです。それより俺との約束を覚えてますか? ちゃんと奨学金がもらえるように、推薦状くださいね」
さて、これですんなり納得してくれるかな?
「ふざけんな! さては魔法で水晶を消し飛ばしたな!?」
やっぱりそう来るか。
「そんなことしてませんよ」
「魔力測定水晶って、魔法耐性がすごく強い魔具ですよね。それを魔法で消し飛ばすしたとしても、凄いことなんじゃないですか?」
リエルが俺の援護をしてくれる。
良い子だな。
「ただこの場から消しただけかもしれない。もっかいやれ!」
男が椅子の下の箱から2個目の水晶を取り出した。
俺はそれに指で触れる。
パァン! ──っと、水晶が砕け散った。
「ほら、今の見てました?」
「そんなことはあり得ない!! 次はこれを腕にはめろ」
男が取り出したのは、何やら魔具っぽい腕輪。
「これはなんですか?」
「魔封じの腕輪だ。魔力が放出できなくなる。これを付けていれば、魔法で水晶をどこかに消すことなんか絶対にできないぞ!」
魔力が放出できなかったら、そもそも魔力測定できないのでは?
でも言い訳させてもらえなさそうだったので、渡された腕輪を大人しく装着した。
「さぁ、これでもう不正はできな──」
パァン!
「……えっと、割れちゃいましたね」
魔封じの腕輪でも俺の魔力は封じることができなかったようだ。
「おぉ。ユーマ、すごーい!」
「そ、そんな……。ではお前は、本当に魔人以上の魔力があるとでもいうのか?」
やっとクールダウンしてくれたようだ。
「騒がしいの。ファリル先生、何か問題でもあったのかね?」
立派な白髭を生やした老人がやって来た。
いかにも賢者っていう出で立ち。
そのお爺さんが何かに気付いたように立ち止まり、俺をジロジロと見てくる。
「ふむ、ふむふむ。ほぉ、これは凄い魔力じゃな」
「学園長の見立てでも、それは間違いないのですか?」
「そうじゃな。この子に魔力測定の水晶を触らせてはいかんぞ。恐らく粉々に砕けてしまうじゃろう。アレは非常に壊れにくいが、かなりの貴重品じゃ」
おっと、それはヤバい。
ファリルと呼ばれた男性を見ると、大量の冷や汗を流していた。
「これから測定を行うところか?」
「い、いえ。実は、その……」
「まさか、もう割ってしまったのか!?」
「すみません、学園長。俺には貴方のように、この者の魔力量を推し量ることができませんでした」
ファリル先生が頭を下げる。
俺も少し申し訳なくなった。
「まぁ、過ぎたことは良い。1個ぐらいは仕方ないじゃろう」
1個じゃないんだよな。
「あれひとつでファリル先生の年収が軽く吹き飛ぶのじゃ。くれぐれも彼に予備の水晶を触れさせるんじゃないぞ。いいか、絶対にダメだぞ」
「「「…………」」」
俺たちは誰も、学園長先生の顔を見ることができなかった。
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