上 下
29 / 50
第2章 魔法学園

第29話 絶対に触るなよ?

しおりを挟む
  
 お約束通り、魔力測定水晶とやらは俺が触れた瞬間に消し飛んだ。

 あまりにも細かく割れたので、水晶玉の破片はほぼ粉のような状態。そのおかげで目とかに入ることはなく、風に吹かれて霧散していった。

「……は?」

 試験監督らしき男性が唖然としている。

「魔人の魔力でも割れないって言われてたのに、ユーマって凄いね」

「どういたしまして」

「お、おい! お前、いったい何をしやがった!?」

「何って、ただ言われた通りに触れただけです。それより俺との約束を覚えてますか? ちゃんと奨学金がもらえるように、推薦状くださいね」

 さて、これですんなり納得してくれるかな?

「ふざけんな! さては魔法で水晶を消し飛ばしたな!?」

 やっぱりそう来るか。

「そんなことしてませんよ」

「魔力測定水晶って、魔法耐性がすごく強い魔具ですよね。それを魔法で消し飛ばすしたとしても、凄いことなんじゃないですか?」

 リエルが俺の援護をしてくれる。
 良い子だな。

「ただこの場から消しただけかもしれない。もっかいやれ!」

 男が椅子の下の箱から2個目の水晶を取り出した。

 俺はそれに指で触れる。


 パァン! ──っと、水晶が砕け散った。


「ほら、今の見てました?」

「そんなことはあり得ない!! 次はこれを腕にはめろ」

 男が取り出したのは、何やら魔具っぽい腕輪。

「これはなんですか?」

「魔封じの腕輪だ。魔力が放出できなくなる。これを付けていれば、魔法で水晶をどこかに消すことなんか絶対にできないぞ!」

 魔力が放出できなかったら、そもそも魔力測定できないのでは?

 でも言い訳させてもらえなさそうだったので、渡された腕輪を大人しく装着した。

「さぁ、これでもう不正はできな──」


 パァン!


「……えっと、割れちゃいましたね」

 魔封じの腕輪でも俺の魔力は封じることができなかったようだ。

「おぉ。ユーマ、すごーい!」

「そ、そんな……。ではお前は、本当に魔人以上の魔力があるとでもいうのか?」

 やっとクールダウンしてくれたようだ。


「騒がしいの。ファリル先生、何か問題でもあったのかね?」

 立派な白髭を生やした老人がやって来た。

 いかにも賢者っていう出で立ち。

 そのお爺さんが何かに気付いたように立ち止まり、俺をジロジロと見てくる。
 
「ふむ、ふむふむ。ほぉ、これは凄い魔力じゃな」

「学園長の見立てでも、それは間違いないのですか?」

「そうじゃな。この子に魔力測定の水晶を触らせてはいかんぞ。恐らく粉々に砕けてしまうじゃろう。アレは非常に壊れにくいが、かなりの貴重品じゃ」

 おっと、それはヤバい。
 
 ファリルと呼ばれた男性を見ると、大量の冷や汗を流していた。

「これから測定を行うところか?」

「い、いえ。実は、その……」

「まさか、もう割ってしまったのか!?」

「すみません、学園長。俺には貴方のように、この者の魔力量を推し量ることができませんでした」

 ファリル先生が頭を下げる。
 俺も少し申し訳なくなった。

「まぁ、過ぎたことは良い。1個ぐらいは仕方ないじゃろう」

 1個じゃないんだよな。

「あれひとつでファリル先生の年収が軽く吹き飛ぶのじゃ。くれぐれも彼に予備の水晶を触れさせるんじゃないぞ。いいか、絶対にダメだぞ」

「「「…………」」」

 俺たちは誰も、学園長先生の顔を見ることができなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...