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第1章 異世界で始める特許登録

第11話 レベル100超え

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「や、やった……の、かな?」

 ついフラグを立ててしまった。

 こういう場合、大抵の敵は復活して襲ってくる。

『魔人の消滅を確認。お疲れ様でした』

 俺の身体が輝きだした。
 以前と同じレベルアップ感覚だ。

 魔人を倒しても魔物と同じようにレベルアップできるみたい。

「良かった。倒せてたんだ」

 ほっとして胸をなでおろす。

『祐真様。申し訳ありませんが、水龍弾で周囲に広がっている炎を消火して頂けませんか? 女神様の結界がある古城は無事ですが、このままでは周辺の森が無くなってしまいます』

「あっ、そっか。了解!」

 特許権利化特典で発動させた炎竜之咆哮はもう消滅してる。でもその効果で発生した火が周辺の森を燃やしていた。

『森の燃えている部分とまだ燃えていない部分。その境目の炎を消してください。現在燃えている樹木を全て消火しようとするより効果的です』

「わかった」

 江戸時代の破壊消火みたいな感じね。

 狙う範囲のイメージが難しいけど、何とかやってみよう。

「水の精霊よ、可憐なる精霊よ、その身を水龍と化して我が敵を喰らえ──」

 詠唱破棄もできるけど、燃えてる森の範囲が広いのでフル詠唱しておく。これは初級魔法なので、今の俺の魔攻でも使用可能。

「水龍弾!」

 水の龍が森に向かって飛んで行った。

 ちなみにこれは本来3文節から構成される初級魔法、水流弾を改良したものだ。

 3文節で構成できるものを4文節にすることで詠唱時間が若干伸びてしまうが、それを補って余りある効果が新規性と進歩性を認められ、特許登録された。

 増えた文節というのは“可憐なる精霊よ”の部分。なんとなく水魔法って、女性型の精霊が司っているイメージが強かったので追加してみた。この世界の魔法は、いかに精霊を崇め、奉るかで威力が決定する。

 逆に言えば、そうした単語を完全に言わない詠唱破棄は効果が激減してしまう。


『お見事です。ほとんどの境目で火が消えました。あと2か所ほど、まだ燃えている場所があります』

「その場所まで案内して」

『承知致しました』

 アイリスの指示に従って移動し、まだ燃えている境目の炎を消した。魔力にはまだ余裕があったので、水龍弾で消せる範囲の火は消しておく。

 特許権利化特典で発動可能な水属性魔法はまだあるけど、もし次の魔人が攻めてきた時のために今はまだ使わずにとっておくことにした。

 そうこうしているうちに、全ての火が消えた。


『祐真様。御協力ありがとうございました』

「どういたしまして。いきなり魔人戦って、かなり焦ったよ」

 アイリスが居なければ初激で死んでいた。

 そのほかにも色んな偶然が重なって勝つことができた。

「お城に帰ってお風呂入りたい」

 そう言いながら地面に倒れる。
 本当に疲れた。

 
「……クラスのみんなは、あんなヤバそうな魔人と戦ってんのかな?」

『私ではわかりかねます。少なくとも私の中に蓄積されている情報では、女神様が勇者を召喚するこの古城付近に魔人が出現したという記録はありません。恐らく祐真様の魔法、雷哮の威力が桁外れで魔人が様子を見に来たのでしょう。こんなことになるとは思わず、あの場所で発動させるようにと進言してしまいました。誠に申し訳ありません』

 かなり後悔しているような声だった。

「アイリスは悪くないよ。大丈夫、なんとかなったじゃん! それに空撃ちはどこかでやってたんだし、結果は変わらないよ」

『そう言っていただけますと幸いです』

 まだ落ち込んでるみたい。
 話題を変えよう。

「そうだ、俺のレベルっていくつになったのかな? ステータス確認!」

 半透明のボードが浮き上がる。



[ステータス]
九条 祐真
種族:人族
職業:魔法使い(レベル106)



「…………ん?」

 レベル、ひゃくろく?

 もう一度ステータスボードを見てみる。

「ひゃ、ひゃくろく。お、俺、レベル106になってる!?」

 この世界、レベル99とか100がカンストじゃないんだ。

『魔族は魔王の手下の中でも最強の存在。危険度で言えばSランク。つまりドラゴンと同じかそれ以上に危険な敵なのです。それを倒したのですから、かなりの経験値を得られてもおかしくありません』

 さっきの魔人、ドラゴン級なんだ。
 
 人型のドラゴン。
 ヤバそうな感じしかしない。

 ほんと、良く倒せたな……。

『レベル92を超えましたので、目標であった魔法詠唱の特許化100件は達成できますね。おめでとうございます、祐真様』

「あっ、そっか」

 レベル1の時、もともと持っていたステータスポイントが100。レベル1アップで10SPもらえるから、92になった時に得られる総合計のステータスポイントは1000になる。

 10SPで1個の魔法詠唱を登録できる。
 
 つまり俺は、アイリスが言うように目標の特許化100件を達成できるだけのステータスポイントを稼げたってことになるんだ。


『また、あの明細書地獄が始まるのですね……』

 特許化するには明細書っていうめんどくさそうな文章を作る必要があるらしい。ちらっと見せてもらったが、作るのはかなり大変そうだった。

「お、俺も手伝うからさ。一緒に頑張ろう!!」

『ありがとうございます。ちなみにですが、クラスの方が戻ってこられるという2日後までに100件登録という目標の方を変更するという可能性は──』

「ないよ」

 何人が帰って来てくれるか分からないけど、用意しておく魔法のレパートリーは多いほど良い。だから頑張らなきゃ!!

『で、ですよねぇ』

 泣きそうな声のアイリス。

 スキルも泣くのかな?
 ゴメンね。俺も頑張るから。

 目指せ、特許化100件!
 
 特許実施許諾契約で、ステータスポイントが寝てても入ってくる未来のために!!
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