天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

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バルドル

援軍要請-Ⅰ-

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 この世界エヴァーフォーンの連絡手段は、専用紙を用いた遣り取りによって行われる。
 内容と宛先を紙に書いてハト形に折り、空へ放る。
 投げた紙がまるで生物の鳩の様に姿を変え、そのまま目的地へと飛び立つ。
 それほど高価な代物でもなく、魔法を使えない者でも取り扱い易い。
 通称"ハト紙"と呼ばれるこの方法が、最も一般的ポピュラーな連絡手段だ。
 平時であれば、これで事足りる。
 だがやはり、緊急時には転送魔法が格段に速い。
 婆さんが施した魔法でバルドルの街を目前にしたオレは、改めてそう感じた。

「・・・感心している場合、じゃねぇな」

 オレは夜闇の中、急いで街の入口まで駆け出す。
 バルドルはデトゥック村とは違い、高い石造の外壁に囲まれた中規模の街。
 辺りは夜の闇が支配しているせいか。
 当たり前だが入口の大門は閉ざされ、けれど門柱の松明は轟々と燃えていた。
 その門柱に、二人の若い男が駄弁っていた。
 服装からして、バルドルの衛兵だろう。
 オレに気づいた一人が、徐に近寄って来た。

「待て、そこの者。こんな夜中に何用だ」

 男は訝しげに尋ねてきたが、どことなく呂律の回らない口調だった。

 「エリシア・ルーンだ。急用で領主に会いに来た。すまねぇが、通してくれ」

 オレはそう端的に用件を伝え、その場を通り過ぎようとするも。
  
「おいっ、俺達の許可なく勝手な真似すんじゃねぇ」

 背後から伸びた手が肩に置かれ、呼び止められた。
 振り返ると松明が原因、にしては赤ら過ぎる顔がそこにあった。
 男は明らかに酔っていた。
 そして片手に酒瓶を持ちながら、好色な目でオレを舐めまわす様に見ている。
 するともう片方も下品な笑みを浮かべながら、こちらにやって来た。
 オレは思わず舌打ちし、肩の手を払いのける。
 ・・・お前らに構っている暇ねぇんだよ。
 胸糞悪い気分を拳に変え、一発ぶん殴ろうとしたその時。
 大門の隣、兵士用の小さな扉が急に開かれた。
  
「おまえら、何を騒いでいる?」

 扉から出てきた中年の男に、見張り番二人の態度が一変した。
 足早にオレから離れ、酒瓶を隠すように両手を後手に組み敬礼する。
 
「いえ、マムイ兵長殿。なっ何でもありません!」
 
「何でもないわけ・・・おや、こちらのお嬢さんは?」
 
 オレを一瞥した中年男が、二人に尋ねた。
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