天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

文字の大きさ
上 下
14 / 25
デトゥック村

エリシアの決断-Ⅱ-

しおりを挟む
「グレン?
 先の戦でSAWのやつらに殺されたという、あの『雷光の黒麒麟ブラックジェラフ』かえ?」
 
 オレは頷き、そしてついにあの事を吐露する。
 
「・・・婚約者フィアンセでもあったんだ、ナルシャ姉の。
 あの戦が終わった後、結婚する予定だったんだよ、二人は」

 婆さんの瞳が大きく見開くも、直ぐに冷静さを保つ。
 そうであったか、と呟き、ナルシャ姉の頭を再び優しく撫でた。
 
「この子が結婚とはね・・・」

 オレは席を立ち、婆さんに懇願した。

「だから、ナルシャ姉に悪気はねぇんだ。怒らないでやってくれ」

 勢い余って椅子が倒れる。
 婆さんが何かを言いかけて、突然、横から弱々しい声が漏れた。
 
「エリシア、そこまでになさい」
 
 見るとナルシャ姉が、鈍い瞳でオレを見上げていた。
 気だるそうに体を起こそうとして、婆さんがそれを引き止める。
 
「これ、まだ起きたら駄目じゃ」

 ナルシャ姉を再び横に寝かせ「今日は安静にしておれ」と麻酔の副作用を説く。
 抗う力もなく、気力も使い果たしたのか。
 ルシャ姉は小さく頷くと再び瞳を閉じ眠りについた。
 
「・・・ナルシャもあんたも、何も悪くないさね」
 
 婆さんの零した言葉にオレは胸を撫で下ろすも、直ぐにこちら見据え、鋭い口調に切り替わる。
  
「でも、あやつを解放するかどうかは別問題じゃ」

 続けて「後の話は、ナルシャが起きてからじゃ」と付け足し、婆さんは踵を返した。
 そのまま部屋を出ていこうとして、不意に立ち止まる。
 外で大きな足音が近づき、部屋のドアが荒々しく無作法に開かれたからだ。
 そこには、アルドフのおっさんが立っていた。
 驚いたオレとは対照的に、婆さんが「何事じゃ!」と一喝する。
 おっさんは普段見せない慌てた様子で、オレと婆さんに言い放った。
 
SAWやつらが、村の近くまで攻めてきた」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...