天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

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デトゥック村

エリシアの決断-Ⅱ-

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「グレン?
 先の戦でSAWのやつらに殺されたという、あの『雷光の黒麒麟ブラックジェラフ』かえ?」
 
 オレは頷き、そしてついにあの事を吐露する。
 
「・・・婚約者フィアンセでもあったんだ、ナルシャ姉の。
 あの戦が終わった後、結婚する予定だったんだよ、二人は」

 婆さんの瞳が大きく見開くも、直ぐに冷静さを保つ。
 そうであったか、と呟き、ナルシャ姉の頭を再び優しく撫でた。
 
「この子が結婚とはね・・・」

 オレは席を立ち、婆さんに懇願した。

「だから、ナルシャ姉に悪気はねぇんだ。怒らないでやってくれ」

 勢い余って椅子が倒れる。
 婆さんが何かを言いかけて、突然、横から弱々しい声が漏れた。
 
「エリシア、そこまでになさい」
 
 見るとナルシャ姉が、鈍い瞳でオレを見上げていた。
 気だるそうに体を起こそうとして、婆さんがそれを引き止める。
 
「これ、まだ起きたら駄目じゃ」

 ナルシャ姉を再び横に寝かせ「今日は安静にしておれ」と麻酔の副作用を説く。
 抗う力もなく、気力も使い果たしたのか。
 ルシャ姉は小さく頷くと再び瞳を閉じ眠りについた。
 
「・・・ナルシャもあんたも、何も悪くないさね」
 
 婆さんの零した言葉にオレは胸を撫で下ろすも、直ぐにこちら見据え、鋭い口調に切り替わる。
  
「でも、あやつを解放するかどうかは別問題じゃ」

 続けて「後の話は、ナルシャが起きてからじゃ」と付け足し、婆さんは踵を返した。
 そのまま部屋を出ていこうとして、不意に立ち止まる。
 外で大きな足音が近づき、部屋のドアが荒々しく無作法に開かれたからだ。
 そこには、アルドフのおっさんが立っていた。
 驚いたオレとは対照的に、婆さんが「何事じゃ!」と一喝する。
 おっさんは普段見せない慌てた様子で、オレと婆さんに言い放った。
 
SAWやつらが、村の近くまで攻めてきた」
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