天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

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デトゥック村

エリシアの決断-Ⅰ-

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 小麦畑の調査の間、オレとナルシャ姉はこの家で世話になっている。
 だから家の間取りは熟知しているし、あてがわれた自室に向うのは容易い。
 部屋を見つけ、ドアを開けた。
 簡素な作りのベットが奥に二つあり、そこまで脇目もくれず歩み寄る。
 片方のベットにゆっくりとナルシャ姉を下ろし、そっと仰向けで寝かせた。
 苦しそうな寝顔。
 少しでも楽にさせようと思い、髪飾カチューシャを取り鎧の留め具を外してやると、
 胸元が大きく開いた白のブラウスが露になった。
 鎧を全て脱がせ、髪飾と一緒にもう片方のベットに追いやる。
 暫くして涼しげな顔に戻ったナルシャ姉を見て、ほっと一安心するも、
 近くの椅子に腰を下ろしたオレは自分のしでかした事に頭を抱え出した。

「やっべぇこと、しちまったな・・・」

 ナルシャ姉が目覚めた時の事を想像し身震いするが、自分が間違った事をしたとは思っていない。
 あの時、ああしていなければ、きっとナルシャ姉はあの事を――
 
「エリシアよ、どうだいナルシャの容態は」
 
 不意に投げかけられた声に我に返る。
 足音が近づき、顔を上げると目の前に婆さんの姿があった。
 婆さんが、ナルシャ姉の額にかかった前髪を優しく払いのける。
 静かな寝息をたてるナルシャ姉の寝顔に、婆さんが穏やかな表情を見せた。
 
「ナルシャが、あたしにあんな態度を取るなんて初めてだよ。
 寝顔はまだまだ子どもなのに、随分と大人になったもんだね」

 数回優しくナルシャ姉の頭を撫でると、婆さんも近くの椅子に腰かけた。
 それからオレの方に椅子を向き直し、正面から見据えて問い詰める。
 
「それで、あんたは何を知っているんだい?」

 核心を突いてきた婆さんにオレの声は思わず裏返った。

「べっ、別に何も知らねぇよ」

 婆さんの表情が険しくなり、尚も問う。
 
「これが最後だよ。あんたは何を・・知っているんだい?」

 抗う事をを許さない鋭い眼光。
 頬を伝う一筋の汗で自分が蛇に睨まれた蛙だと気づく。
 すまねぇ、ナルシャ姉・・・
 オレは観念して、知っている事を吐いた。
 
「たぶん・・・だぜ?
  あいつ、どことなく似ているんだよ、死んだグレンに」
 
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