天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

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デトゥック村

囚われの身-Ⅵ-

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 こいつは何でこんなにも庇ってくれるのだろうか。
 
 隣を歩くナルシャを横目に、俺はふと疑問に思う。
 今日、初めって会っただけなのに・・・。
 ナルシャが視線に気づき、こちらを見た。
 視線が合い、にこりと微笑む。

「大丈夫ですよ、心配なさらずに」

 何故か照れる俺に急にぞわりと寒気が襲った。
 まさか、この感じは・・・
 前を見ると、やはりというか、大剣の少女が俺をもの凄い眼つきで睨んでいた。
 寒気が冷や汗に変わる。
 どうやら、あいつは俺がナルシャと仲良くしているのが気に食わないらしい。
 構わないでいると小さな舌打ちが聞こえ、大剣の少女の視線が外れた。
 部屋を出て、枝分かれした廊下を何度か曲がり進んだとき。
「ここだよ」と云う老婆の声に、ようやく俺達は立ち止まった。
 そこは、何もない大きな土壁があるだけだった。
 しかし老婆が手を充て何やら呟くと、突然、壁に幾つかの眩い筋が走り出した。
 全てが線がつながり、ついには絵図というか紋章のようなものが形成される。
 かと思いきや、それは一瞬で消え失せ、その奥に部屋が現れた。
 
「封印魔法ですね、しかもかなり高度な・・・」
 
 隣のナルシャが説明してくれた。
 この世界には魔法が存在する。
 そう荷馬車の中でナルシャから聞いてはいたが、まさかこんな早くに見れるとは。
 老婆が先に部屋に入り、その後に俺達も続く。
 部屋は真暗で周囲まわりが何も見えなかった。
 再び老婆の呟く声が聞こえた。
 すると今度は、ぼんやりとした鈍い光源がどこからか生まれてきた。
 見ると老婆の片手に小さな光の玉が浮いている。
 手の平で握り潰され、光が四方に飛散する。
 無数の粒となったそれらは天井や壁に張り付き、部屋全体を明々と照らしだした。
 部屋の全貌が現れる。
 それほど広くない部屋の中央に、祭壇があった。
 そこには掌に乗るほどの小箱が置いてあり、何やら仰々しく祀られている。
 老婆がそれを大事そうに手に取ると徐に語りだした。
 
「これは、まだ私がそうさね・・・
 ナルシャやエリシアと同じくらいの歳のころじゃ。
 この国は大きな戦争をしておってな、此処も激戦地になったんじゃよ。
 でも、当時のあたしはまだまだ未熟者ひよっこ
 圧倒的な敵の戦力に命を諦めた事があったんじゃ。
 しかしな、あたしが死を覚悟したとき、その殿方は現れた。
 敵を瞬く間に殲滅し、おかげでこの村は助かったんじゃ。
 その方が去り際に、此れを置いてこう言い残したのじゃ。
 もし日本から来たと名乗る奴がいたら、此れを嵌めろ。
 さもなければ、この国は再び滅びの道へ向かうだろう、とな」
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