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デトゥック村
囚われの身-Ⅳ-
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「二人とも、それくらいで心配すんなよ。
この村への物資の補給なんて、国王に頼めばどうにでもなるだろ」
見ると少女は生欠伸をかきながら、余裕の笑み浮べていた。
直後に老婆の激高が鳴る。
「馬鹿者、お前は事の重大さが全く分かってないのか!」
少女の顔が歪み、困惑の表情が表れた。
救いを求めるようにナルシャを見ると、隣で片手を額に当て呆れ顔で溜息をついていた。
ナルシャが少女の視線に気づき、にこりと微笑み返す。
「帰ったら、地理のお勉強ですよ」
「うぐっ」と詰まる音がし、大剣の少女が言いかけた言葉を飲み込んだ。
観念したかのように「分かったよ」と頭を数回欠くと、ナルシャが事の重大さを説いていく。
最初は何を言っているのか分からない様子の少女も、次第に顔が曇り、
そして驚きの色が加わると、ようやく事の重大さを理解したらしい。
「それは、マズイじゃねぇか!」と大声を張り上げ、両手を大きく広げて見せた。
要約すると、この地域で生産される小麦は国の半数以上を占めるらしい。
だからそれが駄目になると、他の地域に小麦が流通せず、国中で越冬できない村が出てくる。
・・・そういう話のようだ。
「ようやく理解できたようじゃな。
エリシアよ、お前は腕っ節はあるが頭が弱いのが欠点じゃの」
老婆が大剣の少女を嗜めた。
拗ねるように背を向いた少女から「悪かったな」と小さな愚痴が零れる。
ふと老婆がこちらを向き、初めて俺と目が合った。
何かを探るような、それでいて見透かすような、そんな視線。
俺が言葉にあぐねていると、ナルシャがそれに気づき、老婆に云う。
「この方はSAWの者ではありません」
続けて「異界の森で倒れていたので、保護しました」と付け足した。
「ご挨拶を」とナルシャが云うので、とりあえず俺は軽く会釈する。
「どうも。長谷川ショウスケです」
「・・・ショウスケ? 聞き慣れない名前だね」
名前に興味を示したのか、老婆が続けざまに尋ねてきた。
「お前さん、どこの出身だい?」
俺は「日本です」と素直に応えた。
すると次の瞬間、老婆の顔つきが一変した。
顔の険しさが増し、両眉がつり上がる。
「アルドフ!」と部屋中に聞こえるほどの大声で叫び、暫くして背後から野太い声が聞こえた。
この村への物資の補給なんて、国王に頼めばどうにでもなるだろ」
見ると少女は生欠伸をかきながら、余裕の笑み浮べていた。
直後に老婆の激高が鳴る。
「馬鹿者、お前は事の重大さが全く分かってないのか!」
少女の顔が歪み、困惑の表情が表れた。
救いを求めるようにナルシャを見ると、隣で片手を額に当て呆れ顔で溜息をついていた。
ナルシャが少女の視線に気づき、にこりと微笑み返す。
「帰ったら、地理のお勉強ですよ」
「うぐっ」と詰まる音がし、大剣の少女が言いかけた言葉を飲み込んだ。
観念したかのように「分かったよ」と頭を数回欠くと、ナルシャが事の重大さを説いていく。
最初は何を言っているのか分からない様子の少女も、次第に顔が曇り、
そして驚きの色が加わると、ようやく事の重大さを理解したらしい。
「それは、マズイじゃねぇか!」と大声を張り上げ、両手を大きく広げて見せた。
要約すると、この地域で生産される小麦は国の半数以上を占めるらしい。
だからそれが駄目になると、他の地域に小麦が流通せず、国中で越冬できない村が出てくる。
・・・そういう話のようだ。
「ようやく理解できたようじゃな。
エリシアよ、お前は腕っ節はあるが頭が弱いのが欠点じゃの」
老婆が大剣の少女を嗜めた。
拗ねるように背を向いた少女から「悪かったな」と小さな愚痴が零れる。
ふと老婆がこちらを向き、初めて俺と目が合った。
何かを探るような、それでいて見透かすような、そんな視線。
俺が言葉にあぐねていると、ナルシャがそれに気づき、老婆に云う。
「この方はSAWの者ではありません」
続けて「異界の森で倒れていたので、保護しました」と付け足した。
「ご挨拶を」とナルシャが云うので、とりあえず俺は軽く会釈する。
「どうも。長谷川ショウスケです」
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名前に興味を示したのか、老婆が続けざまに尋ねてきた。
「お前さん、どこの出身だい?」
俺は「日本です」と素直に応えた。
すると次の瞬間、老婆の顔つきが一変した。
顔の険しさが増し、両眉がつり上がる。
「アルドフ!」と部屋中に聞こえるほどの大声で叫び、暫くして背後から野太い声が聞こえた。
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