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デトゥック村
囚われの身-Ⅱ-
しおりを挟むそれにしても、殺風景だ。
荒く舗装された一本道を車に揺られて、それなりの時間が経っているはずだが。
行き交う馬車はおろか、人影さえ全く見えない。
本当に、こんな場所に村なんてあるのか。
相変わらず地を敷き詰める枯れた小麦畑に俺が飽き飽きしていると、
道の先に何やら建物らしきものが見えてきた。
近づくにつれそれが茅葺の集落だと分かり、周囲を古木の板で並べただけの簡素な外壁が現れる。
その一部が大きく空いており、そこへ荷馬車が入って行く。
馬が嘶き、村の広場で荷馬車が止まった。
「着いたぜ」と言って大剣の少女が降り、続けてナルシャに連れ出された俺も荷馬車を降りた。
村の端と端が見える。
それほど大きい村ではないらしい。
周囲を見渡すと、麻布の服を着た村人らしき男女が数人いた。
大剣の少女が、その中の一人と何やら話をしている。
・・・寂れた村だ。
あまり裕福な村でもないらしい。
「ナルシャ姉、ヤントゥムの婆さんは丘の上に居るようだぜ」
こちらに歩み寄って来た大剣の少女が、村で一際大きい高台の茅葺を指した。
ナルシャが小さく頷き、俺の後ろに回ると拘束された両手を持つ。
「では、参りましょうか」
言われるまま、俺はナルシャに付き添いながら歩き出した。
後ろを大剣の少女が、「もたもた歩くんじゃねぇよ、ボケ」と野次りながら付いて来る。
緩い坂道をしばらく歩くと、建物の入口が見えて来た。
その門柱に誰か立っている。
近づくにつれ、その容貌が鮮明になる。
どうやら男のようだ。
「二人ともご苦労だった。長が部屋で待っている、早く入れ」
目前まで来ると、その男の激烈さに驚きを覚えた。
全身が筋肉で出来たような体躯に、俺の頭二つほど高い壮年の大男。
燃えるように赤い髪は無造作に伸ばされ、まるで野獣を彷彿とされる。
体中に無数の刀傷があるが、何より特徴的なのは左目が完全に潰れていることだ。
不意に男と目が合う。
漆黒の片瞳が蔑むような目つきで俺を見下ろすも、直ぐに視線が外れ、大男は門扉を開いた。
ナルシャが軽く会釈し、俺の背中を叩く。・・・中に入れて言うことか。
促されるまま足を一歩踏み入れるも、男の太い片腕がそれ以上を阻んだ。
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