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異界の森
二人の美少女-Ⅳ-
しおりを挟む直後に顔を仰ぎ、高らかに笑い出した。
「こいつ、ビビって失禁してやんの!」
言われて俺は自分の下半身へと視線を移した。
そこには見事な楕円状の水跡があった。
いつの間に・・・
「情けねぇ奴。
まっ『天空の蒼鷲』と称されるナルシャ姉に凄まれたら仕方ねぇか!」
大剣の少女が、また豪快に笑い出した。
それを「およしなさい」と二槍の少女が小さく咎めると、大剣の少女は不貞腐れた様に背を向けた。
どうやら二槍の少女が立場は強いらしい。
「立てますか?」
二槍の少女が、徐に片手を差し伸べてきた。
促されるままその手を取ると、いきなり手首を後ろに回された。
激痛が走り、ガチャリと音が聞こえた矢先、俺は瞬く間に手錠のような物をかけられていた。
「申し訳ありません。
規則ですので、あなたを首都エヴァーフォーンの警備管理局に引渡します。
それまで拘束させて頂きますので、ご理解を」
できるはずが、ない。
そもそも何もかも、訳が分からないことだらけなのだから。
「エリシア」と呼ばれ、大剣の少女が振り返った。
二槍の少女に何やら目で合図され、渋々顔で施錠された俺を預かる。
というか二人の、その細い腕にどれだけの力があるんだよ。
ピクリとも動かない俺の無駄な抵抗に大剣の少女が気付くと、にやりと口の端を曲げた。
「おいおい、大人しくてりゃあ痛い目に見ずに済むんだぜ。
まぁ・・・痛い目見たけりゃ暴れてもオレは構まわねぇけどな」
そう言って、大剣の少女は挑発的な視線を俺に向けてくる。
その様を二槍の少女が呆れ顔で見やると、嘆息を漏らした。
「・・・とりあえず一端、デトゥック村に戻りましょう。それから、エヴァーフォーンへ帰還します」
そして「馬を取ってきます」と言葉を残し、二槍の少女は体を浮かせると森深くに消えて行った。
一体、何が、どう、なっているんだ・・・
呆然と立ち尽くす俺に少女が吐き捨てるように云う。
「お前は、そこで大人しくしてな」
直後に背中を蹴り込まれ、両膝から倒れるように俺は地に伏した。
近くの大樹に背を預け座り込む大剣の少女が「逃げたら斬るぜ」と告げる。
しばらくすると、静かな寝息が聞こえ出した。
大剣の少女のものだ。
に、逃げるなら今しかない・・・
そう思いつつも、足が震えて思うように動かない。
俺は舌打ちし自分自身の情けなさを呪った。
此処が何処なのか。
二人が誰なのか。
何で俺がこんな目に遭っているのか。
考えれば考えるほど訳が分からない。
やがて、ゆるりと俺にも睡魔が降りてきた。
精神的にも肉体的にも、抗う術は最早残されていなかった。
薄れゆく意識の中、俺は再びそこが自分の知る世界であれと願い、深い眠りについた。
そして、酷い三半規管の揺れで目が覚めたとき。
そこがまだ俺の知る世界ではない事に絶望した。
馬車の荷台に乗せられたらしく、視界に見える空は雲に覆われて薄暗く、
大地は枯れた小麦畑が地平線まで続き、とても俺の住む日本の風景には見えない。
夢、じゃなかったのか・・・
「お目覚めですか?」
声がして視線を向けると、丁度正面向かいに二槍の少女が座っていた。
その奥で大剣の少女が二頭の馬の手綱を握っている。
俺は歯切れの悪い返事をし、改めて誰何した。
「あんたら、何者だ?」
二槍の少女が「これは申し訳ありません」と前置きをした上で応えた。
「私はこの大陸を治める覇王レオン・フォン・フェシトテヴァインに仕える者。
名は、ナルシャ・マリウスと申します。
奥に居るのが、エリシア・ルーン。
それで・・・そちら様は?」
聞き返され、今度は俺が応える。
「長谷川ショウスケ、高校二年だ」
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