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異界の森
二人の美少女-Ⅲ-
しおりを挟む恐る恐る目を開けると、少女と俺の間に一振りの黒槍が突き刺さっていた。
よく見ると少女の大剣がその槍に阻まれ、俺の喉元から紙一重で止まっている。
俺は悲鳴を上げた。
腰を抜かし、そのままに踵を返すと、地を這いながらその場から逃げ出す。
頭上から再度声が聞こえた。
「そこの者、お待ちなさい!」
直後。
真横に一閃が走ると、目前に今度は朱槍が逃道を塞ぐように突き刺さっていた。
「お待ちなさい、と言っているが分からないのですか?」
声の主へと振り返る。
見上げると天空に別の少女が立っていた。
・・・いや、正確には浮いていると言った方が正しい。
大剣の少女と似たような格好だが、逆光で顔はよく見えない。
けれど戦士というより、騎士のような雰囲気だ。
大剣の少女の重装ではなく、軽装鎧からそう伺える。
天空の少女が指を鳴らした。
すると二本の槍が意思をもつかの如く突き刺さった地面から音を立てて離れ、
少女の両腕にそれぞれ収まった。
それからゆっくりと俺の目前まで降りてくると、軽やかに地に足を着ける。
ようやく顔が見えた。
「あなた、何処の国の者ですか? 所属は? 何故、異界の森にいるのですか?」
髪は蒼く胸ほどまであり、左右でそれぞれ一つに括っている。
大きな髪飾を付けていて、鼻はやや高い。
目は大剣の少女に比べてやや小さく、灰色の瞳が冷たい印象を与えるが、
総じて美少女と言っても間違いない。
二槍の少女が猶も問う。「私の言っている事が聞こえ―――」
「ナルシャ姉、めんどうだ。もう斬り捨てちまおうぜ」
そこへ煩わし気な声が被さった。
大剣の少女が背中に得物を下げ、こちらに歩み寄って来る。
そして二槍の少女の横に立ち、値踏みするように俺をじろじろ見ると、
ある一点で視線が止まった。
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