本当の最強チートは妹のパンツをテイスティングすることだった件。

加賀いるか

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17話「フラグ回収はお早めに」

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「ここが墓地ね!」

「ホラー映画に出てきそうなくらいどんよりした墓地だな……」

そんなこんなで墓地に来たわけだが、今はエアと俺のふたりきり。
正確には墓地が見える程度に離れた丘で早希とアルシャのふたりが怯えながら俺たちのことを見守っているという状況だけど。
理由を話すと長く……ならないか。
何故早希とアルシャのふたりが俺たちから離れているかというと、絶対にクエストに着いていかないと墓地まで来ることを固辞したためだ。
それでも活躍を見てほしいとエアに駄々をこねられたため、折衷案として離れたところから見守るということになったわけだ。
よくよく考えると、この場は逃れられてもいつかは墓地以外でもアンデッドと遭遇することになるだろうし、早希とアルシャのふたりにはおいおい克服してもらわないといけないんだけどな……
やっぱ甘いかな?  無理矢理にでもここまで連れてくるべきか?
そんなことを考えていると、エアがなにやら険しい顔で辺りを見回し始めた。

「ん?  どうしたんだよエア」

「……空気がね、悪すぎるのよ」

悪すぎる……?

「つってもここは墓地だろ?  しかもアンデッドが出るって話だし、空気も悪くなるだろ?」

「……ちがうわ、アンデッドが出る程度ならここまで空気は澱まないもの。あたしの考えすぎならいいんだけど……まあ、なんとかなるわね!  さっさとアンデッドを殲滅して帰りましょ!  オラァ!!  クソアンデッドどもでてこいやあ!!」

「お、おい待てよ!」

俺は急に奥に向かって走り出したエアを追いかけようとした。
しかし、走り出したと思ったとたん、エアは急ブレーキをかけて一点を睨みつけた。

「なんだよ、急に走ったり止まったり……って、うわ……」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」

エアの睨んでいる方向を俺も見てみると、地獄の底から出してるかのような声を上げながらゾンビらしきモンスターが数体、こちらへ向かって来ていた。
まんま人間の姿をしてるもんだから、グロさがリアルでヤバい……

「なあエア、なんかみんなお前の方を見てる気がするんだけど、気のせいか?」

「気のせいじゃないわね、なんでかしら」

……お前が女神だから無意識に救いを求めてるとか?

「まあそんなことどーでもいいわ!  早速サクッと浄化しちゃうから見てなさい!」

エアは軽く息を吸うと、目の前にいるゾンビ数体に向かって手をかざし、魔法を唱えた。

「いくわよ!  『アンデッド・リターン』!」

手のひらから光が溢れ、ゾンビたちを包み込む。
その光は暖かく、優しい光だった。
久しぶりにエアの女神らしい姿を見ている気がした。
……気がしたじゃないわ、マジで出会った瞬間以来だわこれ。

「あ゛あ゛あ゛あ゛……」

光に包まれたゾンビたちは、うめき声を上げながら天に向かって手を伸ばすと、だんだん薄くなっていき……そして跡形もなく消滅した。

「どうよ!」

「すげえな、一瞬じゃねえか」

俺の言葉を聞いたエアは自慢げに、それはそれは見事なドヤ顔を披露してみせた。

「やっとあたしの有能さを認めたみたいね!  これからは『エア様』と呼ぶことを許可してあげてもいいわよ!」

「前言撤回。お前はやっぱり駄女神だわ」

「はあ!?」

「調子に乗りすぎだクソ女神!  なんかの間違いかもしれんからもっと頑張れや」

「見せたじゃない!  あたしの活躍するところ!  もう認めてくれてもいいでしょ!?」

「まだだな!  それにまだクエストはクリアしてねえよ、ほれどんどん浄化してけや」

「ぎににににに……!」

ヒュンッ  ドスッ

「……え?」

顔を付き合わせて言い合いをしていた俺たちの間に、突然何かが飛んできた。
飛んできた何かはそのまま近くの地面に突き刺さり、よく見てみるとそれは……

「矢じゃねえか……」

「矢ね……」

矢だった。

カタカタカタカタ……

「……なんか骨がぶつかり合うような音が聞こえる気がするな。おいエア、ちょっとお前横見てみろよ」

カタカタカタカタ……
カタカタカタカタ……

「いいけど、あたしが逃げても許してくれる?」

カタカタカタカタ……
カタカタカタカタ……
カタカタカタカタ……

「……なんか音が増えてる気がするんだけど……ん?  ああ、許してやる。俺は寛大な男だぞ」

カチャ

ギ、ギギギ……

「ダウト」

ダッ!!

弓を引くような音が聞こえた瞬間、俺たちは同時に矢が飛んできた反対方向へ全力で走り出した!!

ヒュンッ!

ヒュンッ!  ヒュヒュンッ!

ヒュッ!

全力で走る俺たちの耳元を矢が掠めていく!!
ってあぶねえ!  今危うく当たるとこだったわ!!

「おいエア!!  クエストはアンデッドの討伐だろ!?  なんで矢を放ってくるモンスターがいるんだよ!!」

「たっ、たぶんだけどっ!  スケルトンじゃないかしら!!」

「スケルトン!?  この世界のスケルトンは飛び道具を使うのか!?」

「あんたも前の世界でやったことあるでしょ!?  ほら、なんか四角いブロックで家とか作るやつ!!  たぶんそれよ!!」

「なんでマイン○ラフト準拠なんだよぉおお!!  っいてえ!!」

やべえ!  今矢が頬を掠めやがった!!
奴らどんどん狙いが正確になってきてやがる!!
くっそ!! マイ○ラではスケルトンは何が弱点だった……!?
考えろ、考えろ……!! ダメだ!! 奴らの弱点は犬だった!! どうしようもねえ!

「あああああ!! こっちくんじゃねえ!! 『ファイア』!!」

俺は苦し紛れに後方に向かって火を発生させる魔法を放った。
当然ただの冒険者かつ魔力量が乏しい俺の『ファイア』に威力なんてないが、少しでもモンスターの足を鈍らせることができればと思ったためだ。

「ああ! クソ、だめだ! 完全に狙いがそれた!!」

だが、俺の放った『ファイア』はスケルトンたちの足元へそれ、そこにあった枯れ草へと燃え移った。
スケルトンたちはそれを気にもせずこちらへ走ってくるかのように見えた……が

「っ! ねえソウタあれを見て!」

「ああ!? そんなヒマねえ……よ……?」

エアに言われたまま後ろをチラ見した俺は、火を見て後ずさりするスケルトンどもを見て絶句した。

「あいつらなんか火にびびってるわ! あいつらの弱点は火よソウタ!」

「……そうか! あいつらアンデッドは日の光に弱い! 何を間違ったか、火を見て日の光と勘違いしてんだ!」

「なるほど! ……ああっ! だめ、ソウタ! 火が弱くなってるわ!」

まじかよ! くっそ!このチャンスを逃してなるものか!!

「うおおっ! 『ファイア』! 『ファイア』! 『ファイア』!」

渾身の『ファイア』をスケルトンどもの足元へ続けて放つ!
飛び道具なんか使う相手だろうがなんだろうが、動きを封じてしまえばどうということはない!

「っしゃあ! エア! 今だ!!」

「わかったわ!! ……『アンデッド・リターン』ッ!!」

エアが軽く息を吸い、手を前に突き出して浄化魔法を唱える。
火のせいで身動きを封じられたスケルトンどもは、エアの放った『アンデッド・リターン』の直撃をくらい、一瞬にしてその姿を消滅させられた……

「よっしゃ! やったぜエア! この調子なら墓地の浄化なんて軽いもんだぜ!」

「やったわ! ソウタの機転もなかなかのもんじゃない! このまま一気に制圧よ!」

思わぬ強敵? を討伐した俺たちの士気は一気に高まった。
今ならどんなアンデッドが現れてもエアと組めば無敵な気がするぜ!
よっしゃ! 次はヴァンパイアか? それともドラゴンゾンビか?
なんでもいいからでてこいや! 俺らが一網打尽にしてやるぜ!!

「オラオラオラ! なんでもいいからアンデッドども、出てこいや!!」

「あたしたちが一瞬で消し炭にしてやるわ!!」

「「あーっはっはっはっはっはっは!!」」


――煩わしい光に気分を害された挙句、不快な笑い声が聞こえたと思ったら、えらく暴れまわってくれよったのお


ふたりして調子に乗って騒いでいたら、悪魔のような声があたりに重く鳴り響いた……

「っはっは……は……?」

「……ねえソウタ、今なんか喋った?」

「……いや、お前だろ? やめろよな、こんな時までふざけんのは……」

「……あたし、笑ってただけよ……?」

「「……」」

――おい、プリーストと男。ようもわしのテリトリーで好き勝手してくれたのお

「……だ、誰だ」

――わしか? 普通はそっちから名乗るもんじゃが、まあいい……

俺たちのいる少し先に人のシルエットが浮かび上がった。
しかし、人にしては少し大きすぎ……ないか……?

「あ、あの、やっぱり名乗らなくても」

『わしは、魔王軍幹部、『グリムリッパー』の『ヘルサイズ』という』

名乗った瞬間、目の前に大きな鎌を持ち、ローブを着た骸骨の大男の姿があらわとなった。
お、お、大物出てきちゃったーーーー!!!!??
さっきの空気が淀みすぎてるってこいつが原因かよ!!
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