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16話「エア、大いにだだをこねる」
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「もー、兄さんちゃんと歩いてください」
「おっそいわよクソニート!!」
早希に引きずられてやってきたクエスト掲示板の前では、腕を組んだエアが仁王立ちで待ち構えていた。
その横では理由はわからないが何故かアルシャがオロオロしていた。
「どうせまだなんのクエストを受けるか決まってないんだろ? もうちょっとゆっくりさせてくれよ」
早希に引きずられたままの体勢でそう言うと、エアは「フフン」と軽く鼻で笑い、ドヤ顔をして、こちらを指差しながらこう言った。
「だっからあんたはニートなのよ! あんたがのんびりしてる間にあたしにふさわしいクエストを見つけておいたわ!」
「あ、決まったんですね!」
「へえ、どんなクエストだよ」
「しかたないわね、おしえてあげましょう! それはね……」
エアがどのクエストを受けるか発表しようとしたところ、アルシャが弱々しい声でエアに声をかけた。
何やら少し震えてる気もする。
またお前の武者震えてんの?
「な、なあエア、やっぱりそのクエストはやめないか? な? そうしよう、それがいい! な、ソウタ、今なから一緒に違うクエストを探して……」
「もー、アルシャったらさっきからずっとそんなことばかり言って。びびりすぎよ! 大丈夫、呪われてもあたしが解呪してあげるから」
「ひいい」
ん? 今なんか不穏な単語が聞こえたぞ?
呪われる? え?
「ちょっとまて、呪われる? 解呪? どういうことだよ」
「ん? これよこれ、このクエストのことよ」
「ちょっと見せてみろ」
俺はエアの手からクエストの紙を取り上げ、にいる早希にも見えるようにして読み始めた。
「なになに? 『墓地にゾンビやスケルトンなどのアンデッドモンスターが増えて困っています。浄化してください。もしゾンビメーカーが居れば、討伐してください。報酬は40万リアル』……なんだこれ」
「あたしは女神! アンデッドなんてあたしの浄化魔法にかかればイチコロよ! 言ったでしょ、あたしにふさわしいクエストを見つけておいたって!」
なるほど……確かにこいつは女神。
ゾンビやスケルトンのようなアンデッドにはめっぽう強いだろう。
こいつの言うことも一理ある……
「な、なあ、ソウタ、ゾンビに噛まれると、自分もゾンビになってしまうという。そ、それにな? 死んだ人間が動くなんてありえないだろ? な? やっぱりやめよう? な! そうしよう!」
アルシャがガクガク震えながら俺に何かを乞うような目をしながら訴えかけてくる。
つーかこんだけ色気のある女に上目遣いで懇願されると控えめに言ってクソエロいな……
「ははぁん? アルシャお前怖いんだな?」
「あ、ああ、怖い! オバケとっても怖いのだ!」
「じゃあこのクエストにしよう」
「なんでだああああ!」
アルシャは半泣きになりながら俺の足元にすがりつく。
別にいいけど、そのポーズ「ご奉仕させていただきます」的なポーズにしか見えなくて下半身に血が集まるぞ。
しかしなんだろう、アルシャをいじめるととっても楽しい。
俺にはSっ気はなかったはずなんだが……
まあこれに関してはエアに感謝するとしよう。
そう思いながら隣を見ると、そこにいたはずの早希の姿が見えないことに気付いた。
「ん? あれ、早希?」
あれ、マジでどこだ?
おーい、早希たん?
俺の天使早希たんやーい。
「サキなら、ソウタがクエストを読んでる途中であそこまで逃げたわよ」
「え?」
エアの指差す方向をみた俺は、ギルド内にある観葉植物の影に隠れて震えている何かを見つけた。
……というか、早希だった。
「ああ……そういえば早希って幽霊とかゾンビみたいなホラー系は大の苦手だったな……」
「サキもアルシャも情けないわね! 大丈夫よ、あたしがいるからアンデッドなんて近づけさせないわよ」
「やっぱこのクエストやめとくか」
「ええっ!? なんでえ!?」
「早希が使い物にならんかったらぶっちゃけこのパーティ、雑魚だからだよ。帰るべ帰るべ」
俺はエアに背中を向けると、出口に向かって歩き出した。
「はー無駄足無駄足……ぐえっ!?」
さて昼飯は何を食うかね、などと考えながら出口に向かって歩いていると、いきなり後ろから勢いよく服の襟を引っ張られ、頸動脈が極まった!!
「ぐげげげげ……! げほっ! ごほっ! な、なにすんだよ!!」
誰の仕業じゃコラ! と思いながら勢いよく振り返ると、そこにはエアが居た。
引き止めるにしても掴む場所を考えるか、声をかけるかしろや!
「お願い……」
「ああ?」
「お願い! どうしてもこのクエストを受けたいの! このままじゃあたし本当に役立たずと思われたままだわ! それは嫌なの! 絶対に迷惑をかけないから! ねえ、お願い!」
……はあ、泣きそうになってまで言うことかよ……
「……わかったよ、受けるよこのクエスト」
「……え? ほ、ほんとっ!? やっぱりやめたってのはなしよ!? ぜったいのぜったいよ!?」
「やめねえって、ちゃんとクエスト受けるから」
「やったあ!」
その言葉を聞いたエアは泣きそうになっていた顔を満面の笑みに変え、それを見ていた早希とアルシャの顔は絶望に変わっていた……
「おっそいわよクソニート!!」
早希に引きずられてやってきたクエスト掲示板の前では、腕を組んだエアが仁王立ちで待ち構えていた。
その横では理由はわからないが何故かアルシャがオロオロしていた。
「どうせまだなんのクエストを受けるか決まってないんだろ? もうちょっとゆっくりさせてくれよ」
早希に引きずられたままの体勢でそう言うと、エアは「フフン」と軽く鼻で笑い、ドヤ顔をして、こちらを指差しながらこう言った。
「だっからあんたはニートなのよ! あんたがのんびりしてる間にあたしにふさわしいクエストを見つけておいたわ!」
「あ、決まったんですね!」
「へえ、どんなクエストだよ」
「しかたないわね、おしえてあげましょう! それはね……」
エアがどのクエストを受けるか発表しようとしたところ、アルシャが弱々しい声でエアに声をかけた。
何やら少し震えてる気もする。
またお前の武者震えてんの?
「な、なあエア、やっぱりそのクエストはやめないか? な? そうしよう、それがいい! な、ソウタ、今なから一緒に違うクエストを探して……」
「もー、アルシャったらさっきからずっとそんなことばかり言って。びびりすぎよ! 大丈夫、呪われてもあたしが解呪してあげるから」
「ひいい」
ん? 今なんか不穏な単語が聞こえたぞ?
呪われる? え?
「ちょっとまて、呪われる? 解呪? どういうことだよ」
「ん? これよこれ、このクエストのことよ」
「ちょっと見せてみろ」
俺はエアの手からクエストの紙を取り上げ、にいる早希にも見えるようにして読み始めた。
「なになに? 『墓地にゾンビやスケルトンなどのアンデッドモンスターが増えて困っています。浄化してください。もしゾンビメーカーが居れば、討伐してください。報酬は40万リアル』……なんだこれ」
「あたしは女神! アンデッドなんてあたしの浄化魔法にかかればイチコロよ! 言ったでしょ、あたしにふさわしいクエストを見つけておいたって!」
なるほど……確かにこいつは女神。
ゾンビやスケルトンのようなアンデッドにはめっぽう強いだろう。
こいつの言うことも一理ある……
「な、なあ、ソウタ、ゾンビに噛まれると、自分もゾンビになってしまうという。そ、それにな? 死んだ人間が動くなんてありえないだろ? な? やっぱりやめよう? な! そうしよう!」
アルシャがガクガク震えながら俺に何かを乞うような目をしながら訴えかけてくる。
つーかこんだけ色気のある女に上目遣いで懇願されると控えめに言ってクソエロいな……
「ははぁん? アルシャお前怖いんだな?」
「あ、ああ、怖い! オバケとっても怖いのだ!」
「じゃあこのクエストにしよう」
「なんでだああああ!」
アルシャは半泣きになりながら俺の足元にすがりつく。
別にいいけど、そのポーズ「ご奉仕させていただきます」的なポーズにしか見えなくて下半身に血が集まるぞ。
しかしなんだろう、アルシャをいじめるととっても楽しい。
俺にはSっ気はなかったはずなんだが……
まあこれに関してはエアに感謝するとしよう。
そう思いながら隣を見ると、そこにいたはずの早希の姿が見えないことに気付いた。
「ん? あれ、早希?」
あれ、マジでどこだ?
おーい、早希たん?
俺の天使早希たんやーい。
「サキなら、ソウタがクエストを読んでる途中であそこまで逃げたわよ」
「え?」
エアの指差す方向をみた俺は、ギルド内にある観葉植物の影に隠れて震えている何かを見つけた。
……というか、早希だった。
「ああ……そういえば早希って幽霊とかゾンビみたいなホラー系は大の苦手だったな……」
「サキもアルシャも情けないわね! 大丈夫よ、あたしがいるからアンデッドなんて近づけさせないわよ」
「やっぱこのクエストやめとくか」
「ええっ!? なんでえ!?」
「早希が使い物にならんかったらぶっちゃけこのパーティ、雑魚だからだよ。帰るべ帰るべ」
俺はエアに背中を向けると、出口に向かって歩き出した。
「はー無駄足無駄足……ぐえっ!?」
さて昼飯は何を食うかね、などと考えながら出口に向かって歩いていると、いきなり後ろから勢いよく服の襟を引っ張られ、頸動脈が極まった!!
「ぐげげげげ……! げほっ! ごほっ! な、なにすんだよ!!」
誰の仕業じゃコラ! と思いながら勢いよく振り返ると、そこにはエアが居た。
引き止めるにしても掴む場所を考えるか、声をかけるかしろや!
「お願い……」
「ああ?」
「お願い! どうしてもこのクエストを受けたいの! このままじゃあたし本当に役立たずと思われたままだわ! それは嫌なの! 絶対に迷惑をかけないから! ねえ、お願い!」
……はあ、泣きそうになってまで言うことかよ……
「……わかったよ、受けるよこのクエスト」
「……え? ほ、ほんとっ!? やっぱりやめたってのはなしよ!? ぜったいのぜったいよ!?」
「やめねえって、ちゃんとクエスト受けるから」
「やったあ!」
その言葉を聞いたエアは泣きそうになっていた顔を満面の笑みに変え、それを見ていた早希とアルシャの顔は絶望に変わっていた……
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