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13話「祝勝会」

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…………………寒っ!?

「うおー!  さみぃー!」

「誰だ気温なんか下げやがったバカは!!  つーか気温を操作する魔法なんかあんのか!?」

「さっぶ!!  頭おかしいんじゃねえのか!!」

うお、予告なしに気温を下げたもんだから周りの冒険者みんなキレてる!
……お?  ニワトリの様子が……!

「ねえ見て!  ニワトリたちの動きが鈍くなってるわ!  もしかして奴ら、寒さに弱いんじゃないかしら!」

「マジか!?  うおおすげえ!  この作戦考えたやつ天才じゃねえの!?」

「誰だ気温を下げた天才は!!」

冒険者は手が出るのが早いけど、手のひらをひっくり返すのも早いのか……
まあいいか、楽しいパーティーの始まりだぜ!

「皆、今のうちだ!!  ニワトリが弱ってるうちにバンバン狩ってバンバン卵を収穫しちまおうぜ!!」

「よっしゃあー!!」

「燃えてきたぜー!!」

俺の叫びに周りの冒険者たちは一気に湧き立った。
ここにいるニワトリどももこれで終わりだな。

「ほらアルシャも、今なら襲われずに討伐できるぞ!」

「ほ、本当か?」

「ああ!  やっちまおうぜ!」

「うう……わ、わかった!  はああっ!!」

アルシャも、襲われないとわかったせいか勇気を奮い立たせてニワトリの討伐に向かって行った。
このまま少しでも臆病が治ればいいんだけど。

「……兄さんはいかないんですか?」

「お、早希気がついたか。俺もそろそろ行くぜ、なんせ自分で作ったチャンスだからな!  おーいエア!  お前はカゴにどんどん卵を詰め込んでいってくれ!」

「まかされたわー!」

「よっしゃ、ニワトリども、覚悟しろよ!!  成敗してくれる!!」

「ふふふ、頑張ってください、兄さん!」

「おうよ!」

こうして、大規模任務『ニワトリの卵を収穫せよ』は、完全勝利で終わったのだった。

【収穫実績】
卵×412個
ニワトリ×22羽
【本日の収入】
104400リアル也(なり)





~ギルド~

「いやー、やるなボウズ!  必死だったもんで、ニワトリの弱点をつくなんて考えもしなかったぜ!」

「おうよ!  基本職の冒険者のくせになかなか頭がキレるじゃねえか!」

「これで次の卵の収穫任務からとても楽になるわね!  今回のMVPはあなたよ!」

「ちょっとー!  あたしの活躍も忘れないでほしいんだけど!」

「おっと、エアの嬢ちゃんもな!  助かったぜ!」

「当然よ!」

俺たちはクエスト終了後、冒険者の皆から感謝の気持ちとして飯と酒を奢ってもらっていた。
個人的にはあの作戦を考えたのは俺だと言うつもりがなかったんだが、エアが
「私とソウタが考えたのよ!」
と言いふらしたため、こんなことになっている。

「兄さん!?  飲んでまふかぁ!?  らめれすよ、どんどん飲まなきゃ!」

「おい!  早希に酒を飲ませたのは誰だ!  もう酔っ払ってんじゃねえか!」

「あたしだけど?」

スパァン!

「痛い!  なにすんのよ!!」

「早希はまだ16歳なんだぞ、いくらこの世界では14歳から酒を飲んでもいいっつっても、酔うほど飲ませてんじゃねえ!」

「まだ一杯しか飲ませてないわよー!」

なん……だと……?
いや、16歳の女の子だし酒に弱いのは当たり前か……?
くそっ、早希を酔わせてどうするつもりだ!!!!

今度ふたりで飲んでみよう。

「ちょっと聞いてんのソウタ!  あたし痛かったんだけど!」

「おいエアこれ美味いぞ」

「え? どれどれ? むぐむぐ……んー!! これすっごく美味しいじゃないの!」

よしよし、うまく話をそらすことができた。
こいつの頭が弱くて助かったぜ。

「兄さん!! 早く飲んでくらさい! ほら! ぐいぐいっと!」

「さ、早希たんちょっと落ち着いて……ががごぼ」

「あはははは! ががごぼだって! 兄さんおかしいんだ! あははは……ふにゅう」

無理矢理俺の口に酒瓶を突っ込んだ早希は、ひとしきり笑った後電池が切れたようにダウンした。
しゃーねえな、そろそろ家に連れ帰って寝かせるか。

「おいエア、早希もダウンしたしそろそろ帰って寝かせようと思うんだけど、お前はどうする?」

「あたしはもうちょっと飲んでから帰るわ!」

「そっか、わかった」

「アルシャはどうする?」

「ん? わたしか? わたしは……うん、わたしももう少し飲んでから帰る事にする」

「そうか。帰り道は気をつけてな」

「ああ」

エアとアルシャに声をかけて俺は帰る支度をする。
酒でダウンしたためかいつもより脱力して重くなっている早希を背負い、ギルドから出ようとすると、ふとアルシャから声をかけられた。

「なあ、ソウタ」

「……ん? なんだよ?」

「わたしは今までモンスター討伐というものがもっと殺伐としているものだと思っていた。だが、今回おまえたちとモンスターを討伐しに行ったら、こう言うと不謹慎かもしれないのだが……その、楽しかった」

アルシャは軽く微笑みながらそう言った。
俺は不覚にもその笑顔に軽くときめいてしまい、しばしの間見惚れてしまい、声を出す事ができなかった。
見惚れてしまったことに恥ずかしくなってしまった俺は、アルシャに軽口を返す事しかできなかった。

「……あ、アルシャも少しは臆病が治ったんじゃねえか? 動きが鈍くなってニワトリたちを討伐しに行ってたじゃねえか」

「お、臆病のことは言うな……でも、おかげで少し克服できた気がするよ。ありがとう」

「――っ……お、おう……じゃあ俺、こんどこそ宿に戻るから。じゃあな」

素直に礼を言われた俺は、もう軽口を返す事ができなくなっていた。
逃げるようにそそくさとギルドを退散した俺は、熱くなった顔を風で冷やすかのように少しばかり駆け足で宿への道を進んでいった。

「……兄さんの、ばーか」

背中で早希が何かを言った気がしたが、駆け足で移動する俺の耳にはその声は届くことはなかった。





ピロンッ
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