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11話「愉快なパーティ」
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軍隊アリの討伐を終え、ギルドに報告をした俺たち4人はギルドの酒場で緊急会議を開いていた。
そう、アルシャのことについてだ。
「……さて、話を聞かせてもらおうか」
俺の発言にアルシャの体がビクッと反応し、おずおずと上目遣いでこちらを見た後、申し訳なさそうに話し始めた。
「……わ、わたしは、能力、技術ともにパラディンとしては最高ランクの技術を持っていると自負している……現にそうだった。そのため、職業適性検査の時にはとても盛り上がったんだ……でも」
「でも?」
「今日見たとおり、この臆病な性格のせいで力を発揮することができないんだ……モンスターを見ると体がすくんでしまい、逃げ出してしまう……」
うーむ……あらためて聞いたのはいいが、こりゃどうしようもないな……
「そうか……そりゃ気の毒だったな。まあいつか臆病も治るだろうし、治らなかったら冒険者を辞めて普通に暮らすのもいいだろ。今回の報酬は山分けするからまたパーティメンバー探し頑張ってくれぐえっ!?」
「わ、わたしはどうしても魔王を倒さなきゃいけないんだ! もうどこのパーティでもクビになってしまって行くところがないんだ! 頼む! 家事でもなんでもするからパーティに置いてくれ!!」
「ぐええええギブギブギブギブ!!!!」
アルシャは、今後のご活躍をお祈り(不採用ということ)しようとした俺にしがみつき、必死に懇願してきた。
苦しい苦しい苦しい痛いやわらかい!!
「あっ、すまん……」
苦しそうな俺を確認したアルシャは、シュン……といった効果音が聞こえそうなほど落ち込んだ。
んー、力が強いのは本当らしいな……しかしなあ……戦力にならないんじゃ……
「兄さん、いいじゃないですか。パーティに居てもらって成長してもらえば」
「早希……」
「もー、ソウタは頭が硬い上に悪いのよ! 男なら女一人養うくらいの器をもちなさいよ!」
「悪いは余計だこの駄女神! つーか言っとくけどお前もこのパーティじゃ今んところニート同然だからな!! ……はあ、しゃーない、おいアルシ」
「駄女神!? 今駄女神って言った!? しかも言うに事欠いてニートですって!? ニートはあんたでしょうが!!」
「うるせえ! 今アルシャと話してんだろうが! だからてめえは駄女神だってんだよ!! つーか誰がニートだこの役立たずの穀潰しが!!」
「ふ、ふふ」
「役立たずの穀潰しですって!? じゃあ日本にいた時のあんたはなんなのよ!! 早希におんぶにだっこのクソヒキニートじゃない!! ていうか今もそうよね? そんな奴に穀潰しがとか言われる筋合いないんだけど!」
「くくく」
「そのヒキニートよりこの世界で役立ってないのはどこのどいつですかあー!? 悔しかったら活躍のひとつでもしてみろや!!」
「もう、兄さんたちはまた喧嘩して……いい加減に……」
「あっはっはっはっはっは!」
いきなり大声を上げて笑い出したアルシャにびっくりした俺たち3人は、目を白黒させながら一斉にアルシャに注目した。
「あ、あの、どうしましたか……?」
早希がおそるおそるといった感じでアルシャに声をかける。
「ふ、くく……い、いやすまん、君らのやり取りがあまりにも愉快に見えてな、失敬、失敬」
アルシャは目尻に浮かんだ涙を拭いつつ、いきなり笑い出したことを謝罪した。
「ところで、わたしのパーティ加入の件はどうなったんだ?」
エアとの喧嘩が始まったことにより流れてしまった話を、まだ愉快そうな顔をしたアルシャが強引に戻す。
そうだ、その答えを出すところだったんだ。
「ああ、そうだったな。このバカのせいで忘れるところだったわ……ンンッ、アルシャ、君をパーティメンバーに加えようと思う。がんばって戦力になれるよう、努力してくれ」
「兄さん!」
「ふん、最初からそう言えば良かったのよ」
俺の出した結論に、早希とエアのふたりは嬉しそうな反応をした。
アルシャの方を見ると、目を閉じながら俺の言葉をかみしめるように頷き、そしてこう答えた。
「ありがとう。きっと君たちを守ると、守れるようになると約束しよう。それに、こんなパーティなら上手くやっていけそうだ。これから……よろしく」
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いします!」
「よろしくね!」
満面の笑みで答えたアルシャの顔を見た俺は、ああ、こいつとなら上手くやっていけそうだな、とそう思ったのだった。
◆
今日も今日とて妹パンテイスティング。
ピロンッ
そう、アルシャのことについてだ。
「……さて、話を聞かせてもらおうか」
俺の発言にアルシャの体がビクッと反応し、おずおずと上目遣いでこちらを見た後、申し訳なさそうに話し始めた。
「……わ、わたしは、能力、技術ともにパラディンとしては最高ランクの技術を持っていると自負している……現にそうだった。そのため、職業適性検査の時にはとても盛り上がったんだ……でも」
「でも?」
「今日見たとおり、この臆病な性格のせいで力を発揮することができないんだ……モンスターを見ると体がすくんでしまい、逃げ出してしまう……」
うーむ……あらためて聞いたのはいいが、こりゃどうしようもないな……
「そうか……そりゃ気の毒だったな。まあいつか臆病も治るだろうし、治らなかったら冒険者を辞めて普通に暮らすのもいいだろ。今回の報酬は山分けするからまたパーティメンバー探し頑張ってくれぐえっ!?」
「わ、わたしはどうしても魔王を倒さなきゃいけないんだ! もうどこのパーティでもクビになってしまって行くところがないんだ! 頼む! 家事でもなんでもするからパーティに置いてくれ!!」
「ぐええええギブギブギブギブ!!!!」
アルシャは、今後のご活躍をお祈り(不採用ということ)しようとした俺にしがみつき、必死に懇願してきた。
苦しい苦しい苦しい痛いやわらかい!!
「あっ、すまん……」
苦しそうな俺を確認したアルシャは、シュン……といった効果音が聞こえそうなほど落ち込んだ。
んー、力が強いのは本当らしいな……しかしなあ……戦力にならないんじゃ……
「兄さん、いいじゃないですか。パーティに居てもらって成長してもらえば」
「早希……」
「もー、ソウタは頭が硬い上に悪いのよ! 男なら女一人養うくらいの器をもちなさいよ!」
「悪いは余計だこの駄女神! つーか言っとくけどお前もこのパーティじゃ今んところニート同然だからな!! ……はあ、しゃーない、おいアルシ」
「駄女神!? 今駄女神って言った!? しかも言うに事欠いてニートですって!? ニートはあんたでしょうが!!」
「うるせえ! 今アルシャと話してんだろうが! だからてめえは駄女神だってんだよ!! つーか誰がニートだこの役立たずの穀潰しが!!」
「ふ、ふふ」
「役立たずの穀潰しですって!? じゃあ日本にいた時のあんたはなんなのよ!! 早希におんぶにだっこのクソヒキニートじゃない!! ていうか今もそうよね? そんな奴に穀潰しがとか言われる筋合いないんだけど!」
「くくく」
「そのヒキニートよりこの世界で役立ってないのはどこのどいつですかあー!? 悔しかったら活躍のひとつでもしてみろや!!」
「もう、兄さんたちはまた喧嘩して……いい加減に……」
「あっはっはっはっはっは!」
いきなり大声を上げて笑い出したアルシャにびっくりした俺たち3人は、目を白黒させながら一斉にアルシャに注目した。
「あ、あの、どうしましたか……?」
早希がおそるおそるといった感じでアルシャに声をかける。
「ふ、くく……い、いやすまん、君らのやり取りがあまりにも愉快に見えてな、失敬、失敬」
アルシャは目尻に浮かんだ涙を拭いつつ、いきなり笑い出したことを謝罪した。
「ところで、わたしのパーティ加入の件はどうなったんだ?」
エアとの喧嘩が始まったことにより流れてしまった話を、まだ愉快そうな顔をしたアルシャが強引に戻す。
そうだ、その答えを出すところだったんだ。
「ああ、そうだったな。このバカのせいで忘れるところだったわ……ンンッ、アルシャ、君をパーティメンバーに加えようと思う。がんばって戦力になれるよう、努力してくれ」
「兄さん!」
「ふん、最初からそう言えば良かったのよ」
俺の出した結論に、早希とエアのふたりは嬉しそうな反応をした。
アルシャの方を見ると、目を閉じながら俺の言葉をかみしめるように頷き、そしてこう答えた。
「ありがとう。きっと君たちを守ると、守れるようになると約束しよう。それに、こんなパーティなら上手くやっていけそうだ。これから……よろしく」
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いします!」
「よろしくね!」
満面の笑みで答えたアルシャの顔を見た俺は、ああ、こいつとなら上手くやっていけそうだな、とそう思ったのだった。
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今日も今日とて妹パンテイスティング。
ピロンッ
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