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ファウルダース侯爵家結婚編
幸福の頂き4 ※
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アンリはキスが好きらしい。
恋人になってから、キス魔キス魔だと思っていたけれど、やっぱりキス魔だった。
「あっ、ぅ、んんっ」
「綺麗だよ、由佳」
「やっ、ああぁんっ!」
そういう言葉は目を見て言ってほしい!
そう言いたいのに、アンリはちゅうっと花芽を吸い上げるものだから、私は一際高い嬌声をあげることしかできなくなる。
下着をするりと脱がしてしまったアンリは、あろうことか私の秘所へと顔をうずめると、そこへとキスしてしまった。
キスだけならともかく、舐めて、吸って、とにかく、そんなところにそんなことするんじゃない! って言いたいくらいのことを平気でやってくる。
しかもそれが気持ちよくて、お腹の奥のむずむずがどんどんと溜まっていく。
「ふ、ぅ、あっ」
「由佳、気持ちよさそう。可愛い」
「も、やだっ、ぁ、や、なめっ、ないでぇっ」
「嫌? やめる?」
「~~~っ!」
やめてほしいけど、ここでやめたいって言ったら、きっとアンリは最後までしてくれない。
それは嫌だ。
ちゃんとしたい。
アンリと、好きな人と、最後までちゃんとしたい。
私がふるふると首をふると、アンリは足の間から顔を出して、嬉しそうに笑った。
「一回、達しておこうか」
アンリがあふれる蜜をすすり、その舌が肉の芽をいじめ、えっちな気持ちがお腹から頭を犯してくる。
お腹のむずむずが零れそうになると、つま先に力が入る。シーツを掴んで耐えようとしたけど、アンリが花芽を吸い上げた瞬間、ひくんってお腹の奥が震えて、気持ちいいが身体中を駆け巡った。
「あっ、やっ、ああぁっ!」
「ん。いい子だ」
すごい。気持ちいい。
経験もそんなにないし、前のように媚薬が効いてるわけでもないのに、頭がおかしいのかってくらい感じちゃう。
ばくばくしてる心臓を落ち着けるように、乱れた呼吸を整えようとしていれば、アンリが身を起こして私の頭を撫でてくれる。
頭をなでられるとほわんとした気持ちになって、私はアンリの胸へとすり寄った。
「アンリ、もっと」
「うん?」
「もっと、ぎゅっとして」
アンリが喉の奥をくつくつと鳴らして、私を抱きしめてくれる。
「頭も、よしよしして」
「甘えん坊だな、由佳は」
「……甘えん坊は、嫌?」
「いーや、可愛い」
ちゅっと額に口づけされる。
それに気を良くした私はますますアンリへと密着した。
「由佳」
「うん」
「……指、入れてもいいかい?」
「……うん」
一つ一つ、まるで美味しいケーキの作り方を確認するように、アンリは私にお伺いを立てる。
私がうなずけば、アンリはもう一度だけ私をぎゅうっと抱きしめてくれて、身を起こした。
離れるぬくもりが少し寂しい。
それがちょっと不満で、不安で、アンリの顔を見れば、アンリは優しく微笑んでくれた。
「大丈夫。怖くない、怖くない」
「う、ん……っ」
アンリは私の右手に指を絡めて握ってくれる。
アンリの指が、しとどに濡れた私の隘路を割り入ってくる。
自然と身体がこわばって、震えた。
「……由佳」
「へい……き」
「でも」
「いや、やめないで……」
目をつむれば瞼の裏にチカチカと赤と白が点滅する。
それが嫌で顔を背けるように横に倒せば、アンリが一度そこから指を引き抜いて、私の顎をすくった。
「由佳、僕を見な」
「んっ」
そう言ってキスをしてくれる。
そろりと舌で唇をノックされたので、私は左腕をアンリの首へと回して、夢中でそれに応えた。
くちゅりと上からも下からも水音が聞こえる。
「んっ、んんっ、ふっ、はぁっ」
呼吸の、仕方が、分からない。
くらくらする頭で、でも夢中でアンリとキスしてたら、不意に腰がびくりと跳ねた。
思い出したように意識が下へと向かう。
蜜壺に収められたアンリの指が、ぐにぐにと私の中で動く。
「あっ、あっ、そこ、だめぇ……っ」
「嫌?」
嫌じゃないけどっ!
なにかが、何かが来ちゃいそうで……っ!
くちゅくちゅと水音を響かせて、アンリが蜜壺の内側を擦る。
身もだえしていれば、アンリは私の身体へといくつものキスを落としてくる。
「可愛い由佳。僕の奥さん。可愛い姿を見せておくれよ」
「ひぅっ、ぁ、あっ、やぁっ! ん、ぁああっ!」
気持ちいいが、津波のように全身をざぷんと飲み込んだ。
まぶたの裏にチラついていたものは全部白一色に染まって、不思議とそれを怖いとも思わなかった。
お腹の奥がきゅんっとして、中に埋められたアンリの指をよく感じる。
気持ちよくて、アンリとえっちなことをしてる実感がじわじわと胸の奥に生まれて、私は顔どころか全身が火照る。
「あーもー、由佳が可愛すぎる。無理。可愛い。挿れたい」
「うぅ……恥ずかし……」
「恥ずかしくなんかないよ。由佳は綺麗だ。もっと見せて」
「ううぅ……!」
可愛い可愛いを連呼するアンリはすごく上機嫌だ。
私が顔を隠して身悶えしていれば、くつくつと笑う。
「ほら由佳、もうちょい頑張れる?」
「ふぇっ?」
「中、まだ全然ほぐれてないから。もう少しだけ頑張って」
「……挿れて、いいよ?」
「駄目だ。由佳に痛い思いはさせたくない」
あんな気持ちいいを何度もさせられてはおかしくなりそう。
だからもう早く挿れてとお願いすれば、きっぱりとアンリに断られてしまう。
私はそれにまた身悶えれば、アンリは私の頭に口づけた。
「指、増やすよ」
「はい……」
小さく了承すれば、アンリは私の体を丁寧にほぐし始めた。
アンリはしつこいくらいに私の蜜壺をかきまぜては、私を気持ちいいの波にさらっていく。
もう何度目か分からない快感が全身を巡って、私はぐったりとシーツに体を沈めた。
「も、やぁ……っ、きもちいぃ……っ」
「……そろそろ、かな」
気持ちよくて、気持ちよくて、えぐえぐと泣き出しそうになってた私を見て、アンリが蜜壺から指を引き抜いた。
もう、終わる……?
そう思ってそろりとまぶたを押し上げれば、はっと呼吸が止まりそうなくらいに美しい体が目に飛び込んでくる。
黄金率の体、といえばいいのかな。
さすが騎士、無駄なく引きしまった筋肉がシャツの下には隠れていて、私は思わずそれに見惚れてしまった。
男の人の体って、こんなに綺麗なんだ。
たまにプールで見るような男性の体にそんなことを思ったことはなかったのに、アンリの体は自然とそう思えて、そうっと手を伸ばす。
「由佳?」
「アンリ、綺麗……」
「綺麗なのは由佳だろ」
「アンリも綺麗。筋肉ついてるのが分かるのに、なんだろう、気持ち悪くない」
「なんだそれ」
アンリが笑うけど、いや、ほんとうにそう思ったんだよ?
杏里ちゃんが一時期、筋肉萌えを見出してたことがあったけど……今の私はちょっとだけそれを理解したかもしれない。
アンリが上半身を全部脱ぐと、私についばむだけのキスをする。
「由佳。この先はたぶん、僕も途中で止めてやる自信がない。やるなら、最後までだ。由佳が嫌ならここで止めるけど……それでも僕はこの先を進みたい。由佳は、どうしたい?」
「いい……私も、したい。アンリと一つになりたい」
アンリとなら、怖くない。
アンリだけがいい。
だから、そんな無粋なことは、もう言わないで。
そう思って、私からアンリに口づける。
アンリは私の頭を撫でながら、口づけにこたえてくれた。
次に唇を離した時には、アンリは一切の服を脱いでしまって、私と同じように生まれたままの姿になる。
スミレ色の瞳が、とろりと欲情の色を灯して、私を見つめる。
「由佳、好きだよ」
「私も好き」
アンリがそうっと私の蜜口に熱の塊をあてがった。
狭いはずの隘路をみちみちと割り入ってくるそれに、私は呼吸が止まる。
「由佳、力抜いて。息をして」
「ぅ、うん……っ」
力を抜こうと思っても、力の抜き方が分からない。
お腹の中に入ってくる異物感がどうしても慣れなくて、全身がこわばってしまう。
アンリが苦しそうに眉をひそめた。
「由佳。大丈夫。怖くないから」
「ん……っ」
「力抜いて」
アンリが熱い吐息をこぼしながらお願いするけれど、私は自分の体なのにどうすればいいのか分かんなくて、ふるふるとと首を振った。
「ごめ、ごめんなさい……っ、なんでぇ……っ、わか、わかんない……っ」
「由佳、僕を見て。キスしよう?」
アンリが微笑むから、私は泣きそうになりながらアンリと唇を合わせる。
以前、処女を奪われたときはこんなんじゃなかった。
痛かったし、怖かったけど、もっとすんなりと入った気がするのに。
私の中へと入ってくるアンリの熱がくっきりと感じられる。
それがとてもえっちな気分になって、余計に体に力が入ってしまう。
「……っ、由佳、締めるなって」
「わか、わかんない……っ」
「あーもー、むり……」
アンリが小さく息をつく。
アンリ、呆れちゃった?
ちゃんとできない私のこと、嫌いになる?
不安になって涙の膜が、アンリの顔にフィルターをかける。
アンリは私の涙に気がつくと、それをちゅっと舐め取ってしまった。
「あんり、あんりっ、ちゃんとできてる? 私、だいじょうぶ? きらいにならないで……っ」
「嫌いになんかならないよ。好きだ。由佳、大丈夫だから。もう少し、頑張れるかい?」
「ん、がんば、る……っ」
はぁはぁと大きく息を吸って、吐いて、体に酸素を巡らせれば、アンリが奥へ、奥へと進んでくる。
ぐりっと内側が開かれる感触がして、私はアンリにしがみついた。
「く……っ、はいった……」
「あんり……」
「由佳、全部入ったよ。ありがとう。僕を受入れてくれて」
「あんり……っ」
全部入った?
私はアンリを受け入れられた?
ぽろぽろと涙が出てくる。
アンリがそれをちゅ、ちゅ、と舐めるようにすくい取っていく。
「うれしい……っ」
「僕も嬉しい」
「ずっと、いっしょ……?」
「ずっと一緒だ」
とろとろとした甘い思考で、アンリへの気持ちがあふれ出す。
アンリがまるで子猫や子犬がするように、私の頬へすり寄った。
「由佳、可愛すぎ。我慢できない。動いていい? 無理なら我慢するけど……そんなには保たない」
「いい……大丈夫だから、動いて」
アンリのお伺いに私はこくこくうなずく。
本当はお腹がいっはいで苦しかったけれど、じっとしていてもお腹の奥に溜まる熱がくすぶるだけで、私も我慢ができなかった。
アンリがゆっくりと動き出す。
くちゅん、くちゅん、と卑猥な音が聞こえて私は思わず目をつむった。
「由佳」
アンリが私の名前を呼ぶ。
私はアンリの背中に腕を回して、じわじわこみ上げてくる快感を必死に押し留めようとした。
「ひぅ、ぅんっ、あっ、くんっ」
「可愛い……ここ? ここが気持ちいい?」
「ひぁっ!? あっ、あっ、だめっ、あんっ」
目の前がチカチカと点滅する。
アンリの熱が奥をとんとんとするたびに、呼吸が止まって、何も考えられなくなる。
「やっ、あんりっ、あんりっ! それ、だめっ、おかしくなるっ!」
「大丈夫。ほら、気持ちいい?」
「きゃうっ」
トンッ、トンッ、と奥をノックされると、頭の中が甘くしびれてたまらなくなる。
アンリが加減を間違えたのか、わざとなのか分かんないけど、ひときわ強く奥を穿たれて、私の背中が浮いた。
むり、すごく、気持ちいい。
気持ちいいの波が行ったり来たりして、私はもうぐずぐずにとろけてしまいそうだった。
いつかのような暴力的な快感なんかよりも全然良くて、こんなにも優しくしてくれるアンリが愛しくて、涙があふれてくる。
「アンリ、すき、すき……っ」
「由佳……っ」
アンリが苦しそうに私の名前を呼んだ。
その姿は年下の男の子だってことを忘れてしまうくらいに壮絶な雄の色気を纏っていて、私は彼が男なんだってことを漠然と思った。
もう我慢できないというように、アンリの動きが性急になる。
「あっ、あっ、ああっ……!」
「ゆか、ゆか……っ」
アンリの熱が私の気持ちいいところを擦る。お腹の奥がきゅんきゅんして、私はいやいやをするように首をふるけど、アンリはそんな私の頭を抱えて、深い、深いキスをしてくる。
餓えた獣のようなキス。
苦しい。お腹もお口も心も、全部がアンリで満たされて、苦しい。
それなのに、嬉しい。
気持ちいいが限界まであふれそうになる。
気持ちいいだけじゃなくて、アンリが大好きな気持ちもいっぱいいっぱいで、溺れそう。
甘くどろどろに思考を蕩かされて、耐えられない。
おかしくなりそう。
アンリが好きすぎて、どうにかなっちゃいそう。
「もっ、やっ、アンリっ、アンリっ……! イかせて! イキたいの……っ! おかしくなるっ、からぁ……っ」
「……っ、ゆかっ!」
アンリががつがつと奥を穿ちだした。
揺すぶられて、呼吸の仕方も忘れた私は、はくはくと酸素を食べるように息を飲む。
アンリにももう余裕がないのか、二人の交わる卑猥で甘い水音と、荒い獣のような呼吸だけが聞こえる。
苦しさのあまりに逃げ出そうとしても、アンリががっしりと私を捕まえて離さない。
離さないでと言った自分の声が、脳内にリフレインする。中がきゅんっとアンリの熱をさらに締めつけた。
「ゆか……っ」
「ひぅっ……! だめだめだめっ! やっ、ぁんっ、あ、あ、ああああっ―――!!」
アンリがひときわ強く最奥を穿った瞬間、目の前が真っ白に染まる。
がくがくと足腰が震えて、全身が空へ投げ出されたように現実感が遠のく。
同時に、私の中に温かいものが広がった。
アンリが息を見出して、私にキスする。
「由佳、由佳。僕の可愛い奥さん。大好きだ。愛してる」
「アンリ……私も。私も、愛、してるよ」
愛してるはちょっと照れくさい。
でも、せいいっぱいの気持ちを伝えたくて私からも伝えれば、アンリが私の大好きなあのお日様のような笑顔で笑いかけてくれた。
恋人になってから、キス魔キス魔だと思っていたけれど、やっぱりキス魔だった。
「あっ、ぅ、んんっ」
「綺麗だよ、由佳」
「やっ、ああぁんっ!」
そういう言葉は目を見て言ってほしい!
そう言いたいのに、アンリはちゅうっと花芽を吸い上げるものだから、私は一際高い嬌声をあげることしかできなくなる。
下着をするりと脱がしてしまったアンリは、あろうことか私の秘所へと顔をうずめると、そこへとキスしてしまった。
キスだけならともかく、舐めて、吸って、とにかく、そんなところにそんなことするんじゃない! って言いたいくらいのことを平気でやってくる。
しかもそれが気持ちよくて、お腹の奥のむずむずがどんどんと溜まっていく。
「ふ、ぅ、あっ」
「由佳、気持ちよさそう。可愛い」
「も、やだっ、ぁ、や、なめっ、ないでぇっ」
「嫌? やめる?」
「~~~っ!」
やめてほしいけど、ここでやめたいって言ったら、きっとアンリは最後までしてくれない。
それは嫌だ。
ちゃんとしたい。
アンリと、好きな人と、最後までちゃんとしたい。
私がふるふると首をふると、アンリは足の間から顔を出して、嬉しそうに笑った。
「一回、達しておこうか」
アンリがあふれる蜜をすすり、その舌が肉の芽をいじめ、えっちな気持ちがお腹から頭を犯してくる。
お腹のむずむずが零れそうになると、つま先に力が入る。シーツを掴んで耐えようとしたけど、アンリが花芽を吸い上げた瞬間、ひくんってお腹の奥が震えて、気持ちいいが身体中を駆け巡った。
「あっ、やっ、ああぁっ!」
「ん。いい子だ」
すごい。気持ちいい。
経験もそんなにないし、前のように媚薬が効いてるわけでもないのに、頭がおかしいのかってくらい感じちゃう。
ばくばくしてる心臓を落ち着けるように、乱れた呼吸を整えようとしていれば、アンリが身を起こして私の頭を撫でてくれる。
頭をなでられるとほわんとした気持ちになって、私はアンリの胸へとすり寄った。
「アンリ、もっと」
「うん?」
「もっと、ぎゅっとして」
アンリが喉の奥をくつくつと鳴らして、私を抱きしめてくれる。
「頭も、よしよしして」
「甘えん坊だな、由佳は」
「……甘えん坊は、嫌?」
「いーや、可愛い」
ちゅっと額に口づけされる。
それに気を良くした私はますますアンリへと密着した。
「由佳」
「うん」
「……指、入れてもいいかい?」
「……うん」
一つ一つ、まるで美味しいケーキの作り方を確認するように、アンリは私にお伺いを立てる。
私がうなずけば、アンリはもう一度だけ私をぎゅうっと抱きしめてくれて、身を起こした。
離れるぬくもりが少し寂しい。
それがちょっと不満で、不安で、アンリの顔を見れば、アンリは優しく微笑んでくれた。
「大丈夫。怖くない、怖くない」
「う、ん……っ」
アンリは私の右手に指を絡めて握ってくれる。
アンリの指が、しとどに濡れた私の隘路を割り入ってくる。
自然と身体がこわばって、震えた。
「……由佳」
「へい……き」
「でも」
「いや、やめないで……」
目をつむれば瞼の裏にチカチカと赤と白が点滅する。
それが嫌で顔を背けるように横に倒せば、アンリが一度そこから指を引き抜いて、私の顎をすくった。
「由佳、僕を見な」
「んっ」
そう言ってキスをしてくれる。
そろりと舌で唇をノックされたので、私は左腕をアンリの首へと回して、夢中でそれに応えた。
くちゅりと上からも下からも水音が聞こえる。
「んっ、んんっ、ふっ、はぁっ」
呼吸の、仕方が、分からない。
くらくらする頭で、でも夢中でアンリとキスしてたら、不意に腰がびくりと跳ねた。
思い出したように意識が下へと向かう。
蜜壺に収められたアンリの指が、ぐにぐにと私の中で動く。
「あっ、あっ、そこ、だめぇ……っ」
「嫌?」
嫌じゃないけどっ!
なにかが、何かが来ちゃいそうで……っ!
くちゅくちゅと水音を響かせて、アンリが蜜壺の内側を擦る。
身もだえしていれば、アンリは私の身体へといくつものキスを落としてくる。
「可愛い由佳。僕の奥さん。可愛い姿を見せておくれよ」
「ひぅっ、ぁ、あっ、やぁっ! ん、ぁああっ!」
気持ちいいが、津波のように全身をざぷんと飲み込んだ。
まぶたの裏にチラついていたものは全部白一色に染まって、不思議とそれを怖いとも思わなかった。
お腹の奥がきゅんっとして、中に埋められたアンリの指をよく感じる。
気持ちよくて、アンリとえっちなことをしてる実感がじわじわと胸の奥に生まれて、私は顔どころか全身が火照る。
「あーもー、由佳が可愛すぎる。無理。可愛い。挿れたい」
「うぅ……恥ずかし……」
「恥ずかしくなんかないよ。由佳は綺麗だ。もっと見せて」
「ううぅ……!」
可愛い可愛いを連呼するアンリはすごく上機嫌だ。
私が顔を隠して身悶えしていれば、くつくつと笑う。
「ほら由佳、もうちょい頑張れる?」
「ふぇっ?」
「中、まだ全然ほぐれてないから。もう少しだけ頑張って」
「……挿れて、いいよ?」
「駄目だ。由佳に痛い思いはさせたくない」
あんな気持ちいいを何度もさせられてはおかしくなりそう。
だからもう早く挿れてとお願いすれば、きっぱりとアンリに断られてしまう。
私はそれにまた身悶えれば、アンリは私の頭に口づけた。
「指、増やすよ」
「はい……」
小さく了承すれば、アンリは私の体を丁寧にほぐし始めた。
アンリはしつこいくらいに私の蜜壺をかきまぜては、私を気持ちいいの波にさらっていく。
もう何度目か分からない快感が全身を巡って、私はぐったりとシーツに体を沈めた。
「も、やぁ……っ、きもちいぃ……っ」
「……そろそろ、かな」
気持ちよくて、気持ちよくて、えぐえぐと泣き出しそうになってた私を見て、アンリが蜜壺から指を引き抜いた。
もう、終わる……?
そう思ってそろりとまぶたを押し上げれば、はっと呼吸が止まりそうなくらいに美しい体が目に飛び込んでくる。
黄金率の体、といえばいいのかな。
さすが騎士、無駄なく引きしまった筋肉がシャツの下には隠れていて、私は思わずそれに見惚れてしまった。
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「由佳?」
「アンリ、綺麗……」
「綺麗なのは由佳だろ」
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「由佳。この先はたぶん、僕も途中で止めてやる自信がない。やるなら、最後までだ。由佳が嫌ならここで止めるけど……それでも僕はこの先を進みたい。由佳は、どうしたい?」
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「由佳、好きだよ」
「私も好き」
アンリがそうっと私の蜜口に熱の塊をあてがった。
狭いはずの隘路をみちみちと割り入ってくるそれに、私は呼吸が止まる。
「由佳、力抜いて。息をして」
「ぅ、うん……っ」
力を抜こうと思っても、力の抜き方が分からない。
お腹の中に入ってくる異物感がどうしても慣れなくて、全身がこわばってしまう。
アンリが苦しそうに眉をひそめた。
「由佳。大丈夫。怖くないから」
「ん……っ」
「力抜いて」
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「ごめ、ごめんなさい……っ、なんでぇ……っ、わか、わかんない……っ」
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私の中へと入ってくるアンリの熱がくっきりと感じられる。
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「あーもー、むり……」
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いつかのような暴力的な快感なんかよりも全然良くて、こんなにも優しくしてくれるアンリが愛しくて、涙があふれてくる。
「アンリ、すき、すき……っ」
「由佳……っ」
アンリが苦しそうに私の名前を呼んだ。
その姿は年下の男の子だってことを忘れてしまうくらいに壮絶な雄の色気を纏っていて、私は彼が男なんだってことを漠然と思った。
もう我慢できないというように、アンリの動きが性急になる。
「あっ、あっ、ああっ……!」
「ゆか、ゆか……っ」
アンリの熱が私の気持ちいいところを擦る。お腹の奥がきゅんきゅんして、私はいやいやをするように首をふるけど、アンリはそんな私の頭を抱えて、深い、深いキスをしてくる。
餓えた獣のようなキス。
苦しい。お腹もお口も心も、全部がアンリで満たされて、苦しい。
それなのに、嬉しい。
気持ちいいが限界まであふれそうになる。
気持ちいいだけじゃなくて、アンリが大好きな気持ちもいっぱいいっぱいで、溺れそう。
甘くどろどろに思考を蕩かされて、耐えられない。
おかしくなりそう。
アンリが好きすぎて、どうにかなっちゃいそう。
「もっ、やっ、アンリっ、アンリっ……! イかせて! イキたいの……っ! おかしくなるっ、からぁ……っ」
「……っ、ゆかっ!」
アンリががつがつと奥を穿ちだした。
揺すぶられて、呼吸の仕方も忘れた私は、はくはくと酸素を食べるように息を飲む。
アンリにももう余裕がないのか、二人の交わる卑猥で甘い水音と、荒い獣のような呼吸だけが聞こえる。
苦しさのあまりに逃げ出そうとしても、アンリががっしりと私を捕まえて離さない。
離さないでと言った自分の声が、脳内にリフレインする。中がきゅんっとアンリの熱をさらに締めつけた。
「ゆか……っ」
「ひぅっ……! だめだめだめっ! やっ、ぁんっ、あ、あ、ああああっ―――!!」
アンリがひときわ強く最奥を穿った瞬間、目の前が真っ白に染まる。
がくがくと足腰が震えて、全身が空へ投げ出されたように現実感が遠のく。
同時に、私の中に温かいものが広がった。
アンリが息を見出して、私にキスする。
「由佳、由佳。僕の可愛い奥さん。大好きだ。愛してる」
「アンリ……私も。私も、愛、してるよ」
愛してるはちょっと照れくさい。
でも、せいいっぱいの気持ちを伝えたくて私からも伝えれば、アンリが私の大好きなあのお日様のような笑顔で笑いかけてくれた。
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