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1000年の変化
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リンは魔法の変化、時代の変化に錯誤する。
「つかぬことを聞くが、バーナさんやイーディス、アリスの魔力はなんだ?」
アリスたちの魔力色を尋ねる。
「私は不遇魔力。姪とイーディス殿は欠陥魔力だ」
「はい?」
リンはバーナが口にした「不遇」とか「欠陥」とか聞き慣れない言葉の意味が分からなかった。
「リンくんの魔力はなんだね?」
「俺は…銀白色ですけど…」
と、リンは手をかざして、自分の魔力を見せる。
バーナはリンの魔力を見て呟く。
「リンくんは待遇魔力か・・・嗜むのもわかる」
リンの頭の中には疑問が渦巻いている。バーナが言う「待遇」とか「不遇」とか「欠陥」とかの意味が分からず、疑問符を浮かべる。
「実際、私たちの魔力を見せよう」
バーナ、アリス、イーディスは手をかざして魔力を見せる。
バーナは真紅色。アリスとイーディスに至っては、
「なっ…黄金色だと…」
そう、黄金色である。
黄金色はというのは魔力の色の中で特異的かつ全ての魔力に適性があって優れている。そもそも、魔力の色というのはギャンブルに近い。親と魔力の色が異なるのが常識。しかし、黄金色だけは別だ。黄金色は血統なり環境なりに依存する。
「黄金色?」
「私とアリスの魔力を見て言ったの? でも、色が黄金だからと言って、私とアリスは欠陥だから」
イーディスは欠陥と言うも、リンは鳥肌が立っていた。
(アリスとイーディスが欠陥? 冗談じゃない。鍛え方次第で彼女たちは大きく化けられる)
「バーナさん。二人はこれから、何処に向かうんですか?」
リンは顔を俯かせながら、アリスらの向かう場所を尋ねる。
「姪とイーディス殿は辺境の学園へ向かう」
「学園ですか?」
「うむ。この国、アーマルズ大帝国には魔法を学べる学園がある」
「魔法学園ですか」
「そうだ。魔法学園は辺境に合わせて3つ存在する。姪たちは辺境の試験を受ける」
バーナの話を聞きつつ、リンは考え始める。
(魔法学園に受けるにあたってもそうだが、アリスは皇女。イーディスは貴族だ。皇宮がある中央の学園に受けるはずだ。なにか理由があるはずだ)
「リンくん。キミが今、考えていることはわかる。姪たちが辺境に来ているのか。だろ?」
「はい。その通りです」
「正直だな」
「いえ、俺は性格が単純なもので…」
「そ、そうなのか。おっと、話を戻すが、姪たちが何故、辺境にいるのかだが、中央はファタリー家の息がかかっている」
ファタリー家。また、嫌な名前を聞いたな。と、リンは嫌悪を抱く。
「ファタリー家は1000年も続く公爵家。魔道具の開発を一任している。だが、奴らは偉そうに姪を“欠陥皇女”と言いふらしている」
“欠陥皇女“。欠陥魔力を持つアリスのことを指す。
「全く、1000年も続いているからって偉そぶっているのよ」
イーディスも不機嫌にぼやく。
「ファタリー家は金と権力で物を言わせる。自分たちは荒事をせずに手柄を得ようと偉そぶる。無駄に金を使う。1000年前から国の害虫みたいな存在だ」
リンはファタリー家がどういう貴族なのかを知っているのでぼやく。しかも、「1000年前から」という言葉を告げる。
バーナ、アリス、イーディスは呆けてしまう。
リンが言う“1000年前”ということに――。
リンは「あっ」となり弁明する。
「アリスたちと出会う前、本を読んだんだよ」
「なんだ、そうなんだ」
「だが、リンくんが言っていることは的を射ている。現在、皇家のほとんどがファタリー家に支配されている。彼らはアリスを廃嫡しようと動いてくるはずだ」
「それで辺境の学園に通わせるためですね」
(これで納得した。アリスたちがここにいるのか)
「その通りだ。さらに言うなら、中央にある学園もファタリー家。かの家の息がかかっている貴族が集まる」
「息がかかっていない人たちは辺境へ逃れるわけか」
(辺境に逃れるということは才ある者も辺境へ逃れるというわけだ。俺としては学園に行ってみたいな。この時代の魔法も知りたいからな)
リンは好奇心をうちに秘めつつ、気分が高揚する。
「バーナさん。学園には貴族が通うんですか?」
「いや、学園は貴族だけじゃなく、冒険者、商人、軍人、平民も通う」
バーナはそう答えつつ、リンの思惑、目論見を薄々気づく。
「だったら、俺も学園の入学試験を受けてみようかな」
リンは魔法学園に入学しようかと口にする。アリスとイーディスは「えっ?」と呆ける。バーナは「やはりな」と肩を落とす。
「いいかな。リンくん。学園の入学試験は筆記と実技だ」
「筆記と実技か…」
「実技は大丈夫そうだが・・・筆記はどうする?」
「後で本を読みますよ」
(まあ、この時代の魔法だと知識も廃れているはずだ)
リンは言いながら本心は問題ないと感じた。
リンが問題ないと顔から見てとれたバーナはアリスとイーディスの方に向く。
「姪、イーディス殿。すまないが後でリンに教えてくれないか」
「はい」
「うん。いいよ」
教えてあげてほしいと言われ、二人も了承する。
「やっぱ、俺って顔に出やすい?」
「そう思うのなら、治したらどうだね」
「無理かな。俺の性格と魔力は似通っているから」
リンは性格を治せないと受け入れつつ、自分の個性だと理解していた。
「全く…」
と、バーナは思わず息を吐いた。
夕食を食べ終えた後、リンはお風呂で旅の汚れを落としている。いや、より正確に言えば、“落としてこい”と言われた。
リンは夕食を食べ終えた後、本を読もうとするもイーディスに引き留められる。
「リン! もしかしてだけど、今から本を読もうと思っているの?」
「そうだけど、ダメなのか?」
「ダメじゃないよ」
「じゃあ、そういうことで・・・」
「そうじゃなくて、お風呂に入ってきたらどうなの?」
「いや、いいよ。俺よりもアリスとイーディスが入りなよ」
リンは女の子のアリスとイーディスを先にお風呂に入れさせようとする。
「ダメ! リンは魔物の血を浴びたし。煤や埃も浴びたんだよ」
「だから、二人が先に入ってよ」
リンは女性優先と言い張る。
「あぁ~、もう」
駄々をごねるイーディス。
「リンってお風呂とか入らなさそうじゃん」
ここでイーディスが適確な発言をする。
「うぐっ!?」
図星か言葉を詰まらせるリン。
「本を読むのは後でもできるでしょう。今はお風呂に入りなさい!!」
「分かった。だけど、アリスとイーディスの後に……「口答えしない!!」……すみません」
口答えすらできないリン。ジリジリと狭まれている気がする。
「り、リン…」
ここでアリスが話しかけてくる。
「一緒に入ってくれませんか?」
「えっ?」
「…で、ですから・・・お風呂、一緒に入ってくれませんか?」
「……はい?」
アリスの爆弾発言にリンは呆けてしまう。
「リンには助けてくれたお礼がしたいのです。なので、一緒に入ってくれませんか?」
頬を朱に染めつつ、アリスが強請ってくる。
強請る。甘えるアリスにリンは不味いことが過ぎった。
“もし、アリスと一緒に入ったら、兵士らに殺されてしまう”というのが過ぎった。なので、彼は弁明する。
「い、いや、いいよ。アリスの気持ちを受け取る」
「でしたら……」
「だけど、いいのか。俺と一緒に入れば、バーナさんや兵士の方たちになんて言われるか分からない」
リンはバカ正直に言う。彼のバカ正直さにイーディスはクスッと微笑する。
「大丈夫よ。アリスに何かあったら、私がリンをぶっ飛ばすから」
「怖いな……」
「でも、リンって単純そうだし。私が言い含めるように言えば、バレないと思うよね」
「うぐっ…!?」
イーディスに知られて、リンは言葉を詰まる。なお、彼は彼女の性格を知る。イーディスの性格は間違えなく、個人主義だ。少しだけカリスマがある。黄金色魔力なのも頷ける。
リンは仕方ないという面持ちで息を吐く。
「分かった。アリスの我が儘いやご恩を無碍にするのも男らしくない。一緒に入ることにしよう」
諦める形で受け入れることにした。
アリスは彼が受け入れたことにほっと息を吐いた。
「ただし、イーディスもだ」
「えっ? 私も?」
ここでイーディスは“自分も”顔に指さす。
「当たり前だ。アリスに何かあったときのために一緒に入ればいいだろう」
「あぁ~、そういうこと」
「今更だが、最初から俺が受け入れていればよかったと…後悔した」
「それ、自分が言ったら意味がないよ」
イーディスに指摘され、リンは肩を落とす。
場所が変わって辺境伯家の浴室。
辺境伯というだけあって広々とした浴室。浴槽も軽く見積もって10人が浸かれるだけの広さ。獅子の口から出る湯が造形的かつ印象的である。
リンは今、アリスとイーディス。二人に身体を洗われている。最初は彼も「自分で洗う」と言った。二人から断固拒否されてしまい、否応なく身体を洗われていた。
身体を洗われている最中、イーディスはリンの身体を見る。
「ふぅ~ん。がっしりとした肉付き。女受けしそう……」
「なに、ペタペタ触っているのかな?」
あと、背中に感じる柔らかな肉付きいや感触。意識してしまう。
なお、アリスはリンの腕や脚を洗ってはいるが身体を洗おうとしなかった。
顔を赤かった。熱気で顔が赤くなったとかではなく、羞恥で赤くなっている。
目線も上下左右しどろもどろ彷徨っている。
イーディスはアリスがしどろもどろとなっているのを見て、ニヤニヤと含み笑いをしている。
「どうしたの、アリス? リンの身体を見ないの? もしかして、興味ないとか?」
「い、イーディス殿!? 私はリンの身体に興味がないとかではなく……」
アリスは恥ずかしげに、てんやわんやしつつ、口が詰まる。
「興味あるんだ。けど、どうして見ないの? もしかして、男の子の身体が初めてとか……」
含み笑いを浮かべつつ呟くイーディス。
「そ、それは……」
アリスはしどろもどろだが、勇気を振り絞って、リンの身体を見やる。
リンの身体は筋骨隆々ではなく、ほどよく引き締まった偉丈夫の身体つき。男としては理想の身体をしている。
アリスはリンの身体を目に入っただけで意識し、恥ずかしさで顔を赤くする。
「あ、アリス……大丈夫か?」
リンはアリスの視界に入り込む。だけど、失策だった。アリスの視界にリンが入り込んだことでアリスは
「……~――!?」
声にならない悲鳴を上げた。羞恥と浴場の熱気でのぼせてしまい、バタリと気を失ってしまった。
「あ、アリス!?」
「大丈夫か!?」
「きゅ~」
リンとイーディスがアリスを気にかける。アリスは目を回し、意識が混濁している。
「目を回している」
「俺が余計なことをしたから痛いな」
「違うわよ。アリスは普段から男の子に慣れていないのよ」
「男に慣れていない?」
“どういうこと?”と表情を浮かべる。
「アリスは皇族の中で“欠陥魔力”を宿しているから。周りからの仕打ちが酷かったのよ」
「なるほど。だから、人見知り。いや、男に対して恐怖を抱いている、だな」
「!?」
リンに見抜かれ、言葉が詰まる。どうやら、図星だった。
「俺の服を掴むほど、彼女の心にゆとりがない」
「そう。リンの言うとおり。アリスは今、誰も信じていない。信じているのは私とバーナ殿だけ…」
「兵士の彼らも信じられていないのか?」
「兵士の中に“ファタリー家の息が掛かっているかも”っていう疑心がある。前に兵士らに強姦未遂があったから」
「だとしたら、今のアリスの心は防衛本能が出ているかもしれないな」
「そうかもしれない。だから、アリスにとってリンは心の拠り所かもね」
「俺が?」
リンはイーディスが言っている意味が分からず、首を傾げる。
「アリスがリンに身を預けるなんてしないよ」
「しかも、ついさっき知ったばかりなのにな……」
リンは自分とアリスたちと出会ったのを思い出しつつ呟く。
「でも、アリスにとってリンは心を許せたんだと思う。リンは意外と強姦しないし」
「女を襲うようなマネはしない。襲えないからな……」
リンは目線を下げつつ、昔を思い出す。
1000年前にアリスに似た彼女から襲われたことに――。
リンが目線を下げる。物思いに耽っている彼に疑問符を浮かべるイーディス。
「逆に言えば、アリスが俺を襲うかもな」
リンはもしもの可能性を口にする。イーディスは軽く笑い飛ばす。
「それは、もしもの話でしょう。初心なアリスには無理よ」
「そうか? 無意識にアリスが俺を襲うかもしれないだろう」
具体的な可能性を口にする。
「なんか…やけに現実的ね」
イーディスはリンの言い分に現実味があるとぼやく。
「昔、アリスに似た女性に襲われたことがある」
「へぇ~、そうなんだ」
イーディスは冷たい眼差しをリンに向ける。リンはゾクッと背筋を伸ばす。
「そ、それよりも今はアリスを浴室から出そう。このままじゃあ、ますます、アリスがのぼせるからな」
「それもそうね」
リンの提案にイーディスも賛同しつつ、彼女はアリスの肩を担ぐ。
「それじゃあ、私がアリスを運ぶから。リンはもう少しゆっくりしていいよ」
「分かった。そうさせてもらう」
リンは胸をなで下ろし、ほっと息を吐く。
胸中ではアリスを運んでほしいと言われると思ったからだ。
「どうしたの?」
「な、何でもない」
イーディスは疑問符を浮かべつつ尋ねるもリンは問題ないと答える。
イーディスはアリスを連れて浴室を出る。リンは湯に浸かるも、身体を洗われた際、前後の四つのふくよかな感触を忘れずにいて、悶々としていた。
「つかぬことを聞くが、バーナさんやイーディス、アリスの魔力はなんだ?」
アリスたちの魔力色を尋ねる。
「私は不遇魔力。姪とイーディス殿は欠陥魔力だ」
「はい?」
リンはバーナが口にした「不遇」とか「欠陥」とか聞き慣れない言葉の意味が分からなかった。
「リンくんの魔力はなんだね?」
「俺は…銀白色ですけど…」
と、リンは手をかざして、自分の魔力を見せる。
バーナはリンの魔力を見て呟く。
「リンくんは待遇魔力か・・・嗜むのもわかる」
リンの頭の中には疑問が渦巻いている。バーナが言う「待遇」とか「不遇」とか「欠陥」とかの意味が分からず、疑問符を浮かべる。
「実際、私たちの魔力を見せよう」
バーナ、アリス、イーディスは手をかざして魔力を見せる。
バーナは真紅色。アリスとイーディスに至っては、
「なっ…黄金色だと…」
そう、黄金色である。
黄金色はというのは魔力の色の中で特異的かつ全ての魔力に適性があって優れている。そもそも、魔力の色というのはギャンブルに近い。親と魔力の色が異なるのが常識。しかし、黄金色だけは別だ。黄金色は血統なり環境なりに依存する。
「黄金色?」
「私とアリスの魔力を見て言ったの? でも、色が黄金だからと言って、私とアリスは欠陥だから」
イーディスは欠陥と言うも、リンは鳥肌が立っていた。
(アリスとイーディスが欠陥? 冗談じゃない。鍛え方次第で彼女たちは大きく化けられる)
「バーナさん。二人はこれから、何処に向かうんですか?」
リンは顔を俯かせながら、アリスらの向かう場所を尋ねる。
「姪とイーディス殿は辺境の学園へ向かう」
「学園ですか?」
「うむ。この国、アーマルズ大帝国には魔法を学べる学園がある」
「魔法学園ですか」
「そうだ。魔法学園は辺境に合わせて3つ存在する。姪たちは辺境の試験を受ける」
バーナの話を聞きつつ、リンは考え始める。
(魔法学園に受けるにあたってもそうだが、アリスは皇女。イーディスは貴族だ。皇宮がある中央の学園に受けるはずだ。なにか理由があるはずだ)
「リンくん。キミが今、考えていることはわかる。姪たちが辺境に来ているのか。だろ?」
「はい。その通りです」
「正直だな」
「いえ、俺は性格が単純なもので…」
「そ、そうなのか。おっと、話を戻すが、姪たちが何故、辺境にいるのかだが、中央はファタリー家の息がかかっている」
ファタリー家。また、嫌な名前を聞いたな。と、リンは嫌悪を抱く。
「ファタリー家は1000年も続く公爵家。魔道具の開発を一任している。だが、奴らは偉そうに姪を“欠陥皇女”と言いふらしている」
“欠陥皇女“。欠陥魔力を持つアリスのことを指す。
「全く、1000年も続いているからって偉そぶっているのよ」
イーディスも不機嫌にぼやく。
「ファタリー家は金と権力で物を言わせる。自分たちは荒事をせずに手柄を得ようと偉そぶる。無駄に金を使う。1000年前から国の害虫みたいな存在だ」
リンはファタリー家がどういう貴族なのかを知っているのでぼやく。しかも、「1000年前から」という言葉を告げる。
バーナ、アリス、イーディスは呆けてしまう。
リンが言う“1000年前”ということに――。
リンは「あっ」となり弁明する。
「アリスたちと出会う前、本を読んだんだよ」
「なんだ、そうなんだ」
「だが、リンくんが言っていることは的を射ている。現在、皇家のほとんどがファタリー家に支配されている。彼らはアリスを廃嫡しようと動いてくるはずだ」
「それで辺境の学園に通わせるためですね」
(これで納得した。アリスたちがここにいるのか)
「その通りだ。さらに言うなら、中央にある学園もファタリー家。かの家の息がかかっている貴族が集まる」
「息がかかっていない人たちは辺境へ逃れるわけか」
(辺境に逃れるということは才ある者も辺境へ逃れるというわけだ。俺としては学園に行ってみたいな。この時代の魔法も知りたいからな)
リンは好奇心をうちに秘めつつ、気分が高揚する。
「バーナさん。学園には貴族が通うんですか?」
「いや、学園は貴族だけじゃなく、冒険者、商人、軍人、平民も通う」
バーナはそう答えつつ、リンの思惑、目論見を薄々気づく。
「だったら、俺も学園の入学試験を受けてみようかな」
リンは魔法学園に入学しようかと口にする。アリスとイーディスは「えっ?」と呆ける。バーナは「やはりな」と肩を落とす。
「いいかな。リンくん。学園の入学試験は筆記と実技だ」
「筆記と実技か…」
「実技は大丈夫そうだが・・・筆記はどうする?」
「後で本を読みますよ」
(まあ、この時代の魔法だと知識も廃れているはずだ)
リンは言いながら本心は問題ないと感じた。
リンが問題ないと顔から見てとれたバーナはアリスとイーディスの方に向く。
「姪、イーディス殿。すまないが後でリンに教えてくれないか」
「はい」
「うん。いいよ」
教えてあげてほしいと言われ、二人も了承する。
「やっぱ、俺って顔に出やすい?」
「そう思うのなら、治したらどうだね」
「無理かな。俺の性格と魔力は似通っているから」
リンは性格を治せないと受け入れつつ、自分の個性だと理解していた。
「全く…」
と、バーナは思わず息を吐いた。
夕食を食べ終えた後、リンはお風呂で旅の汚れを落としている。いや、より正確に言えば、“落としてこい”と言われた。
リンは夕食を食べ終えた後、本を読もうとするもイーディスに引き留められる。
「リン! もしかしてだけど、今から本を読もうと思っているの?」
「そうだけど、ダメなのか?」
「ダメじゃないよ」
「じゃあ、そういうことで・・・」
「そうじゃなくて、お風呂に入ってきたらどうなの?」
「いや、いいよ。俺よりもアリスとイーディスが入りなよ」
リンは女の子のアリスとイーディスを先にお風呂に入れさせようとする。
「ダメ! リンは魔物の血を浴びたし。煤や埃も浴びたんだよ」
「だから、二人が先に入ってよ」
リンは女性優先と言い張る。
「あぁ~、もう」
駄々をごねるイーディス。
「リンってお風呂とか入らなさそうじゃん」
ここでイーディスが適確な発言をする。
「うぐっ!?」
図星か言葉を詰まらせるリン。
「本を読むのは後でもできるでしょう。今はお風呂に入りなさい!!」
「分かった。だけど、アリスとイーディスの後に……「口答えしない!!」……すみません」
口答えすらできないリン。ジリジリと狭まれている気がする。
「り、リン…」
ここでアリスが話しかけてくる。
「一緒に入ってくれませんか?」
「えっ?」
「…で、ですから・・・お風呂、一緒に入ってくれませんか?」
「……はい?」
アリスの爆弾発言にリンは呆けてしまう。
「リンには助けてくれたお礼がしたいのです。なので、一緒に入ってくれませんか?」
頬を朱に染めつつ、アリスが強請ってくる。
強請る。甘えるアリスにリンは不味いことが過ぎった。
“もし、アリスと一緒に入ったら、兵士らに殺されてしまう”というのが過ぎった。なので、彼は弁明する。
「い、いや、いいよ。アリスの気持ちを受け取る」
「でしたら……」
「だけど、いいのか。俺と一緒に入れば、バーナさんや兵士の方たちになんて言われるか分からない」
リンはバカ正直に言う。彼のバカ正直さにイーディスはクスッと微笑する。
「大丈夫よ。アリスに何かあったら、私がリンをぶっ飛ばすから」
「怖いな……」
「でも、リンって単純そうだし。私が言い含めるように言えば、バレないと思うよね」
「うぐっ…!?」
イーディスに知られて、リンは言葉を詰まる。なお、彼は彼女の性格を知る。イーディスの性格は間違えなく、個人主義だ。少しだけカリスマがある。黄金色魔力なのも頷ける。
リンは仕方ないという面持ちで息を吐く。
「分かった。アリスの我が儘いやご恩を無碍にするのも男らしくない。一緒に入ることにしよう」
諦める形で受け入れることにした。
アリスは彼が受け入れたことにほっと息を吐いた。
「ただし、イーディスもだ」
「えっ? 私も?」
ここでイーディスは“自分も”顔に指さす。
「当たり前だ。アリスに何かあったときのために一緒に入ればいいだろう」
「あぁ~、そういうこと」
「今更だが、最初から俺が受け入れていればよかったと…後悔した」
「それ、自分が言ったら意味がないよ」
イーディスに指摘され、リンは肩を落とす。
場所が変わって辺境伯家の浴室。
辺境伯というだけあって広々とした浴室。浴槽も軽く見積もって10人が浸かれるだけの広さ。獅子の口から出る湯が造形的かつ印象的である。
リンは今、アリスとイーディス。二人に身体を洗われている。最初は彼も「自分で洗う」と言った。二人から断固拒否されてしまい、否応なく身体を洗われていた。
身体を洗われている最中、イーディスはリンの身体を見る。
「ふぅ~ん。がっしりとした肉付き。女受けしそう……」
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あと、背中に感じる柔らかな肉付きいや感触。意識してしまう。
なお、アリスはリンの腕や脚を洗ってはいるが身体を洗おうとしなかった。
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目線も上下左右しどろもどろ彷徨っている。
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「どうしたの、アリス? リンの身体を見ないの? もしかして、興味ないとか?」
「い、イーディス殿!? 私はリンの身体に興味がないとかではなく……」
アリスは恥ずかしげに、てんやわんやしつつ、口が詰まる。
「興味あるんだ。けど、どうして見ないの? もしかして、男の子の身体が初めてとか……」
含み笑いを浮かべつつ呟くイーディス。
「そ、それは……」
アリスはしどろもどろだが、勇気を振り絞って、リンの身体を見やる。
リンの身体は筋骨隆々ではなく、ほどよく引き締まった偉丈夫の身体つき。男としては理想の身体をしている。
アリスはリンの身体を目に入っただけで意識し、恥ずかしさで顔を赤くする。
「あ、アリス……大丈夫か?」
リンはアリスの視界に入り込む。だけど、失策だった。アリスの視界にリンが入り込んだことでアリスは
「……~――!?」
声にならない悲鳴を上げた。羞恥と浴場の熱気でのぼせてしまい、バタリと気を失ってしまった。
「あ、アリス!?」
「大丈夫か!?」
「きゅ~」
リンとイーディスがアリスを気にかける。アリスは目を回し、意識が混濁している。
「目を回している」
「俺が余計なことをしたから痛いな」
「違うわよ。アリスは普段から男の子に慣れていないのよ」
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“どういうこと?”と表情を浮かべる。
「アリスは皇族の中で“欠陥魔力”を宿しているから。周りからの仕打ちが酷かったのよ」
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「!?」
リンに見抜かれ、言葉が詰まる。どうやら、図星だった。
「俺の服を掴むほど、彼女の心にゆとりがない」
「そう。リンの言うとおり。アリスは今、誰も信じていない。信じているのは私とバーナ殿だけ…」
「兵士の彼らも信じられていないのか?」
「兵士の中に“ファタリー家の息が掛かっているかも”っていう疑心がある。前に兵士らに強姦未遂があったから」
「だとしたら、今のアリスの心は防衛本能が出ているかもしれないな」
「そうかもしれない。だから、アリスにとってリンは心の拠り所かもね」
「俺が?」
リンはイーディスが言っている意味が分からず、首を傾げる。
「アリスがリンに身を預けるなんてしないよ」
「しかも、ついさっき知ったばかりなのにな……」
リンは自分とアリスたちと出会ったのを思い出しつつ呟く。
「でも、アリスにとってリンは心を許せたんだと思う。リンは意外と強姦しないし」
「女を襲うようなマネはしない。襲えないからな……」
リンは目線を下げつつ、昔を思い出す。
1000年前にアリスに似た彼女から襲われたことに――。
リンが目線を下げる。物思いに耽っている彼に疑問符を浮かべるイーディス。
「逆に言えば、アリスが俺を襲うかもな」
リンはもしもの可能性を口にする。イーディスは軽く笑い飛ばす。
「それは、もしもの話でしょう。初心なアリスには無理よ」
「そうか? 無意識にアリスが俺を襲うかもしれないだろう」
具体的な可能性を口にする。
「なんか…やけに現実的ね」
イーディスはリンの言い分に現実味があるとぼやく。
「昔、アリスに似た女性に襲われたことがある」
「へぇ~、そうなんだ」
イーディスは冷たい眼差しをリンに向ける。リンはゾクッと背筋を伸ばす。
「そ、それよりも今はアリスを浴室から出そう。このままじゃあ、ますます、アリスがのぼせるからな」
「それもそうね」
リンの提案にイーディスも賛同しつつ、彼女はアリスの肩を担ぐ。
「それじゃあ、私がアリスを運ぶから。リンはもう少しゆっくりしていいよ」
「分かった。そうさせてもらう」
リンは胸をなで下ろし、ほっと息を吐く。
胸中ではアリスを運んでほしいと言われると思ったからだ。
「どうしたの?」
「な、何でもない」
イーディスは疑問符を浮かべつつ尋ねるもリンは問題ないと答える。
イーディスはアリスを連れて浴室を出る。リンは湯に浸かるも、身体を洗われた際、前後の四つのふくよかな感触を忘れずにいて、悶々としていた。
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