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第3章
第十七話 とある事故
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下級貴族 カルシス・シンズは事故を起こした。
明け方、馬車に乗っている最中に子どもを引いたのだ。子どもはまだ息があった。処置すれば助かるほどの怪我であったが、彼らが次のとった行動はある意味で貴族らしく、そして邪悪なものであった。
もう一度Uターンし、子どもをもう一度引いたのだ。止めをさすことで、子供の証言を潰す。そして馬車は何事もなかったかのように家路についた。
事故を目撃していた住人がロウ家に訴えにきたことで発覚した。
「どうしてこんな残虐なことができるのでしょう!私は許せません!どうか神の裁きを!」
住民クエイクは涙声で私に強く懇願した。
クエイクはどうやら事故にあった子どもと知り合いのようであった。早朝に新聞を家々に配り歩く仕事していた子どもと挨拶をする仲。苦労もよく知っていたのだろう。彼からはとても強い怒りの情緒を感じ取ることができる。
こんな話は日本にいた時も聞いたことがある。こっちは本家本元の上級国民の起こした事故であるが、いざ、身近で起こるとここまで胸糞が悪くなる話も無いだろう。
「クエイクの言い分はわかりました。調査・検分はこちらでしますから、あなたはその子の冥福を祈っていてください。」
私はできる限り穏やかに伝えた。
「私も検分に連れて行ってもらえないでしょうか?」
クエイクはその子の無念を晴らそうと私に直訴してきた。確かに、現場でこの男の記憶を読んだほうが正確な情報が手に入れられそうだ。そして今の現場にはびこる膿も一層できるかもしれない。
「わかったわ。ついてきなさい」
私達は騎兵を従え、現場に向かった。
明け方、馬車に乗っている最中に子どもを引いたのだ。子どもはまだ息があった。処置すれば助かるほどの怪我であったが、彼らが次のとった行動はある意味で貴族らしく、そして邪悪なものであった。
もう一度Uターンし、子どもをもう一度引いたのだ。止めをさすことで、子供の証言を潰す。そして馬車は何事もなかったかのように家路についた。
事故を目撃していた住人がロウ家に訴えにきたことで発覚した。
「どうしてこんな残虐なことができるのでしょう!私は許せません!どうか神の裁きを!」
住民クエイクは涙声で私に強く懇願した。
クエイクはどうやら事故にあった子どもと知り合いのようであった。早朝に新聞を家々に配り歩く仕事していた子どもと挨拶をする仲。苦労もよく知っていたのだろう。彼からはとても強い怒りの情緒を感じ取ることができる。
こんな話は日本にいた時も聞いたことがある。こっちは本家本元の上級国民の起こした事故であるが、いざ、身近で起こるとここまで胸糞が悪くなる話も無いだろう。
「クエイクの言い分はわかりました。調査・検分はこちらでしますから、あなたはその子の冥福を祈っていてください。」
私はできる限り穏やかに伝えた。
「私も検分に連れて行ってもらえないでしょうか?」
クエイクはその子の無念を晴らそうと私に直訴してきた。確かに、現場でこの男の記憶を読んだほうが正確な情報が手に入れられそうだ。そして今の現場にはびこる膿も一層できるかもしれない。
「わかったわ。ついてきなさい」
私達は騎兵を従え、現場に向かった。
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