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第1章

第六話 とある貴族の恥晒し首

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「もう逃げられんぞ!」
アールが馬車の中から叫ぶ。その表情には先程よりも余裕が見られた。


フローレンシアは邪悪な表情を浮かべ、一言つぶやいた。罠に鹿がかかったような気分だ。
「あなたがよ・・・」


フローレンシアの言葉が言い終わないうちに、街道から怒号が次々に飛んできた。
「卑怯者!!」「テメーらが何しようとしてるだ!!」「ふざけるな!!」「この恥知らずが!!」「毒殺者め!!」「殺せ!!」「踏み潰せ!」「叩き割れ!」
騎兵や馬車に石や売り物の果物、花瓶が投げつけられる。騎兵に殴りかかる者も・・・通行人が激怒している。通行を妨げただけの怒りではない。


アールとデルフィは混乱していた。なぜこんな怒りを向けられるのか。皆目検討がつかないのだ。しかし、理解できるかできないかを問わず、傷だらけでグシャグシャになった騎兵が上申する。
「申し上げます!通行人はどうやらお二人の・・・フローレンシア様への所業を知っているようです!お二人の関係も!」


2人の顔が青ざめる。次の瞬間には通行人に2人は馬車から引きずり降ろされ、殴りつけられた。


アールは刹那・・・疑問が頭をよぎる。水面下で進めてきた計画。殺人自体が極刑に値するこの国で、慎重に慎重を重ねた計画であった。なぜフローレンシアの護衛が入ってきた?外で待機させておいたはず。窓もない部屋で、防音もしっかりしていたはず。そもそもなぜ今の騎兵が知っているような口ぶりなのだ。計画は私とデルフィの二人だけで計画したはず・・・


「そこまでだ!!」
ジークが叫ぶとニーズ家とは別の騎兵が現れ、通行人を街道の端へ退け、ニーズの騎兵を、アールとデルフィを拘束した。


フローレンシアはいまだ邪悪な笑みを浮かべ、ゆっくりと二人の目の前にたった。周囲の通行人もまじまじとその様子を眺めている。ボロボロになったデルフィの服、アールの砕けた顔面を見ながらよく通る声で悪魔のように見える女はつぶやいた。


「あら まだ死んでないのね」
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