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第一章

Sense of guilt. -罪悪感-

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あー、いやだなぁ。
逃げるなら逃げれば良かったのに。
逃げないなら大人しく待っていれば良かったのに。
何で私ってこうなんだろう。
大事な時にいつも迷ってばかり。
そのせいで、みんなは……
会いたい、会いたいよ。

ねぇ、ティア、
もし私が今死んだらみんなに会えるかな?

(……。)

そうだよね。
ティアはぬいぐるみだもん。
答えなんて返ってこないよね。

でも、分かってる。
私はみんながいる場所には天国には行けないって。
私みたいな大罪人が、みんなが死ぬ原因を作った
呪われた人間が、天国に行けるはずがないもん…

ギュッとティアを抱きしめる。
息ができない、苦しい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…
会いたいよ。返してよ。みんなを返して。

私は何がなんでも返らなきゃ。
返らなきゃ。


「フェア。」

「おい、フェア。そろそろ着くぞ。」

そんなに時間が経ってたの?
全然気付かなかった…。

「大丈夫か?汗すごいぞ。」

「あっ。大丈夫です。」

「本当か?
さっきもそう言っていたが、無理してるんじゃ…」

首を横に振る。

「そうか?まぁ、そう言うなら。」

ほっとした。
特に突っ込まれることもなくて良かった。

「だがな、無理はするなよ。
本当にしんどい時は遠慮なく言え。
あと、屋敷に着いたら少し休め。」

びっくりした。
そんな心配しなくても大丈夫なのに…

「別に休まなくて平気です。」

「だめです。」
「フェア様は気付いていないかもですが、
疲れは溜まっているはずです。
身体は平気でも心はきっと…
休みを欲しています。」

「そうですか?」
私は別に…。

休んでいる暇なんかない。
早く逃げなくちゃ、返らなくちゃ…。

「えぇ。そう言うものです。
それに無理をして後で倒れられた方が困りますから
ゆっくり休まれてください。」

「……。」

「分かりましたか?」

優しい口調なのにどことなく怖さを感じさせる。 

コクリと頷いた。

「良かったです。」

「もう着くぞ。」

は、早い。

「ほら、あれだ。」

わぁ、すごい。
大きくて綺麗。
まるで、童話に出てくるお城みたい。


何だかんだで逃げ損ねちゃったな…
まぁ、頑張ってお屋敷から逃げ出す方法でも
探すかなぁ。
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