神様への生贄って泣くべきなんですか?

卯月終

文字の大きさ
上 下
10 / 17
第ニ章 繋がり

ゴミだな。

しおりを挟む
まさか、その事件って。

「そう、玲雅も知っての通り…。
生贄に捧げられるはずだった子が逃げ出した。
そして、惨殺された。
あの、3年前の悲劇のことだよ。」

あぁ、やっぱりあの事件のことか。
思い出したくもない。

「僕達にとってはとってはただ人間が死んだだけ。
悲劇でも何でもないけど、
神裂村の人間からしたら話は変わる。
生贄が逃げたから惨殺された。
天罰がくだされた。

そして、村の人間は恐れた。
自分達までが神の怒りをかうことを。」

そして、俺はあの村を壊した。
生贄が逃げたからではない。
元々、生贄などに興味は無かった。
嫌気がさしていた。
自分が助かるためなら人を平気で見捨てる人間達に。

「……。」

「ここまでは僕達も知っての通り。」

だけど、ここからは違うと言わんばかりだな。

「そう、彼女の両親は違った。
母親は神に祈った。
自分はずっと神を信じてきたのだ。
せめて自分だけは助けてくれ。
他の誰かが死んでもいい。だから助けろ。
そう祈った。

父親はそんな妻にずっと言っていた。
神に祈るなど馬鹿らしい。
だが、そのことを後悔した。
そして、縋った。神に。

段々と壊れていく。

父親は妻に暴力を振るうようになっていった。
自分だけ助かろうとする妻に。
そして母親は都合のいい夫に嫌気がさし、
家に帰らず他の男のところに行くことが
増えていった。

父親も母親も彼女のことを
無視するようになっていった。
父親も母親も彼女に対してだけは何もしなかった。
暴力を振るうことも。暴言を吐くことも。

村の人はその事を気に留めもしなかった。
自分が助かることで手一杯だったから。

彼女はどんどん心を閉ざしていった。
父親の命令にも母親の命令にも大人しく従う。
まるで意思を持たないお人形のように。

ここまでなら両親の行動は村の人間と変わらない。

しかし、彼女の両親は彼女を生贄に捧げようと。
そうすれば、自分達は助かるんじゃないかと。

だが、来年の生贄はもう決まっていた。

だから再来年の生贄に娘を捧げよと決めていた。
そして、それが今年ってこと。」

んっ?1年足りなくないか。

「あっ、1年足りないのは玲雅が結構村を破壊したから
村を修復するのに約1年かかって
その間は生贄を捧げてないからね。」

なるほどな。

「それで、結愛はおとなしく生贄になったのか。」

「そうみたいだよ。
結愛ちゃんは諦めていたのかもね。

村の人間も反対しなかったみたいだしね。
むしろ、自分達が助かる事を喜んで、
彼女の両親に感謝したぐらい。」

「人間なんて、本当……だな。」

「そうだね。人間なんて。」

ふふふっ。

由梨は何だか楽しそうだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...