私、美味しくありません!!

卯月終

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第3章 悪魔契約

過去といま。

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辺り一面にまるで赤バラが咲いたみたいに
赤くて血が飛び散っていて。
白いはずの壁を真っ赤に染めていて。

そして、その中心には
お父様とお母様が……

「あっ。いや、いや、いやだ。
いや、いやーーーーー。」

手に力がこもる。
首筋に熱を感じる。
ポタッ、ポタッと血が落ちる。
でも、そんなことはどうだっていい。

私のせいだ。私のせいでお父様とお母様が。
お父様、お母様……。
いやだ、いやだ。

「痛っ。」

急に手を強く掴まれた。

「それぐらいにしとけ。
死ぬぞ。」

「つっ。」
痛い。痛い、痛い、痛い、痛い。

でも、
「嫌っ。」

必死に相手を睨む。

「チッ。仕方ねぇな。
フィオリア=シェイル、そのまま動くな。」

急に何?
動くななんて言われて大人しくいうこときく訳
ないじゃん。

あれっ。
身体が動かない。
声が出ない。何で?
何で、動かないの。

「術は効くのか。
ハール、悪いんだがそこにある……」

「はい、救急箱。」

「あぁ、ありがとう。助かった。」

痛っ。

「消毒、しみるとは思うが我慢しろ。」

痛い。でも、あの時の方がずっとずっと辛かった。
それに比べればこのくらい、平気。

「消毒終わったぞ。
血も止まってるし、包帯巻いて。」

手際いいな。
慣れてるのかな?

「終わったぞ。」

「……。
ありがとうございます。」

「あぁ。
もうするなよあんな事。」

ふい。
顔を背ける。

「フィオリア。」

目を合わせないように目だけ逸らす。
顔を動かしたら首が痛かった。

「はぁ。」

「それだけ元気なら問題ないな。」

どこをどう見たら元気に見えるの⁈
私、怪我してるんだけど。

「代償払って貰おうか?フィオリア。」

そんなの払うわけ……

「もう何も聞かない。
フィオリアの事情なんか知った事じゃない。
もう逃げられないんだよ。
この鳥籠のなかここからはな。」

つっ。
睨む。精一杯相手を睨む。

「その怪我で何が出来る?
無駄な抵抗はよせよ。

まぁ、抵抗したところで
俺相手には抗えないだろうがな。」

それでも、抗ってみせる。
何があっても!!

すっと手が伸びてきて、患部に触れる。
包帯越しとはいえ少し痛む。

「辛くないように多少は痛みを抑えといてやる。
だから、こっちに集中しろよ。」

痛みが引いた?

「何をしたの?」

「痛みを抑えたんだよ。」

「どう、やって?」

「魔術だ。
俺は悪魔だからな。
これぐらいなら余裕だ。」

魔術って火吹いたり凍らせたりするイメージだった。
治療にまで使えるんだ。凄い。

「代償に何を貰うかはもう決めてるんだよ。
さぁ、覚悟はいいか?フィオリア。」
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