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「それは?」
「我が悪魔だからだ。
この道は床が無くても歩けるんだ。
ただ、広いから迷えば終わりだ。」
ビクッとセインが震えたのが服越しに伝わる。
怖がらせたな。
「安心しろ。我がいる限り迷うことはない。」
ほっとセインが息を吐き出す。
悪魔の言うことをよく信じられるな。
「何故そんなに信用する?」
「?」
「我はお前の父を殺し母と弟から引き離した
悪魔なんだぞ。どうして、我の言葉を信じる?」
「信じちゃダメなんですか?」
「そうは行っておらんが。」
「だって悪魔さん優しいから。
それに嘘言ってない。そう思うから。
私、勘はいいんだ。」
花が咲くような笑顔。
いや、花すら目を逸らすだろう。
眩しすぎる。
「騙されるなよ。」
「やっぱり優しい。」
優しくないはずなんだが。
セインといると感覚が狂う。
「明るっ。」
「屋敷に着いたぞ。」
来た道を振り返り、扉を引くように手を動かす。
「消え、た?」
「あぁ、消した。」
そういえば、人間は魔法使えないんだったな。
いや、使い方を知らないだけか。
機会があれば教えるかな。時間はまだまだある。
コンコンコン、ノック3回。
そして、ガチャリ、扉が開く。
「誰だ?」
「旦那様、お戻りになられていたのですね。」
「今、戻った。」
「そちらの姫君は?」
ぎゅっ、さらに強い力で裾を掴まれる。
「契約者の娘だ。」
「人間の子供ですか。」
「何か問題あるか?」
「いえ、問題ありません。」
「怖い。」
怖い?俺に対しては何も言わなかったのに。
ディーナーは怖いのか。変わっているな。
「目が怖いの。」
なるほど。そういう。
「術、解いて構わん。」
「しかし、」
「我が構わんと言っておるだろう。
この娘は我が招いた客人だ。」
「かしこまりました。」
「怖くない。」
術が見えているのか。
感覚で分かるのか。
「大変失礼しました。
可愛いお客様。
私はこちらで使用人をさせて頂いている
ディーナーと申します。」
「ディナーさん?お夕飯ですか?」
「ふっ。」
「ディナーではありません、ディーナーです。
ディーとお呼びください。」
「ディーナーさん、ディーさん?」
「本来、使用人相手にさん付けはいらないのですが。」
「いいんじゃないか?
たまにはこういう客も悪くないだろ。」
「えぇ、そうですね。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。
お客様のお名前をお聞きしても?」
「そういえばまだ、名乗っていませんでしたね。
失礼しました。
私はセイン・エンゲルです。」
「セイン様、素敵なお名前ですね。」
「ありがとうございます。」
頬を赤く染めながらセインが答える。
照れたな。
「我が悪魔だからだ。
この道は床が無くても歩けるんだ。
ただ、広いから迷えば終わりだ。」
ビクッとセインが震えたのが服越しに伝わる。
怖がらせたな。
「安心しろ。我がいる限り迷うことはない。」
ほっとセインが息を吐き出す。
悪魔の言うことをよく信じられるな。
「何故そんなに信用する?」
「?」
「我はお前の父を殺し母と弟から引き離した
悪魔なんだぞ。どうして、我の言葉を信じる?」
「信じちゃダメなんですか?」
「そうは行っておらんが。」
「だって悪魔さん優しいから。
それに嘘言ってない。そう思うから。
私、勘はいいんだ。」
花が咲くような笑顔。
いや、花すら目を逸らすだろう。
眩しすぎる。
「騙されるなよ。」
「やっぱり優しい。」
優しくないはずなんだが。
セインといると感覚が狂う。
「明るっ。」
「屋敷に着いたぞ。」
来た道を振り返り、扉を引くように手を動かす。
「消え、た?」
「あぁ、消した。」
そういえば、人間は魔法使えないんだったな。
いや、使い方を知らないだけか。
機会があれば教えるかな。時間はまだまだある。
コンコンコン、ノック3回。
そして、ガチャリ、扉が開く。
「誰だ?」
「旦那様、お戻りになられていたのですね。」
「今、戻った。」
「そちらの姫君は?」
ぎゅっ、さらに強い力で裾を掴まれる。
「契約者の娘だ。」
「人間の子供ですか。」
「何か問題あるか?」
「いえ、問題ありません。」
「怖い。」
怖い?俺に対しては何も言わなかったのに。
ディーナーは怖いのか。変わっているな。
「目が怖いの。」
なるほど。そういう。
「術、解いて構わん。」
「しかし、」
「我が構わんと言っておるだろう。
この娘は我が招いた客人だ。」
「かしこまりました。」
「怖くない。」
術が見えているのか。
感覚で分かるのか。
「大変失礼しました。
可愛いお客様。
私はこちらで使用人をさせて頂いている
ディーナーと申します。」
「ディナーさん?お夕飯ですか?」
「ふっ。」
「ディナーではありません、ディーナーです。
ディーとお呼びください。」
「ディーナーさん、ディーさん?」
「本来、使用人相手にさん付けはいらないのですが。」
「いいんじゃないか?
たまにはこういう客も悪くないだろ。」
「えぇ、そうですね。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。
お客様のお名前をお聞きしても?」
「そういえばまだ、名乗っていませんでしたね。
失礼しました。
私はセイン・エンゲルです。」
「セイン様、素敵なお名前ですね。」
「ありがとうございます。」
頬を赤く染めながらセインが答える。
照れたな。
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