父に代わり、悪魔に身を捧げることになりまして…。

卯月終

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「分かりました。
娘に、セインに酷いことしないでください。
セインのこと、よろしくお願いします。」

なっ、悪魔相手に娘をよろしくだ?
頭を下げるか!?

「母様。」

「セインちゃん、愛してる。
辛くなったらいつでも助けをもともに来て。
貴方はいつまでも大切な私の娘です。
辛いことがあれば信頼できる相手に言いなさい。
泣きなさい。頼りなさい。甘えなさい。
そして不審者にはついていかない事、分かった?」

「はい、私も愛しています。
弟のこと、お願いします、母様。」

「名前、セインちゃんが決めて。ねっ。」

「名前……。」

「あ、悪魔さん。」

小声で呼ばれた。

「何だ。」

こちらも声を抑えて返す。

「名前、フィンってどう思いますか?」

「いいんじゃないか。」
アイルランド語で明るい、か。
それをこの娘は知っているのか、
それとも知らないのか。
どっちにしろいい名前をつけるな。

「母様、名前考えました。
フィンです。」

「フィン、いい名前ね。
セインちゃんとも少し似てる。」

えへへ。そう嬉しそうに笑う少女を見ていると
少し心苦しく思う。

仲のいい親子を引き離そうとしている。
その上、魂を悪魔に喰われれば転生出来なくなる。
もう2度と親子が一緒にいられることは
ないかもしれない。
悪いな…。セイン。 

ドタバタ、人の近付く気配。
悪魔祓いエクソシストでも来たか。

「そろそろいかないと面倒な事になる。」

「行くって、どこに?」

「さっき我が言った言葉をこれから来る奴らに言え。」

「ひとまずここを離れる。
支払い云々はその後だ。
ただ逃げるなよ。逃げたらお前の大切な人から
代償を頂くまでだ。」

「分かってます。
今更逃げる気はありません。」

「なら、行くぞ。」

「行ってらっしゃい。」

「はい、行ってきます。」

行ってきます、か。
帰せない気がするんだが、まぁいいか。

「邪魔したな。」

戸を引くように右手を左から右に動かす。

「すごい。」

すごいか?禍々しいと言うならわかるが…

「こっから屋敷に行ける。
逸れないように気をつけろよ。」

ギュッと服の裾を掴まれる。
服、伸びないか。伸びてもまぁ…

「行くか。」

コクリ、不安そうな顔で少女、セインがうなずく。

一歩一歩ゆっくりと歩く。
セインはキョロキョロとあたりを見渡している。
変わったものはないんだが、
この状況そのものが人には不思議なんだろうな。

「あの、」

「どうした?」

疲れたのか?それとも何かあったか?

「何で歩けるんですか?
床も壁も天井も見た感じないのに…」

「それは……」
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