父に代わり、悪魔に身を捧げることになりまして…。

卯月終

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「なっ、貴様、この悪魔が。」

「あぁ、我は悪魔だ。
その悪魔を喚びだし地位を願ったのは誰だ。
さぁ、支払いの時だ。」

「ぐっ。」

あぁ、いいな。
こんな外道でも泣き懇願する姿は堪らん。

ガチャ。
何故、今、扉が開く。
人払いすらしていないのか。

「貴方、何かあったの?
ってお客様。

し、失礼しました。ただいまお茶を。」

「待て。」

「はい、何でしょうか、貴方。」

「おい、悪魔。」

呼び捨てとは良い度胸してるな、おい。

「何でしょう。」

「われの魂はやらん。
代わりに妻のをやる、これで文句ないだろう。」

どこまで下劣なんだ。
まぁ、魂が喰えるなら構わないが…。
後で地位は奪うか、契約違反の代償は
召喚者が払うものだしな。

「構わん。だがいいのか?
其奴は貴公の妻なのだろう。」

「あぁ。女なら幾らでも手に入る。
貴様のおかげだ、感謝してやろう。」

「なっ……」

ポロポロと涙を流し、その場に膝から崩れ落ちる。
まぁ、同情はするが…
悪いなこれも仕事なんだ、恨まないでくれ。

「来世ではいい旦那を見つけるんだな。」

魂を器から出すのに使う鎌を構える。
カチャリ、鎖の音がする。
せめて一息に、そう思い鎌を後ろに引く。

「待って。」

「セインちゃん!?」

子供!?
鎌を慌てて止める。

「何だ。邪魔をするのか?」

「セインちゃん、貴方は外に。」

「セイン、これは大人の問題だ、口を挟むな。」

「分かったら退け。」

「いやです!!
私は子供だから難しいことな分かりません。
でも、母様が大変な状況なのは分かります。
それなのに退くことはできません。」

めんどくさいな。
だが、ここまで純粋なのは珍しい。
父親とは大違いだな。きっと母親に似たのだろう。

「話は聞こえていました。
母様は貴方に渡さない。
魂が必要なら私のをあげる。あげます。
だから母様の魂を命を奪わないでください。
お願いします。」

少女はそう言い、頭を下げた。
礼儀があるのは偉いな。本当、父親とは大違い。
少女の父親である貴族様の方を見る。

「な、なんだ。」

「いえ、なんでも。」

「ガキの命を奪う趣味はねぇんだわ。
悪いがそこを退け。嫌なら無理矢理退かせるまでだ。」

「だったら母様を余計に殺させるわけには…
いきません。」

「どういうことだ?」

話が見えなくなって来たぞ。

「母様は孕っているんです。
もうすぐ、私に弟ができるんです。
母様と弟、2人もの命を私の大切な人の命は奪わせない。
奪わないでください、お願いします。」

今度は先ほどよりも深く。
いや、土下座までして頼まれた。
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