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二つの条件(2)
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美祢子は電子パッドにキーワードを記しながら説明する。
「35歳以上の初産は高齢出産となりリスクを伴う。無事一人目を出産しても二人目以降は慎重にならざるを得ない。また親の年齢が高いと子供が成人する前に定年退職をして収入が減る可能性がある。結婚相手の年齢を気にするのはこういった理由もあるわ」
「女は30歳前半、男は40歳までって言うのはそういう事か」
美祢子は大きく頷く。
「中には子供を望まない人もいる。だけどウチの相談所ではごく少数。年齢の問題は避けて通れないの」
結婚相談所での相手探しは意外に厳しい。
相性の良いお見合い相手を紹介されデートを重ねゆっくりと愛を育もうと考えていた環はモヤモヤした気持ちになった。
(結婚後の生活まで考えると悠長にしてはいられないって事よね? だけど、そこに愛はあるんかい?)
自分の抱く結婚観との違いに環は困惑する。その様子を見た美祢子は怪訝な表情を浮かべた。
「入会手続きの時にこういう話をしたはずだけど?」
「えっ? そうそう、そうだった……かな?」
「もうしっかりしてよ環。結婚相談所がどういう所か理解した上で入会を決めてって言ったでしょ? そうしないとお金も時間も無駄になるからって」
言われたような気もするが美祢子に頼れば大丈夫と大船に乗った気でいたので上の空だった。
「だ、大丈夫です。ちゃんと考えてサインしましたから。でも結婚相談所の相手探しって現実的なんですね。私、相性重視で選ぶんだと思ってました」
「もちろん相性は大切よ。だけど先ずは自分の条件に合う相手を見つけないとね。お多福結婚相談所としてはお互いが将来に懸念を持つ事が無いよう適切な相手を紹介するように努めているの」
「はあ」
美祢子は環の表情をみる。理解はするが納得はしていないという心の内がありありと見て取れた。
「レポートに関する答えはこれでいい?」
「はい。よくわかりました」
「それじゃ私から担当カウンセラーとして話をさせて貰うわ」
美祢子は机にタブレットPCを置くと滑らかなタッチで静かにキーボードを打つ。
「あなたのプロフィールは非公開部分以外はすべての男性会員から検索可能な状態になっている。今の時点でほぼ九割の男性が目を通しているわね」
「そ、それで」
環は前のめりになる。
「年齢はギリギリだけどルックスは良い。スタイルもグラビアモデル並み。男性が重要視する二つの条件をあなたは完全にクリアしている。相手候補として上位にあげられるわね」
「そ、そうですかぁ?」
路上で幾度となく芸能事務所のスカウトを受け余裕で三ケタ越えのバストを持ってる美祢子さんにルックスが良いとかグラビア並みとか褒められても……と思いつつ環はまんざらでもない。
「あげられる……はずだけど」
美祢子は指の動きを止め厳しい目つきで画面を見ながらポツリと呟く。
「男性側の反応がイマイチ芳しくないのよねぇ」
「えっ?」
「35歳以上の初産は高齢出産となりリスクを伴う。無事一人目を出産しても二人目以降は慎重にならざるを得ない。また親の年齢が高いと子供が成人する前に定年退職をして収入が減る可能性がある。結婚相手の年齢を気にするのはこういった理由もあるわ」
「女は30歳前半、男は40歳までって言うのはそういう事か」
美祢子は大きく頷く。
「中には子供を望まない人もいる。だけどウチの相談所ではごく少数。年齢の問題は避けて通れないの」
結婚相談所での相手探しは意外に厳しい。
相性の良いお見合い相手を紹介されデートを重ねゆっくりと愛を育もうと考えていた環はモヤモヤした気持ちになった。
(結婚後の生活まで考えると悠長にしてはいられないって事よね? だけど、そこに愛はあるんかい?)
自分の抱く結婚観との違いに環は困惑する。その様子を見た美祢子は怪訝な表情を浮かべた。
「入会手続きの時にこういう話をしたはずだけど?」
「えっ? そうそう、そうだった……かな?」
「もうしっかりしてよ環。結婚相談所がどういう所か理解した上で入会を決めてって言ったでしょ? そうしないとお金も時間も無駄になるからって」
言われたような気もするが美祢子に頼れば大丈夫と大船に乗った気でいたので上の空だった。
「だ、大丈夫です。ちゃんと考えてサインしましたから。でも結婚相談所の相手探しって現実的なんですね。私、相性重視で選ぶんだと思ってました」
「もちろん相性は大切よ。だけど先ずは自分の条件に合う相手を見つけないとね。お多福結婚相談所としてはお互いが将来に懸念を持つ事が無いよう適切な相手を紹介するように努めているの」
「はあ」
美祢子は環の表情をみる。理解はするが納得はしていないという心の内がありありと見て取れた。
「レポートに関する答えはこれでいい?」
「はい。よくわかりました」
「それじゃ私から担当カウンセラーとして話をさせて貰うわ」
美祢子は机にタブレットPCを置くと滑らかなタッチで静かにキーボードを打つ。
「あなたのプロフィールは非公開部分以外はすべての男性会員から検索可能な状態になっている。今の時点でほぼ九割の男性が目を通しているわね」
「そ、それで」
環は前のめりになる。
「年齢はギリギリだけどルックスは良い。スタイルもグラビアモデル並み。男性が重要視する二つの条件をあなたは完全にクリアしている。相手候補として上位にあげられるわね」
「そ、そうですかぁ?」
路上で幾度となく芸能事務所のスカウトを受け余裕で三ケタ越えのバストを持ってる美祢子さんにルックスが良いとかグラビア並みとか褒められても……と思いつつ環はまんざらでもない。
「あげられる……はずだけど」
美祢子は指の動きを止め厳しい目つきで画面を見ながらポツリと呟く。
「男性側の反応がイマイチ芳しくないのよねぇ」
「えっ?」
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