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婚活開始!
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「役所で独身証明書が発行されるなんて初めて知りました」
環の言葉に結婚相談所への入会に必要な書類を確認していた美祢子は相好を崩す。
「これはあなたが独り身だっていう公的な証明よ。もし既婚者が入会したら大変な事になるから結婚相談所にとって重要な書類なの。ああそうだ。常に持ち歩いてイザという時のアピールに使ったら? 菅生環はフリーですよ、良いお相手はいませんか? って」
「嫌ですよ。そんなの」
環はリングを売ったお金を自分の婚活に使うと決め結婚相談所に入会する事にした。
もちろん頼りにするのは山口美祢子が所長を務めるお多福結婚相談所だ。
(男と別れたその日に再会した先輩が結婚相談所を経営しているなんて偶然にしても出来すぎ。まさに運命だわ)
三年前まで部下として仕えた美祢子の人となりは充分知っている。任されたプロジェクトで着実に成果を上げ実績を積み重ねていく様を近くで見てきた。結婚相談についても間違いなく良い結果を出してくれるだろう。
(もしかしたらカミの導き? あの時の夢に出てきたカミサマが……いや違うか)
相談所への入会だけでほぼ婚活が成功した気でいる環は別れた相手への復讐に燃えていた。
(絶対にアイツより良い相手と結婚してやるわ。美祢子さんの相談所はハイクラスを謳っている。男性会員は医者や弁護士、会社社長あるいは一流企業勤務で高年収である事が条件。入会金や会費は張るけどリングのお金があるから私の懐は痛まない。ああ早く結婚したいなあ。私がものすごい玉の輿に乗ったと知ったらアイツは地団太踏んで悔しがるでしょうよ。私がどんなに良い女だったか思い知ればいいわ)
入会手続きが終了し会員証を渡された環は美祢子と二人きりのカウンセリングルームで机に額を擦りつけんばかりに頭を下げる。
「美祢子さん。私、本気で結婚したいです! アイツ以上の男を見つけて玉の輿に乗って見返してやりたいです! どうぞ宜しくお願いします!!」
元体育会系の環の気合いにたじろぎつつ美祢子は結婚相談所の所長として落ちつき払って口を開いた。
「お多福結婚相談所の所長としてあなたが良縁に恵まれるよう出来る限りサポートするわ。着実に一歩一歩進めていきましょうね」
環のカウンセラーは所長の美祢子が自ら担当する事になった。
入会手続きの間も美祢子のiPhoneには担当する会員や社員等から何度も電話がかかってきた。彼女が多忙なのは明らかだった。それでも担当になってくれたのは先輩後輩の誼みからだろう。
環は嬉しく思うと同時に心強く感じた。
帰り際、美祢子は環に封筒を手渡す。中を確認すると入会規約など会員向けの書類と表紙に菅生環様へと書かれたレポートが入っていた。
「あなたのプロフィールを元に作ってあるわ。今後の婚活について大切な事が書かれてるから必ず読んでおいて」
家に戻り夕食を済ませると環はレポートに目を通す。
「なっ! なによこれ??」
表紙をめくって最初の見出しを見た環は思わず声を上げる。
太いゴシック体で黒々と強調された文には次のように記されていた。
『35歳までに結婚が決まらなければその後結婚できる可能性はほぼない』
環の言葉に結婚相談所への入会に必要な書類を確認していた美祢子は相好を崩す。
「これはあなたが独り身だっていう公的な証明よ。もし既婚者が入会したら大変な事になるから結婚相談所にとって重要な書類なの。ああそうだ。常に持ち歩いてイザという時のアピールに使ったら? 菅生環はフリーですよ、良いお相手はいませんか? って」
「嫌ですよ。そんなの」
環はリングを売ったお金を自分の婚活に使うと決め結婚相談所に入会する事にした。
もちろん頼りにするのは山口美祢子が所長を務めるお多福結婚相談所だ。
(男と別れたその日に再会した先輩が結婚相談所を経営しているなんて偶然にしても出来すぎ。まさに運命だわ)
三年前まで部下として仕えた美祢子の人となりは充分知っている。任されたプロジェクトで着実に成果を上げ実績を積み重ねていく様を近くで見てきた。結婚相談についても間違いなく良い結果を出してくれるだろう。
(もしかしたらカミの導き? あの時の夢に出てきたカミサマが……いや違うか)
相談所への入会だけでほぼ婚活が成功した気でいる環は別れた相手への復讐に燃えていた。
(絶対にアイツより良い相手と結婚してやるわ。美祢子さんの相談所はハイクラスを謳っている。男性会員は医者や弁護士、会社社長あるいは一流企業勤務で高年収である事が条件。入会金や会費は張るけどリングのお金があるから私の懐は痛まない。ああ早く結婚したいなあ。私がものすごい玉の輿に乗ったと知ったらアイツは地団太踏んで悔しがるでしょうよ。私がどんなに良い女だったか思い知ればいいわ)
入会手続きが終了し会員証を渡された環は美祢子と二人きりのカウンセリングルームで机に額を擦りつけんばかりに頭を下げる。
「美祢子さん。私、本気で結婚したいです! アイツ以上の男を見つけて玉の輿に乗って見返してやりたいです! どうぞ宜しくお願いします!!」
元体育会系の環の気合いにたじろぎつつ美祢子は結婚相談所の所長として落ちつき払って口を開いた。
「お多福結婚相談所の所長としてあなたが良縁に恵まれるよう出来る限りサポートするわ。着実に一歩一歩進めていきましょうね」
環のカウンセラーは所長の美祢子が自ら担当する事になった。
入会手続きの間も美祢子のiPhoneには担当する会員や社員等から何度も電話がかかってきた。彼女が多忙なのは明らかだった。それでも担当になってくれたのは先輩後輩の誼みからだろう。
環は嬉しく思うと同時に心強く感じた。
帰り際、美祢子は環に封筒を手渡す。中を確認すると入会規約など会員向けの書類と表紙に菅生環様へと書かれたレポートが入っていた。
「あなたのプロフィールを元に作ってあるわ。今後の婚活について大切な事が書かれてるから必ず読んでおいて」
家に戻り夕食を済ませると環はレポートに目を通す。
「なっ! なによこれ??」
表紙をめくって最初の見出しを見た環は思わず声を上げる。
太いゴシック体で黒々と強調された文には次のように記されていた。
『35歳までに結婚が決まらなければその後結婚できる可能性はほぼない』
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