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後半
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私の部屋の前に着いたので車椅子のブレーキをかける。
「ありがとう。ここからは自分で行くわ」
「心配だから中まで付いていく」
「え?ちょっと待って・・・・・・」
断る隙もなくティーダが部屋のドアを勝手に開けた。
ティーダが私の部屋に来るのは何年ぶりだろう。
12歳になって、異性と距離を置くようにとお父様から言われてからだから7年ぶりかしら。
「あ、ありがとう。それじゃあまたね」
「・・・・・・ねえ オリビア」
「な、何?」
異性と部屋で二人きりな事と、その相手が他ならぬティーダと言う事で私の頭の中はややパニックしていた。後に彼の気配を感じるだけでドキドキしてしまう。
「傷、見せてよ」
「嫌よ。醜いもの・・・・・・」
「見せて」
白鷺族にとって白く美しい翼が全て。
それを失った私はもう普通にはお嫁にはいけないだろう。
よほどの物好きか変わり者でない限り、私の嫁の貰い手はないのだ。
「見てどうするのよ?」
「キスしたい」
「・・・・・・え?」
ドクンッ…と、全身の血が騒いだ。
今、ティーダは何て言ったの?
「キスしたい」
「な、何言って・・・・・・。私の事をからかって何が面白いのよっ」
「歩き出して誰かの所に行く前に捕まえたい」
何かとんでもない事を言われているけど、車椅子の後ろのティーダが今どんな顔をしているのかも分からない…。
不意に頭上が暗くなった。
それはティーダが後ろから私に覆い被さってきたからだった。
「見せてよ、翼」
耳の後ろに息がかかってくすぐったくて、その拍子に翼が出てしまった。
私の右の翼は所々穴が開いていて半分しか残っていない。
お世辞でも綺麗とは言えない翼だった。
「ねぇ。何でこんなになっても綺麗なんだろう・・・・・・」
え!?
「君の翼ならどんな形になってもきっと綺麗なんだろうね。せっかく傷物になって一安心してたのに、これじゃだめだ」
「・・・・・・ティーダ?」
「やっぱ、どこかに行かない様にするには身籠らせるしかないのかな?」
「・・・・・・」
さっきまでのドキドキが、急に冷や汗に変わった。
孕ます!?誰が誰を?
私の頭はもうパニック状態になる。
「選ばせてあげるよ。今ここで身籠るか、それとも僕の求婚を受け入れるか?」
「ティーダ冗談は止めて!さっきも言ったけど責任なんて取らなくてもいいんだってば!」
「責任?何の? ああ、君が小鳥を触ろうとしてバルコニーの手すりに手をかけたとき強風を僕がおこして君を二階から落とした責任?」
え!?
「傷物にしてやりたかったんだ。いつになっても君が僕に振り向きもしないから。ずっと機会を待ってたんだ。君も空を飛べるから上手く行くか分からなかったけど、僕の期待通りに事が進んでよかったよ」
ティーダは私の後ろから前に回ってきて、私の前に両膝をつく。
さっきからティーダが話す内容を聞いてると、まるで私の事を好いてる様に聞こえてしまう。
そんな訳はないと思いながらも私は確認をする。
「ティーダ。もしかしてあなた私の事を・・・・・・」
「うん。好きだ。ずっと昔から、君だけだ」
「・・・・・・」
思いもしないティーダからの告白に私は言葉が出なかった。
「酷い事をしたって分かってる。でも君を僕のものにしたくてどうしようもなくて・・・・・・。ごめん、オリビア。ごめん・・・・・・」
「バカね」
背の高いティーダが子供みたいに体を縮めて、私に嫌われるのを恐れるかの様に縮こまっている。
「本当はもっと普通に教えて欲しかったわ。だって・・・・・・」
「・・・・・・」
ティーダは私が何を言うのか下を向いて黙っていたから、そっと頭を撫でてあげた。
「あのねティーダ。実は私もずっと昔からあなたの事が好きだったのよ」
ティーダが驚きの顔で私を見上げた。
「う、嘘だ。君から好意の言葉を聞いたことは一度もない。怪我をしてからも、君はいつも僕の求婚を断っていた」
私の告白に相当動揺した様で、ティーダは疑いの目で私を見ている。
「あなたは人気者よ?相手にされるわけないのに告白なんて出来ないわ。それに、怪我した後は罪悪感で求婚してるのかと思ったのよ。他に好きな子がいたかもしれないのに私が足枷になってるんじゃないかって思ったの」
「好きなのは君だけだ!」
子供の様にうろたえるティーダが何だか面白くってクスクス笑ってしまった。
「ねぇティーダ。さっきの話だけど・・・・・・」
私は大きく息を吸って、真っ直ぐティーダを見つめた。
「私、あなたの求愛を受け入れるわ」
私がそう言うと、ティーダの優しい若草色の瞳と形の良い唇がにっこり弧を描いた。
そしてティーダが車椅子に座る私に優しくキスをした。
暖かい風が吹いて、ティーダが翼を広げてその風に乗る。
青空の太陽の下、私達はギュッと抱き合った。
END
「ありがとう。ここからは自分で行くわ」
「心配だから中まで付いていく」
「え?ちょっと待って・・・・・・」
断る隙もなくティーダが部屋のドアを勝手に開けた。
ティーダが私の部屋に来るのは何年ぶりだろう。
12歳になって、異性と距離を置くようにとお父様から言われてからだから7年ぶりかしら。
「あ、ありがとう。それじゃあまたね」
「・・・・・・ねえ オリビア」
「な、何?」
異性と部屋で二人きりな事と、その相手が他ならぬティーダと言う事で私の頭の中はややパニックしていた。後に彼の気配を感じるだけでドキドキしてしまう。
「傷、見せてよ」
「嫌よ。醜いもの・・・・・・」
「見せて」
白鷺族にとって白く美しい翼が全て。
それを失った私はもう普通にはお嫁にはいけないだろう。
よほどの物好きか変わり者でない限り、私の嫁の貰い手はないのだ。
「見てどうするのよ?」
「キスしたい」
「・・・・・・え?」
ドクンッ…と、全身の血が騒いだ。
今、ティーダは何て言ったの?
「キスしたい」
「な、何言って・・・・・・。私の事をからかって何が面白いのよっ」
「歩き出して誰かの所に行く前に捕まえたい」
何かとんでもない事を言われているけど、車椅子の後ろのティーダが今どんな顔をしているのかも分からない…。
不意に頭上が暗くなった。
それはティーダが後ろから私に覆い被さってきたからだった。
「見せてよ、翼」
耳の後ろに息がかかってくすぐったくて、その拍子に翼が出てしまった。
私の右の翼は所々穴が開いていて半分しか残っていない。
お世辞でも綺麗とは言えない翼だった。
「ねぇ。何でこんなになっても綺麗なんだろう・・・・・・」
え!?
「君の翼ならどんな形になってもきっと綺麗なんだろうね。せっかく傷物になって一安心してたのに、これじゃだめだ」
「・・・・・・ティーダ?」
「やっぱ、どこかに行かない様にするには身籠らせるしかないのかな?」
「・・・・・・」
さっきまでのドキドキが、急に冷や汗に変わった。
孕ます!?誰が誰を?
私の頭はもうパニック状態になる。
「選ばせてあげるよ。今ここで身籠るか、それとも僕の求婚を受け入れるか?」
「ティーダ冗談は止めて!さっきも言ったけど責任なんて取らなくてもいいんだってば!」
「責任?何の? ああ、君が小鳥を触ろうとしてバルコニーの手すりに手をかけたとき強風を僕がおこして君を二階から落とした責任?」
え!?
「傷物にしてやりたかったんだ。いつになっても君が僕に振り向きもしないから。ずっと機会を待ってたんだ。君も空を飛べるから上手く行くか分からなかったけど、僕の期待通りに事が進んでよかったよ」
ティーダは私の後ろから前に回ってきて、私の前に両膝をつく。
さっきからティーダが話す内容を聞いてると、まるで私の事を好いてる様に聞こえてしまう。
そんな訳はないと思いながらも私は確認をする。
「ティーダ。もしかしてあなた私の事を・・・・・・」
「うん。好きだ。ずっと昔から、君だけだ」
「・・・・・・」
思いもしないティーダからの告白に私は言葉が出なかった。
「酷い事をしたって分かってる。でも君を僕のものにしたくてどうしようもなくて・・・・・・。ごめん、オリビア。ごめん・・・・・・」
「バカね」
背の高いティーダが子供みたいに体を縮めて、私に嫌われるのを恐れるかの様に縮こまっている。
「本当はもっと普通に教えて欲しかったわ。だって・・・・・・」
「・・・・・・」
ティーダは私が何を言うのか下を向いて黙っていたから、そっと頭を撫でてあげた。
「あのねティーダ。実は私もずっと昔からあなたの事が好きだったのよ」
ティーダが驚きの顔で私を見上げた。
「う、嘘だ。君から好意の言葉を聞いたことは一度もない。怪我をしてからも、君はいつも僕の求婚を断っていた」
私の告白に相当動揺した様で、ティーダは疑いの目で私を見ている。
「あなたは人気者よ?相手にされるわけないのに告白なんて出来ないわ。それに、怪我した後は罪悪感で求婚してるのかと思ったのよ。他に好きな子がいたかもしれないのに私が足枷になってるんじゃないかって思ったの」
「好きなのは君だけだ!」
子供の様にうろたえるティーダが何だか面白くってクスクス笑ってしまった。
「ねぇティーダ。さっきの話だけど・・・・・・」
私は大きく息を吸って、真っ直ぐティーダを見つめた。
「私、あなたの求愛を受け入れるわ」
私がそう言うと、ティーダの優しい若草色の瞳と形の良い唇がにっこり弧を描いた。
そしてティーダが車椅子に座る私に優しくキスをした。
暖かい風が吹いて、ティーダが翼を広げてその風に乗る。
青空の太陽の下、私達はギュッと抱き合った。
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