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第十八話 王太子殿下の電撃訪問
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休み明けアカデミーの教室に着いたらある噂で持ちきりだった。
「今日 王太子殿下が学校に視察に来るらしいわよ!」
「歓迎舞踏会の会場の確認かしら?」
「ライト殿下と話があるとか聞いたけど」
「ダンスのお相手を探しに来たんじゃないの?」
「んまぁ!私が選ばれたらどうしましょ」
キャーキャーと教室内を飛び交う王太子殿下の噂話に私はついつい耳がいってしまう。
「アーレントって何でこんなに人気なのか分からないわね」
オルガが隣に来て興味なさげに綺麗にマニキュアが塗られた指先にフーッと息を吹きかけながら言った。
「アーレント様は王太子ですもの。皆が憧れるのも仕方ないわ」
私は断然ライト様の方が好みですけどね。
ムフフとニンマリしていたら「なぁにニヤけてんのアリシア」と冷めた目でオルガに言われハッとする。
え?まさか顔に出てたのかしら!?
私はゴホンと咳払いをして平静を装ったけど、オルガにはバレバレみたいで「ライト殿下の方がいいって思ってる?」と言ってクスクス笑いながら扇子で私を煽いだ。
オルガって読心術を体得してるんじゃないの!?
「なんの騒ぎだ?」
いつにない活気溢れる教室内にその声が聞こえてきた瞬間教室内の空気が止まった。
教室に入ってきたその声の主はライト殿下だった。
今日もライト様は格好良すぎ・・・なのだけど、何かいつもと違う気がした。
ほら、あんな風にクラスの女子生徒に挨拶をしながら席に進んだりしないはずなのに。
それにどことなく優雅さが増している気がするわ。
ライト様がこちらに向かって歩いてこられたので私も立ち上がって挨拶をしようとしたら「座っていて構わない」とやんわりと手で制されたので座ったまま挨拶をする事にした。
「おはようございます、ライト様」
挨拶をするとニコッと笑顔を返された。
その笑顔の中に物凄い余裕を感じてやっぱり今日は何かが違う気がした。
隣りにいたオルガが、爪をフーフー吹きながらライト様を見ることなく言った。
「ねえ。アーレント、もう来たの?」
余りにも砕けた物言いだったからかライト様が両目を真ん丸にしてオルガを見る。
私はオルガに「ちょっと、言葉使い悪すぎっ」と注意するもオルガは知らんぷり。
「ああ、もう来た」
おやまあ、アーレント様が来るという噂は本当だったのね。
それにしてもライト様って心が広いわ。
こんな失礼極まりないオルガを目の前にして笑顔のままなのだもの。
「どうせ碌な要件で来てないんでしょ、あんた」
あんた?
確かに今、オルガはライト様にあんたと言った。
一国の王子に向かってあんたって・・・・・・。
「で?何であんたがここにいるのよ?」
オルガがライト様に向かって二度もあんた呼ばわりするものだから、オルガって王族が怖くないのかしら?と冷や汗の流れる私の目の前で、オルガがなんとライト様の髪の毛を鷲掴みにした。
「なっ!オルガッ、そんな事したら流石に不敬罪で捕まるわ・・・・・・って、ええぇえ!?」
オルガが掴んだライト様の黒髪がフワッと浮かびそれと一緒にライト様の顔を模倣した顔マスクがズルっと剥がれて、その下から眩い金髪の美丈夫が現れた。
ライト様とちょっと似てる気がするけど、この方ってもしや・・・まさか・・・・・・。
「アーレント、来るの早すぎだし何で変装してんのよ」
やっぱり!この方はアーレント様だわっ!!
なんだかさっきから違和感を感じたけどまさか別人だったとはっ。
「あーあ、バレちゃった。流石に制作者は騙せないか」
「返せっ」とオルガが黒い髪の毛の付いた顔マスクをアーレント様から奪い取った。
王太子のアーレント様ががいきなり現れたとあって教室内が一斉にワアァッと沸き立った。
「だから、何しに来たのよ?」
オルガがアーレント様の唯一話ができる女性だとしても、こんな高慢な態度でよく怒られないわね、と私は二人の事を一歩引いた目線で見てしまった。
「うーん。抜き打ち訪問ってやつ?皆元気そうで何より何より。じゃ、そういう事で」
アーレント様はそう言ってざわつく教室を後にした。
アーレント様がいなくなった少し後にライト様がランディとティアラ嬢と共に教室に入ってきた。
以前とは違いティアラ嬢がライト様に言い寄る様子は無く会話もなかった。
「ありがとうございます」と一言ティアラ嬢がライト様に言うと「ああ」とライト様が答えてそれぞれの席に着いた。
「ライト様」
私がライト様を呼ぶと、柔らかい微笑みでニコッと微笑まれてドキッとした。
ああ、こっちは本物だわ。
「さっき、アーレントが来てたわよ」
オルガがライト様に言うと、「もう?」とライト様がビックリした。
「はぁ~。あの人は何を考えているんだか」
やれやれと言わんばかりにライト様がふぅと大きく息を吐く。
ふとティアラ嬢の方を見ると、いつものキャピキャピした様子は全く見られなくて少し心配になった。
「今日 王太子殿下が学校に視察に来るらしいわよ!」
「歓迎舞踏会の会場の確認かしら?」
「ライト殿下と話があるとか聞いたけど」
「ダンスのお相手を探しに来たんじゃないの?」
「んまぁ!私が選ばれたらどうしましょ」
キャーキャーと教室内を飛び交う王太子殿下の噂話に私はついつい耳がいってしまう。
「アーレントって何でこんなに人気なのか分からないわね」
オルガが隣に来て興味なさげに綺麗にマニキュアが塗られた指先にフーッと息を吹きかけながら言った。
「アーレント様は王太子ですもの。皆が憧れるのも仕方ないわ」
私は断然ライト様の方が好みですけどね。
ムフフとニンマリしていたら「なぁにニヤけてんのアリシア」と冷めた目でオルガに言われハッとする。
え?まさか顔に出てたのかしら!?
私はゴホンと咳払いをして平静を装ったけど、オルガにはバレバレみたいで「ライト殿下の方がいいって思ってる?」と言ってクスクス笑いながら扇子で私を煽いだ。
オルガって読心術を体得してるんじゃないの!?
「なんの騒ぎだ?」
いつにない活気溢れる教室内にその声が聞こえてきた瞬間教室内の空気が止まった。
教室に入ってきたその声の主はライト殿下だった。
今日もライト様は格好良すぎ・・・なのだけど、何かいつもと違う気がした。
ほら、あんな風にクラスの女子生徒に挨拶をしながら席に進んだりしないはずなのに。
それにどことなく優雅さが増している気がするわ。
ライト様がこちらに向かって歩いてこられたので私も立ち上がって挨拶をしようとしたら「座っていて構わない」とやんわりと手で制されたので座ったまま挨拶をする事にした。
「おはようございます、ライト様」
挨拶をするとニコッと笑顔を返された。
その笑顔の中に物凄い余裕を感じてやっぱり今日は何かが違う気がした。
隣りにいたオルガが、爪をフーフー吹きながらライト様を見ることなく言った。
「ねえ。アーレント、もう来たの?」
余りにも砕けた物言いだったからかライト様が両目を真ん丸にしてオルガを見る。
私はオルガに「ちょっと、言葉使い悪すぎっ」と注意するもオルガは知らんぷり。
「ああ、もう来た」
おやまあ、アーレント様が来るという噂は本当だったのね。
それにしてもライト様って心が広いわ。
こんな失礼極まりないオルガを目の前にして笑顔のままなのだもの。
「どうせ碌な要件で来てないんでしょ、あんた」
あんた?
確かに今、オルガはライト様にあんたと言った。
一国の王子に向かってあんたって・・・・・・。
「で?何であんたがここにいるのよ?」
オルガがライト様に向かって二度もあんた呼ばわりするものだから、オルガって王族が怖くないのかしら?と冷や汗の流れる私の目の前で、オルガがなんとライト様の髪の毛を鷲掴みにした。
「なっ!オルガッ、そんな事したら流石に不敬罪で捕まるわ・・・・・・って、ええぇえ!?」
オルガが掴んだライト様の黒髪がフワッと浮かびそれと一緒にライト様の顔を模倣した顔マスクがズルっと剥がれて、その下から眩い金髪の美丈夫が現れた。
ライト様とちょっと似てる気がするけど、この方ってもしや・・・まさか・・・・・・。
「アーレント、来るの早すぎだし何で変装してんのよ」
やっぱり!この方はアーレント様だわっ!!
なんだかさっきから違和感を感じたけどまさか別人だったとはっ。
「あーあ、バレちゃった。流石に制作者は騙せないか」
「返せっ」とオルガが黒い髪の毛の付いた顔マスクをアーレント様から奪い取った。
王太子のアーレント様ががいきなり現れたとあって教室内が一斉にワアァッと沸き立った。
「だから、何しに来たのよ?」
オルガがアーレント様の唯一話ができる女性だとしても、こんな高慢な態度でよく怒られないわね、と私は二人の事を一歩引いた目線で見てしまった。
「うーん。抜き打ち訪問ってやつ?皆元気そうで何より何より。じゃ、そういう事で」
アーレント様はそう言ってざわつく教室を後にした。
アーレント様がいなくなった少し後にライト様がランディとティアラ嬢と共に教室に入ってきた。
以前とは違いティアラ嬢がライト様に言い寄る様子は無く会話もなかった。
「ありがとうございます」と一言ティアラ嬢がライト様に言うと「ああ」とライト様が答えてそれぞれの席に着いた。
「ライト様」
私がライト様を呼ぶと、柔らかい微笑みでニコッと微笑まれてドキッとした。
ああ、こっちは本物だわ。
「さっき、アーレントが来てたわよ」
オルガがライト様に言うと、「もう?」とライト様がビックリした。
「はぁ~。あの人は何を考えているんだか」
やれやれと言わんばかりにライト様がふぅと大きく息を吐く。
ふとティアラ嬢の方を見ると、いつものキャピキャピした様子は全く見られなくて少し心配になった。
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