7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ

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第九話 二人の出会いは運命的だったようです

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昼休みになり食堂にオルガと来ていた時のこと。

今日のランチはハンバーグセット。
私とオルガはランチの乗せられたプレートを受け取り、日当たりの良いテラス席に座った。

このテラス席からはグラウンドとその左右に立つ学生寮がよく見えた。

「絶対におかしい」

席に着くなりオルガが私にそう言ってきたので、何が?と表情だけでオルガに返事をした。

「思うに、ティアラ・デフェルは阿呆だ」

「ちょっと・・・・・・、オルガ それ暴言よ」

ぶっすーとした顔でハンバーグにフォークをザクッと突き刺すオルガに私は注意をしたけど、オルガは変わらず不満げに話を続ける。

「だって、あんな事する人がSクラスってあり得ないもん」

あんな事と言うのは、席を勝手に替えようとしたことよね。うーん、確かにあり得ない行動だったわ。

パクパクと口に食べ物を入れながら納得いかないとプンプンしているオルガ。
その食べっぷりは豪快で、黙っていれば美少女なのにもったいないと思わされた。

「それに、殿下の隣にいるべき人物って何?それはアリシアでしょ」

そうだった。
ティアラ嬢の言う事は疑問に感じる事だらけだったわ。朝の時も教室での時も、私の知らない殿下とのただならぬ関係を醸し出していた。

「・・・・・・ねえ、その、殿下の隣にいるべき人物ってどういう意味なのかしら」

「殿下は何て?」

「今日の放課後に全てを話すって言われたわ」

「そっか。ならいいけど」

そうオルガが言った後、私達は会話を止めて暫く食事に集中することにした。

んん~、美味しい。
思わずほっぺが落ちそうになった。
セットのパンをちぎり一口食べたあと、紅茶をすすって ほうと一息ついた時、隣の席に誰かが着席した。

「殿下と私の関係が気になりますか?」

気づきたくない。気づきたくなかったけど、この挑戦的な声は絶対に・・・・・・。

「ティアラ嬢。あなたもランチですか?」

「ええ。それよりも私の話をしていたようですから、この際きっぱり伝えてしまおうかしら」

何故か勝ち誇った様に上から目線のティアラ嬢。

いやいや、私の方が侯爵令嬢で身分は上なんですけどね。

「別にいいです。放課後 ライト殿下から聞くことになっていますから」

「運命なの」

「・・・・・・はい?」

聞いてもいないのにティアラ嬢は両頬に手を添えて遠くの空を眺めながらか語りだした。

「殿下との出会いは運命だったの。一年前、我がデフェル領で騒ぎが起き、賊に襲われた私を殿下がその身を挺して守ってくださったのです」

そ、そうなんだ。
デフェル子爵の領地は確か国境付近。
ライト殿下がそこで任務中に暴漢に襲われかけたティアラ嬢を助けたと言うことかしら。

「右肩を負傷してまでも私を守ってくださいましたわ」

・・・・・・ということは、ティアラ嬢もライト殿下のあの不埒な右肩のほくろを見たのかしら?

もんもんと殿下のあの素晴らしい上半身を思い出すと私は顔が真っ赤になった。

そんな私を気にもとめず、ティアラ嬢はまるで演劇舞台の女優ばりに語り続ける。

「今日の殿下はあっさりしていましたが、私を救ってくださったあの日の殿下の私を見つめる瞳。あの青い瞳と目が合った瞬間、思いが通じ合ったかの様にしばらく見つめ合ったのです」

わおぉ・・・・・・。確かに凄い出会い方だわ。それは記憶に残りますよね、お察ししますティアラ嬢。

「そして殿下がこうおっしゃったの。君を必ず迎えに来る、と」

うっとり、どこか遠くを見つめながらティアラ嬢はそう言った。

な、何ですってーーー!?
そんな甘いセリフをあの生真面目なライト殿下が言ったんですか!?
私も言われてみたい・・・・・・って違うわね。

「それ、誰かと勘違いしてるんじゃないの?」

オルガが言えば、ティアラ嬢がワナワナと震えながら鬼の形相で言い返してきた。

「そんなはずないわ。黒髪に青い瞳の騎士と言えばライト殿下以外に王国騎士団にはいませんものっ」

オルガがティアラ嬢を煽るような事を言い、それにまともに反抗してきたティアラ嬢の大声のせいで気づけば私達の周りは大きな人だかりが出来ていた。

「じゃあ聞くけど、殿下はあんたの事覚えていたの?あんたと思いが通じ合ってる割にはあんたに対して塩対応だったじゃん 殿下」

確かにティアラ嬢に対する殿下の態度はティアラ嬢が話す程好意的とは言えなかった。でも、殿下が何かを隠している様子だったのは事実。

「それはっ・・・・・・」

オルガの問いかけにティアラ嬢は思い当たる節があったのか、困惑した顔をしたあと悔しそうに席を立って食堂を去って行った。

集まっていた野次馬に対して、オルガが「見世物じゃないわよ~」と一言言えば、野次馬は一斉に去って行った。本当に頼りがいのある従姉妹だわ。

そうこうしている間にお昼休みはあっという間に終わっていった。
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