7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ

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第七話 殿下、そちらの御令嬢はどなたですか?

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リガルド王立アカデミー、別名『白亜の離宮』。

すぐ後ろにそびえ立つリガルド王国の王城と同じ色で建てられたこのアカデミーは、国内外から多くの将来有望な貴族の令息令嬢が集う場所。

大きな正門の周りにはたくさんの馬車が停められていて、多くの学生で賑わっている。

馬車から降りて正門を通り過ぎると、まっすぐに幅の広い歩道が本館まで続いている。
その左右には要所要所に花壇があり、色とりどりの花が品良く植えられている。

奥に少し歩いていくと3階建ての本館が見えた。

本館の後ろには広いグラウンドがあり、その左右に男子と女子に別れて学生寮がある。

本館の一階と二階が学生達の主な学び舎で、三階は大きな一つの広間になっていて、今日の入学式はそこで開かれる。

一回のエントランスホールに着くと、桃色のボレロを来た集団が見えた。近づいて行くと、壁に張り出されたクラス分けの表が張り出されていて皆はそれを見ていた。

「やったわ。私はあなたと同じAよ」
「やったわね!」
「Bになってるわ・・・・・・」
「いいじゃないか、俺はDだよ。最低だ」

皆、自分がどのクラスになったのかとざわついていた。

アカデミーは一年から三年まで、学年ごとに五クラスに分かれていて、最高がSで次にABCDとなっている。

私はどのクラスかな?と背伸びをしながら見ていたら、頭上から声が降ってきた。

「君と僕はSクラスだよ」

え?と振り向くと綺麗な黒髪が揺れて優しい青い瞳と目が合った。

「ラ、ライト殿下!おはようございます」

桃色のボレロは男女共通だけど男子のほうが丈が長い。その下に男子は白のシャツと白のズボン。
スタイルのいい殿下にとっても似合っていた。

「か、かっこいいです殿下!」と喉元までその声が出かかったけれど、淑女として無闇に叫んではいけないと心の中で自分を律した。

「ほら見て。アリシアの名前と僕の名前、Sクラスになってるだろう?」

殿下が指を差した先には確かに私とライト殿下の名前があった。
なんとなんと、殿下と同じクラスとは。
私は嬉しさが顔に出てしまい、ニヤける顔をカバンで隠しつつ殿下をチラッと見て言った。

「ライト殿下、一年間同じクラスですね。本当に嬉しいです」
「アリシア、アカデミー入学の記念に、ぼっ、僕の事を殿下じゃなくてライトって名前だけで呼んでみるのってどうかな?」
「えっ・・・・・・」

ライト殿下が真剣な眼差しで言うものだから私はドキッとしてしまった。
私がライト殿下を名前で呼ぶなんて、そんな、でも婚約者だし、呼んでも・・・・・・いいのかな?

「ラ、ライトさ・・・・・・」
「ライト様ぁーーー!」

私の声をかき消す劈くようなキャピキャピした大声が、突然響き渡った。

次の瞬間私が目撃したのは、ライト殿下にギュッと抱きつく御令嬢の姿だった。
御令嬢は赤い髪に緑の目をした可愛らしい人だった。
その御令嬢と私の目がバチッと合って一瞬時が止まった。

「「え?」」

ユニゾンした声は私と殿下に飛びついた御令嬢の声。
その後で、いきなり衝撃を受けた殿下が「なっ、何でここに!?」と驚いて御令嬢を突き放した。

御令嬢は突き放されたことを気にもせず、満面のキラキラした笑みでライト殿下を見つめたあと、ちらっと冷たい視線で私を見て言った。

「ライト様?そちらの御令嬢はどなたですか?」

いやいや、そのセリフ私のセリフですけどっ。
物凄い怖い目で見られているけど、私何も悪い事してません。
殿下と私の久々の再会を邪魔するあなたこそいったいどこの御令嬢ですか!?

「あ、いや、その・・・・・・。気にしないでくれアリシア。その・・・・・・ごめん。また後で説明するから。またな」

何だか怪しい態度のライト殿下が謎の御令嬢の背中を押して私から離れて行った。

「どうやってここに!?」と御令嬢に話しかけている殿下の声が聞こえた。

こんなに周りに人がいてざわついているのに、こういう時って聞きたくない声がとても大きく聞こえてきてしまうのね。

「私とライト様は一心同体ですわ。離れられない運命、そうでしょう?うふふ」

なっ、何ですって?離れられない運命ですって?
一体どういう事なのかしら。

「デフェル子爵令嬢。紛らわしい言い方はやめてくれ」
「きゃあ、いけません。そんなに近づいては!ここは皆の目があり過ぎますわっ」
「なっ・・・・・・、何を言うんだ、デフェル子爵令嬢っ」

私は一体何を見せられているのでしょう。

殿下と御令嬢はその後も何かを話しながら私から逃げるように去って行った。

遠くからでも二人がワイワイ騒いでいる姿が見えて胸がズキッとする。

分かったことといえば、御令嬢がデフェル子爵令嬢で、二人が私の知らない関係を持っていると言うことだけだった。


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