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第六話 入学式当日の朝

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晴れ渡る青空の一日。

一人早めに朝食を終えた私は自分の部屋に戻り、ふと窓の外を見ると、中庭に咲く満開の桜の花が見えた。

それもそのはずね。昨日で3月も終わって今日から4月なんだもの。

今日が王立アカデミーの入学式のため、暫くの間この家ともお別れとなる。

視線を部屋の方に戻せば壁際にハンガーラックに掛かった真新しいアカデミーの制服と通学用のカバンがあった。

アカデミーの制服は白を貴重にしたワンピースに短めのボレロをまとうシンプルなもの。
学年によってボレロの色が違っていて、私は一年生だから桃色のボレロ。
ちなみに二年生は黃緑で、三年生になると紺色と、だんだん落ち着いた色になっていく。

アンナがそろそろ来る頃だけど、時間もあったので自分で身支度を整えることにした。
髪の毛は三つ編みでひとつ纏め。

鏡台に座ってもう一度自分の姿を確認していた時、コンコンと扉がノックされた後に、どうせ着替えもせずのんびりしているだろうと思って入室してきたのか、アンナは身支度を終えた私見て言葉を失い、持っていた櫛と髪飾りなどが入った小箱を落とした。

「・・・・・・」
「なにアンナ。私が自分で身支度をした事がそんなに驚きだったの?」

感動の涙だろうか、ハンカチで涙を拭いながら落とした物を拾った後「お嬢様ぁ~」とアンナが叫びながら走り寄ってきた。

「お嬢様、制服の横のファスナーが開いています。ああ、こんな調子でお嬢様は本当に学生寮で一人暮らしが出来るのでしょうか?アンナは気が気ではありませんっ」
「えっ!?」

驚いて見てみれば、確かに制服の脇がパックリ開いていたて、アンナが泣きながら私の制服のファスナーを上げてくれた。

完璧だと思っていただけに、私は物凄く恥ずかしかった。

気を取り直して通学用のカバンを持ち、「似合うかしら?」と聞けばアンナは満面の笑みになる。

「桃色のボレロ良く似合っておりますよ、お嬢様」

でも、何故か悲しそうな表情で涙を浮かべるアンナにがいた。

「アンナ、泣かないで」

「お嬢様としばしのお別れだというのに、これが泣かずにいられますかぁ」

「私だって寂しいのよ?ほら、笑顔で送り出してちょうだい」

私も本当はすごく寂しい。
15年もずっとここにいたんだから。
そう思うと私もじんわり涙が溢れて来て、アンナにギュッと抱きついた。

「夏休みには帰ってくるからね」

アンナはコクンコクンと首を縦に振った。
暫くして私とアンナは部屋を出て両親が待つダイニングへ向かうべく階段を降りる。

なかなか降りてこない私を心配したのか両親が階段下で私を待っていた。

「おはよう、アリシア。昨日は良く眠れたかい?」

「はい、よく眠れました。お父様は如何でしたか?」

如何でしたかと聞いたと同時だった。

「アリシアーーーッ」

涙をたくさん浮かべたお父様が私に抱きついてきたのだ。全く、アンナといいお父様といいすぐ泣くんだから・・・・・・。

「今生の別れというわけでもないのに、父親のあなたがそんなでどうするんですか?外には馬車がもう停まっているのよ」

「しかし、明日からアリシアが家にいないと思うだけでこの父の胸は張り裂けそうなんだぁ」

子供の様に号泣するお父様を私から引き離し、お父様をよしよしするお母様。

泣いたままお母様に手を引かれて歩いて来るお父様の他に、アンナをはじめたくさんの使用人達が見送りのために外に出てきてくれた。

馬車に乗り窓を開けるとお父様とお母様が近付いて来た。

「アリシア、アカデミーで色んな事を学んでくるのよ」
「気をつけてなぁ~」
「はい、お父様 お母様。行ってまいります」

馬車がゴトゴトと動き出し次第にスピードが上がっていく。
だんだん小さくなっていく皆の姿が見えなくなるまで私は手を振り続けた。

みんなが見えなくなった後、馬車道に心地よい風が吹き、風の吹く方を向けばアカデミーのある王都の町並みがうっすら見えて、私の胸はドキドキと高鳴った。
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