(仮)あなたにはみえますか~運命の糸って何色?~

橘 碧紗(タチバナ ヘキサ)

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第3章

3-6 返信

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「……鳴ったんじゃない? 依音いとのスマホ」

佳奈美か期待のこもった眼差しで身を乗り出し、私とスマホを交互に見る。

(まさか、もう返信?)

恐る恐る画面を見ると―――

「……松平さん」

あからさまに期待外れという顔をした佳奈美は、椅子の背もたれに身体を戻す。

「……なんだ」

「失礼だよ」

と言いながら、佳奈美の反応に私も笑ってしまった。

「え、でもなんで松平さん?」

違う好奇心が刺激されたらしい佳奈美は、再び身を乗り出す。

そんな様子を視界の隅に追いやり、私はスマホを操作した。


―――『今週末、時間ある?』


(私が秋元さんに送ったのと同じ内容……どうしたんだろ)

佳奈美の視線がうるさいので、仕方なく報告する。

「週末の予定聞かれた」

すると佳奈美の違う好奇心が更に膨れ上がったようだ。

「そっちもありだね! 松平さん、最近別れたって言ってたでしょ」

「いやいや、こないだの食事の後、その元カノさんから連絡あったから急いで帰ってったんだよ。

ヨリ戻したいって言われたらしい」

またもや松平さんのプライバシー情報を漏洩させ、佳奈美の好奇心を萎ませる道具に使ってしまった。

「えー、じゃ何だろうね」

「こっちが聞きたいんだけど。

でも今秋元さんに聞いたばっかりだし、なんて返信しよう……」

「うーん……」

その時、佳奈美のスマホのアラームが鳴った。

「あっ、昼休み終わっちゃう」

「佳奈美の5分前アラームには私もお世話になってるよ。いつもありがとう」

「どういたしまして。依音いともセットしといたらいいんじゃないの」

「そんなにマメじゃないからさ……って喋ってる場合じゃないね。

戻ろう」

手早くごみをまとめて立ち上がる。

(あ、持ち込みコーヒー淹れられなかったな……まあいいか)

紙コップもゴミ箱に投入し、部署に向かった。



―――終業時間を無事迎え、予定通り就業時間内に業務を終えた自分を褒めつつ帰り支度をする。

隣を見ると、まだ帰る様子のない佳奈美がPCに張り付いていた。

「……佳奈美、何かやること残ってんの?」

「ああ、この案件、今日中に返事もらえる予定だったんだけど、せっついてもまだ連絡がなくってさ」

「あー、なるほど。明日でもいいならいいんじゃない?」

「そうなんだけど……後の工程に響くんだよね。

リスケしたくても、向こうの返事待ちだから今何も出来ないのが歯がゆくて」

「課長に報告して投げるしかないね」

「……だね。まあもうちょっとだけ待ってみるけど、とりあえず課長には言っとこうかな……

あ、だから依音、先に帰ってていいよ。お疲れさま、また明日ね」

「うん、ほどほどにね」

頷くと、佳奈美は笑顔で手を振って立ち上がり課長の席へ向かう。

佳奈美が課長の席で報告を始めたのを見届けると、私は部署を後にした。

(……夜ご飯、どうしようかな)



下りのエレベーターに乗り込み、一息つく。

(食材、家に何があったっけ)

冷蔵庫の中やストッカーの中身を思い出しながら、階数表示に視線を向ける。

終業時間過ぎてすぐのエレベーターも、そこそこの人たちが乗り込んでくる。

階を降りるごとに増えてくる人の中で、ぼんやりと帰りのルートやらを考えていると、

何度目かに止まった階で、見知った顔が乗り込んできた。

「……あ」







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