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第3章
3-3 コイバナ
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「じゃあさ……ほかにだれか誘っちゃえば?
……秋元さんとか」
「!!」
(すぐそういうことを言う!)
飲み込もうと思っていたコーヒーを吹きそうになり、めちゃくちゃ焦った。
「いい機会じゃないの? こないだの食事の時だって……」
なんとか吹き出さずに飲み込んで、佳奈美の勝手な憶測を阻止する。
「待って待って、私別にそういうのいいから。何とかしたい時にはちゃんと相談するし」
「そう? いいと思うけどな、秋元さん。依音とお似合いだなって」
「……だから、そういうのは周りが決めることじゃないでしょうよ」
「えー、でも依音だって、私と高畠さん、付き合えばいいのにって思ってたんでしょ?」
「思ってたけど、佳奈美に言った覚えはないよ。言ったら押し付けになっちゃう」
佳奈美はじっと記憶をたどるように考え込んだのち、こくりと頷いた。
「……確かに。依音からは言われた記憶はないかも」
(他の人からは言われてたんだ……)
「だって、考えるのは個人の自由だけど、口に出したり相手に伝えちゃうのは違うと思ってるから」
そこでハッとする。
「……佳奈美、まさかとは思うけど、誰かに言われたから高畠さんとお付き合いする気になった、
なんてことはないよね?」
極力声を潜めて尋ねると、佳奈美はまたもやじっと考える。
「……うーん、それが決め手ってわけじゃないけど……
でも、周りからも高畠さんのことはいい人だって評判じゃない?
そういう意味じゃ、多少は関係あるのかもしれない」
「あ、もちろん、私はちゃんと高畠さんのことが好きだよ。
周りがいい人だっていうから好きになったわけでもないし」
「……そうだよね、ごめん、なんか失礼なこと言っちゃった」
「うん、いいよ。依音に悪気がないのはわかってる。心配してくれてるってことも」
「心配には及びませんってことかぁ……まあ、朝からのろけ話聞かされるくらいだからね」
「心配する気にもならなくなるでしょ? だから私の話に付き合ってよね」
「はいはい」
(……結局、佳奈美と高畠さんはしっかり繋がっているってことかな……今は)
”見え”ないままの佳奈美の”糸”は、高畠さんと内側で繋がっているのだろう。
もしこれが再び”見える”ことになってしまった時には、どんなことが起こっているのだろうか。
「欲を言えば、依音のコイバナも聞きたいところなんだけどな」
ぼんやり考えていると、またもやとんでもない話題を振られた。
「期待されても、何も出てきませんよ」
「もう、さっきの出掛ける話もそうなんだけどさ、
なにかひとつでも最初にアクション起こさないと何も始まらないよ?」
「う」
痛いところを突かれた。
「いやでも、別になにか始めたいわけでもないんだけど……」
「だからとりあえず秋元さん誘ってみたらって言ってんの」
「だからなんでそこで秋元さんが出てくるの?」
私と秋元さんの仲について、完全にロックオンされている。
「……俺がどうかしましたか」
(!!)
恐る恐る声の方を振り返ると、淹れたてのコーヒーをふうふうさせながら啜っている秋元さんがいた。
……秋元さんとか」
「!!」
(すぐそういうことを言う!)
飲み込もうと思っていたコーヒーを吹きそうになり、めちゃくちゃ焦った。
「いい機会じゃないの? こないだの食事の時だって……」
なんとか吹き出さずに飲み込んで、佳奈美の勝手な憶測を阻止する。
「待って待って、私別にそういうのいいから。何とかしたい時にはちゃんと相談するし」
「そう? いいと思うけどな、秋元さん。依音とお似合いだなって」
「……だから、そういうのは周りが決めることじゃないでしょうよ」
「えー、でも依音だって、私と高畠さん、付き合えばいいのにって思ってたんでしょ?」
「思ってたけど、佳奈美に言った覚えはないよ。言ったら押し付けになっちゃう」
佳奈美はじっと記憶をたどるように考え込んだのち、こくりと頷いた。
「……確かに。依音からは言われた記憶はないかも」
(他の人からは言われてたんだ……)
「だって、考えるのは個人の自由だけど、口に出したり相手に伝えちゃうのは違うと思ってるから」
そこでハッとする。
「……佳奈美、まさかとは思うけど、誰かに言われたから高畠さんとお付き合いする気になった、
なんてことはないよね?」
極力声を潜めて尋ねると、佳奈美はまたもやじっと考える。
「……うーん、それが決め手ってわけじゃないけど……
でも、周りからも高畠さんのことはいい人だって評判じゃない?
そういう意味じゃ、多少は関係あるのかもしれない」
「あ、もちろん、私はちゃんと高畠さんのことが好きだよ。
周りがいい人だっていうから好きになったわけでもないし」
「……そうだよね、ごめん、なんか失礼なこと言っちゃった」
「うん、いいよ。依音に悪気がないのはわかってる。心配してくれてるってことも」
「心配には及びませんってことかぁ……まあ、朝からのろけ話聞かされるくらいだからね」
「心配する気にもならなくなるでしょ? だから私の話に付き合ってよね」
「はいはい」
(……結局、佳奈美と高畠さんはしっかり繋がっているってことかな……今は)
”見え”ないままの佳奈美の”糸”は、高畠さんと内側で繋がっているのだろう。
もしこれが再び”見える”ことになってしまった時には、どんなことが起こっているのだろうか。
「欲を言えば、依音のコイバナも聞きたいところなんだけどな」
ぼんやり考えていると、またもやとんでもない話題を振られた。
「期待されても、何も出てきませんよ」
「もう、さっきの出掛ける話もそうなんだけどさ、
なにかひとつでも最初にアクション起こさないと何も始まらないよ?」
「う」
痛いところを突かれた。
「いやでも、別になにか始めたいわけでもないんだけど……」
「だからとりあえず秋元さん誘ってみたらって言ってんの」
「だからなんでそこで秋元さんが出てくるの?」
私と秋元さんの仲について、完全にロックオンされている。
「……俺がどうかしましたか」
(!!)
恐る恐る声の方を振り返ると、淹れたてのコーヒーをふうふうさせながら啜っている秋元さんがいた。
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